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今回はキリスト教関係のお話にします。
「聖遺物」という言葉は、オカルト好きのみなさんなら聞いたとことが
あるでしょう。キリスト教の宗派の中でも、特にカトリックにおいて
尊重される、イエス・キリストに関係のある遺物、聖母マリアに
関連した遺物、諸聖人の遺物や遺体の一部のことを言います。

例えば、キリストの手足に打たれた聖釘、キリストの脇腹を刺した聖槍、
ダヴィンチの絵で有名な、最後の晩餐のときに使われたとされる聖杯、
キリストを磔にした聖十字架、聖母マリアが用いていたとされるベルト、
聖人の手や足など体の一部などなど。

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この中で、聖槍はロンギヌスの槍と呼ばれ、ロンギヌスとはキリストを
刺したローマ人兵士の名であることになっています。
ロンギヌスはキリストを刺した後、槍をつたって流れる血が自分の目に入り、
長く患っていた眼病が治ったことから、キリスト教に改宗したとされます。

また、20世紀になって、ウィーンのホーフブルク王宮で聖槍を目にした
アドルフ・ヒトラーは「これを手に入れれば世界を征服できる」と、
このとき初めて、世界征服の野望を持ったというオカルト話もあります。

ロンギヌスの槍とされるものの一つ


聖杯は、イギリスのアーサー王伝説で有名ですね。聖人の遺骸については、
漫画の『ジョジョの奇妙な冒険』の第7部「スティール・ボール・ラン」は、
奇跡を起こすことのできる聖人の遺体の奪い合いが、
物語の一つのテーマになっていました。

これらの聖遺物の中で特に有名なのが、「トリノの聖骸布」と呼ばれるもので、
これは、イタリア、トリノの聖ヨハネ大聖堂で保管されている亜麻布です。
布の表面に、身長180cmほどの痩せた人物の全身像が、
ネガの形で浮かび上がっており、



それがキリスト本人の姿ではないかとも言われ、
真贋をめぐって議論が続いています。何度か科学的な調査が行われましたが、
はっきりした結論は出ていないようです。
興味のある方は右のリンクをごらんください。  トリノの聖骸布



さて、このような聖遺物はカトリック界においてはたいへん尊重され、
そのためニセモノもかなり多いと考えられます。
聖釘はキリストの手足に打ちつけた4本であるはずですが、
世界中には30本以上あります。また、聖十字架は

その破片をすべて集めると、十字架何十本分にもなると言われています。
なぜニセモノが多いかというと、聖遺物を所持することで、その教会の
権威に箔がつくということが一つありますが、それだけではありません。
8世紀、キリスト教でもっとも重要な祭儀である「聖体拝領」

キャプチャ

(キリストの肉と血にみたてたパンとぶどう酒をミサで分け与える儀式)
を行う主祭壇の下には、聖人の遺体かその一部が埋葬されていなくてはならない、
と定められたからです。これにより、当時のヨーロッパ各地の教会では、
聖遺物の取り合いが起き、その過程でたくさんのニセモノが作られました。

この話、何かに似ていますね、そう、仏教の仏舎利(ぶっしゃり)
のあつかいにそっくりです。仏舎利とは、仏教の開祖である
お釈迦様の遺骨・遺灰・毛髪などのことで、寺院を建てるさいには、
仏塔の基礎になる石の下に仏舎利を埋めなければならない、とされました。

キャプチャ

しかし、キリストよりも500年も前に生まれたお釈迦様の
本物の遺物が、そんなにたくさんあるとは考えにくいですよね。
さて、カトリックでは、聖人と認定されるためには厳しい条件があり、
その死後に、最低でも2回の奇跡を起こさないと認められません。

聖人の遺体には奇跡を起こす力が秘められているんですが、
このことを知っていた『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、
荒木飛呂彦さんは話の設定にそれを取り入れたわけです。また、聖人の
遺体は不朽体といって、神の恩寵によって朽ちることがないとされます。
フランス、ルルドの泉の聖ベルナデッタの不朽体は有名ですね。
ただし、現在は遺体の顔には薄いマスクが被せられているようです。

聖ベルナデッタの不朽体


下記のリンクをごらんになってみてください。
さまざまな聖遺物が紹介されていますが、中でも面白いなあと思うのは、
「イエスのアソコの皮」とされるものです。当時のユダヤ人は、
生後間もない頃に割礼を受けているので、
そのときの包皮が残っていたという話なんですが・・・

奇妙で怪しげなキリスト教聖人の「聖遺物」

さてさて、長くなってきたのでそろそろ終わりますが、
聖遺物を尊重すればするほど、その所持をめぐって醜い争いが起きます。
そのため、旧来のカトリックのこのようなゴテゴテした権威づけに異を唱えた


プロテスタントの多くの宗派では、聖母マリア崇拝や聖人崇拝を
認めていません。神の言葉はすべて聖書の中にあるという、
いたってシンプルな教義を持つものが多いんです。

では、今回はこのへんで。