bigbossmanです。みなさんは「呪い」というのを信じられますか。
「呪詛」とも言いますね。ある対象に対し、直接手を触れるわけではなく、
さまざまな呪詛行為によって不幸に落とし入れる。あるいは相手を
殺す。その場合は呪殺と言います。ここで、注意しなくてはならないのは
「祟り」とは違うことです。祟りは一般的に、神仏、または死者が
障りをなすもので、これに対し、呪いのほうは、生きている人間が
別の人間にかけるのを指すことが多いです。で、日本の法律では、
呪い行為をすること自体は犯罪にはあたりません。「不能犯」に
分類されるんですね。ある人を呪い、毎晩藁人形に五寸釘を打ち込んだと
しても、それで犯罪になるわけではありません。ただし、
その相手に対し、「私はあんたを呪ってる」などと言ったり、

藁人形の写真を送りつけたりすると、脅迫罪やストーカー行為等の
規制等に関する法律違反となる可能性があります。あと、もちろん
藁人形に入れる髪の毛を得るため、相手の部屋にこっそり侵入したり
すれば、それは住居侵入罪にあたります。また、上で「日本では」
と書きましたが、外国では「魔術を行った罪」というのに抵触する
場合があります。G7に入っているカナダには、ごく最近まで
この法律がありました。それから、「呪い返し」という言葉が
ありますよね。「人を呪わば穴二つ」と慣用句にもなってますが、
呪詛を行って相手を死に至らしめた場合、その呪いが自分にはね返り、
やはり死ぬか大きな不幸を背負ってしまう、そういうふうに
言われています。ただ、このあたりのことはよくわからないんです。

先日、知人からの紹介があって、以前に呪殺を行うグループに
加わっていたという人から話を聞く機会がありました。
さすがに場所はホテルのバーというわけにはいかないので、
京都の料亭を予約し、そちらで。この方を仮にDさんとしておきます。
Dさんは40代、現在は飲食店を経営されているそうです。
「はじめまして、占星術をやっているbigbossmanともうします。
このたびは興味深いお話を聞かせていただけるということで、
わくわくしてます」 「いやいや、こちらこそ。こんな立派な
お店にお誘いいただいて恐縮です」 こんなやりとりになったんですが、
Dさんは、事前に想像していたのとは違って、腰の低い、普通の人の
ように思われました。「お店をやっておられるそうですが、

コロナ騒ぎで大変でしょう」 「ええ、ホント災難ですよ。日本は
ワクチンもまだまだみたいですし」 「もう何年も続くんでしょうね。
呪いを行うグループに入っておられたそうで」 「はい、お恥ずかしい
ことですが、20代のころ5年ほど」 「それはまたどういうきっかけで」
「私ね、大学を卒業した後、バックパッカーで東南アジアとか外国を
数年回ったんです、そのときにインドネシアで知り合った日本人に
仕事を手伝ってくれないかと言われまして」 「ははあ」
「いや、最初はまさか人を呪い殺す仕事とは思わなかったし、そう聞いても
本当にできるともねえ」 「そうですよね。話せる範囲でかまいませんが、
その組織は・・・」 「ああ、差し障りはないと思います。
組織は10年以上前に解散してますから」 「うーん、何から

お聞きすればいいか。・・・呪いはどうやって行うんですか」 
「bigbossmanさん、じつはブログを読ませていただいてるんですが、
物理学などにもけっこうお詳しいようで」 「いやあ、それほどでも」
「力を発生させるためにはエネルギーが必要でしょう」 「まあそうです」
「例えば、ある人がヒドい目にあって、自分をそうした相手を呪いたいと
考えたとしても、ひと一人の怨みのパワーなんてたかがしれてますよね。
自分は一人、相手も一人なんだし」 「そうですね」 「ですから、
呪いの効果を発揮させるには、自分以外の力を借りなくちゃならない」
「わかります」 「呪力を発生させる装置が必要なんです」 「例えばどういう
ものが?」 「まずは古くからいる神、悪霊の類ですね、西洋なら悪魔と
言われる」 「ああ、その神に相手の破滅を祈るわけですか」 

「そうですけど、悪神の扱いはものすごく難しいんです。首尾よく相手を
葬ったとしても、力のある神をなだめたり、お礼をしたりしなくちゃ
いけないでしょ。これが大変で、一歩間違えば呪った側も破滅します。
このあたりが、人を呪わば穴二つと言われてるゆえんかもしれません」 
「それ以外には?」 「これもね、古くからある力を持った器物を利用する」 
「器物」 「ええ、私たちの組織が使ってたのは、古い古い青銅製の窯でした。
なんでも中国の周の時代に、生贄の首を切ったときの血を煮詰めるのに
使ったものということで、その数は数千と言われています」
「うわあ、それはスゴい。でも、周代の青銅器なら国宝級ですよね。
よく手に入れられました」 「組織のメンバーには華僑の人も
多かったですから、その関係でしょう」 「なるほど」

「あとは、呪力を溜め込んだ場所です。過去にたくさんの人が殺された地」
「ああ」 「とまあ、こう話してもなかなかぴんとこないでしょうから、
具体的な事例をお話しますよ」 「お願いします」 「依頼者は
60代の男性でした。退職して悠々自適の生活をしていたとき、
大学時代の昔の友人が現れて投資話を持ちかけてきた」
「よくあるパターンですね。で、詐欺に遭った」 「そうです。それも
大きな金額を」 「で」 「その友人は、依頼者以外からも金を
集めるだけ集めて外国へ逃げちゃった」 「どこです」
「台湾です。それでね、組織は台湾の黒社会に連絡して居場所を探しましたが、
田舎のほうにいたので都合がよかった。それでね、そっちに家を建てる
とこから始めたんです」 「え? どうして」 「呪いを仕込むためです。

床下、天井裏、庭、その他あらゆるところに強い力を持った呪物を
埋めました。もうね、一歩入ったらたちまち病気になるくらいに」
「で、その家を買わせたんですね」 「はい、格安で提示したら飛びついて
きました。人を騙す人間は、自分が騙されるとはあんまり思わないみたいで」
「どうなりました?」 「その人物、入居して一週間目くらいから体に
吹き出物ができ始め、それが潰瘍になり、入院しましたが2ヶ月ほどで
亡くなりました」 「うわあ、強力ですね。その家は?」
「解体しましたよ」 「うーん、ちょっと疑問があるんですけど、それって
かなりの手間と費用がかかってますよね。それだったら、呪いじゃなく、
殺し屋を雇って、事故に見せかけて始末するほうが簡単じゃないですか」
「そうです。ただね、それだと依頼者の方が納得しないことが多いんです。

だって嘱託殺人じゃないですか。さすがにそれは寝覚めが悪い。万が一
発覚して、自分が罪に問われる可能性もあるし、良心の呵責というのも
あるでしょう。それに対し、呪殺だったら自分の怨みで相手が死んだと
思うことができる」 「うーん」 「それとね、組織の側にもメリットが
あるんです」 「というと?」 「人を殺せば殺すほど、そのものの
呪力が高まるんですよ。今ちょうどスッポン鍋をいただいてますが、
この土鍋も、スッポンを煮た数が多いほど、味がしみ込んでいい鍋になるって
言われるじゃないですか」 「・・・たしかに」 「でもね、それらの呪物の
管理は大変です。私たちの組織が壊滅したのも、扱いをしくじったからです。
前身の筋肉が溶けて液体になる奇病で5人が死亡し、それで解散。
呪いが暴走を始めたんですね」 「うーん、怖い話ですね。


ところで、今、ネットでは呪い代行業者と呼ばれるサイトがたくさんある
んですが、ああいうのはどう思われますか。実際に効力があるものなんで
しょうか」 「bigbosmmanさんに言われていくつか見てみました。日本に
古くからある藁人形の法とか、ブードゥーの儀式をやってるところが多いですね。
でもね、例えば、依頼者に呪う相手の髪の毛や爪を送らせ、ブードゥー人形の
中に入れて針を指したとしても、まず呪いが発動することはありません」 
「どうして」 「そのネット業者が、自分たちで

何のリスクも取ってないからですよ。ただの もうけ仕事として呪いを

やっても成功するわけがありません」 「ははあ、まあそういうもん

なんでしょうね」 「ご馳走になったのに、こんな話しかできず申しわけ

なかったですね。この次は私の店にご招待しますよ」 「ありがとう

ございます。何のお店ですか」 「北京ダックがメインです」 「う」

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