全長487m、エンパイアステートビル大の小惑星「ベンヌ(Bennu)」。
現在、時速10万kmで太陽を周回しており、
来世紀、地球に衝突する可能性が指摘されている。

「もし、ベンヌが地球と衝突する可能性が高まってきた場合の対応策などは、
まだまだこれからの課題になるであろうが、1910年にハレー彗星が接近した時に
世界がパニックに陥った100年前とは、分析力も、科学的対応力も格段に
上がっている」と、映画「アルマゲドン」のように小惑星の爆破、
あるいは軌道変更によって地球衝突が避けられると期待を語ったが、
どうやらそう簡単にはいかないようだ。

NASAは、地球との衝突軌道に入った小惑星にロケットをぶつけて軌道を変更する計画
「HAMMER(緊急対応用超高速小惑星緩和ミッション)」を立てているが、
ベンヌサイズの巨大小惑星に対しては全くの無力だというのだ。(tokana)


ベンヌの大きさのイメージ


昨日、中国の「天空1号」の話を書いたので、今回も宇宙系の話題でいきます。

上記のニュースを読まれて、「嘘くさいなあ」と感じられる方もいるんじゃ

ないかと思います。でも、ベンヌという小惑星は実際に存在しますし、

地球との衝突の危機が、真面目に検討されているのも確かです。

ベンヌは、1999年に発見された直径500mほどの小惑星で、
太陽を回る軌道を、時速約10万kmのスピードで移動しています。
2100年代に地球に8回最接近し、そのどれかで衝突する可能性がある
ことがわかりました。ただし、衝突の確率は、
8回の可能性の合計でも最大0.07%ほどだそうです。

ここまで読まれて、「なんだ22世紀の話じゃないか、そこまで生きてないよ」
と思われた方もいそうですね。あと、「500mは小さいな、
それだと人類滅亡まではないんじゃないか」とか、
「0,07%の衝突の可能性なら、考えてもムダだろう」とか。

まあ、そうですよね。でも、この手のことは、早くから対策を立てておくのは
重要です。ちなみに、もしベンヌが地球に衝突した場合の衝撃は、
高性能爆薬の30億トン分の爆発力、
広島に投下された原爆の200倍に匹敵するということです。

このサイズなら、おそらく人類絶滅はないでしょうが、

小さな国が直撃を受ければ滅びるでしょう。それに、

地球全体の気象に大きな影響を与えるでしょうし、衝撃で地殻が

不安定になり、地震や火山噴火が頻発するなどのことも

考えられます。多くの生物種が絶滅するかもしれません。


で、なぜ早くから対策を立てるべきなのかというと、小惑星は軌道上を

動いているので、遠くにあればあるほど、小さな力でそらすことが

できるからです。例えば、長い定規で線を引くとき、

手元で少し誤差があると、定規の端のほうでは

大きくずれるのと同じ、と考えればいいかもしれませんね。


さて、映画などでは、核で地球に接近した天体を爆破するというシナリオが

出てきますが、これはあまり現実的ではないようです。

惑星は粉々の破片になっても、それらが、そのままひとかたまりになって

軌道を進んで、核汚染された残骸が地球に降り注いでくることになるからです。


NASAを中心とするアメリカの研究チームは、これに対して、
2つの案を検討しています。一つはHAMMERと名づけられた、長さ9m、
重さ8.8トンのロケットを直接ぶつけて、物理的な力技で軌道をそらす方法。
これは、ベンヌが遠くにある場合、1度失敗しても再度 試みることができますし、
例えば10発をセットにして、少しずつそらしていくなどの計画も立てられます。

HAMMER(Hypervelocity Asteroid Mitigation Mission for Emergency Response vehicle)


もう一つの方法は、ベンヌから離れた片方の側の空間で核を爆発させ、その影響で

軌道をそらす方法です。ただし、宇宙空間は真空なので爆風はありません。
核爆発による放射能の照射で、ベンヌの片側の物質だけを蒸発させ、
それを推進力として軌道を変えるということのようです。でもこれ、
かなり計算が大変そうです。22世紀ならできるようになっているんでしょうかね。

ともかく、この手のことは、アメリカだけにまかせてはおかないで、
地球全体が協力して事態に対処することが重要でしょう。
じつは日本の「小惑星探査機はやぶさ」の活動も、これと深く関係しています。
地球の天文的な危機管理をするための専門機関が必要だと思われますし、
それによって、世界の各国がまとまる契機となるかもしれません。

さて、話はオカルト方面に移ります。みささんは「ニビル」という名前を
聞いたことがあるでしょうか。太陽系に存在するとされる仮説上の惑星で、
地球の数倍の質量を持ち、太陽を、ひじょうに細長い楕円軌道で公転しており、
地球接近時に人類を滅亡させるかもしれないと言われているものです。

ニビルの仮説上の軌道


最初は、科学的な観測によって仮説が立てられました。1982年、
木星、冥王星、海王星の軌道が揺れているのが発見され、その原因として、
太陽系の外側に大きな質量を持つ星があることが考えられたんですね。
そして、その仮説上の惑星はXと名づけられました。

これが「ニビル Nibiru」になったのは、アゼルバイジャン生まれの言語学者、
作家、ゼカリア・シッチンによります。天文学者ではなく、

言語学者というところに注意してください。彼は古代シュメール神話を

研究し、シュメール宇宙論の解釈によれば、太陽系内に、

長い楕円形軌道をした3600年周期の仮説上の天体が存在する、

という説を発表し、それをニビルと名づけました。

ニビルには高度な知性を持つ宇宙人が住んでおり、過去に地球に最接近したときに
上陸してきて、シュメール人に文明を与えたとされます。地球に来たのは、
ニビルから地球への植民遠征に出された、一般の労働者に相当する集団で、
これがシュメール神話の神々、アナンヌキにあたります。

シュメールの翼ある神、アナンヌキ


さてさて、ゼカリア・シッチンのニビル仮説は、現在では2つの面から
否定されています。一つは、シッチンがシュメール神話を恣意的に翻訳している

というもの。仮説発表時には、シュメール語を解する学者は多く

ありませんでしたが、やがて多数の研究者が神話にあたったところ、

シッチンの解釈の不自然な点が、いくつも見つかったんですね。

もう一つは天文学方面からで、ニビルの周期3600年というのは異常な長さです。
この軌道では、かなり早い段階で太陽の重力が届かなくなってしまうため、
惑星が太陽系にとどまっていることはできません。
その他、コンピュータが発達し、複雑な重力計算ができるようになっても、
ニビルが実在するという根拠は一つも見つかってないんですね。

とはいえ、惑星Xの問題はいまだに解決されてはおらず、
ニビルではなくても、太陽系の最も外側に、
地球程度以上の質量を持つ惑星が、絶対にないとは言い切れないのも確かなんです。
では、今回はこのへんで。