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今回はこういうお題でいきます。みなさんは大晦日、
どうお過ごしになられているでしょうか?
家でゆっくりテレビを見て、それから年越しそばを食べて・・・
という方もおられるでしょうし、中には、

富士登山に行って、初日の出を見るなどという方もおられるかも
しれません。富士登山は自分も10年ほど前に行ったことが
ありますが、すごい混雑で、山頂まで人が連なっていました。
現在もあんな感じなんでしょうか。

富士山 初日の出登山の行列
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さて、前に5ちゃんねる掲示板の怖い話のスレに、
「年の変わる瞬間に鏡を見てはいけない」といった内容の話が
投稿されていました。先祖代々、そういう言い伝えがあるという
設定になっていましたが、でも、12月31日が大晦日とされる
ようになったのは、明治以後、太陽暦が採用されてからのことです。

大晦日、あるいは元旦というのは、江戸時代までの太陰太陽暦
でないと、本来は意味をなしません。太陰太陽暦では、
30日の大の月、29日の小の月があり、その年によって、
12月29日または30日が大晦日になっていました。

また、実際の時期も1ヶ月ほどズレていて、来年2020年の
旧正月は1月25日の土曜日で、中国をはじめ、中華文化の強い
国では、こちらのほうを大々的に祝う風習が今でも残っています。
さて、大晦日は新しい「年神様」をお迎えするための準備の
日なんですが、年神様っていったい何なんでしょうか。

江戸時代の歳徳神
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これは、毎年、正月に各家にやってくる来訪神としての性格を
持っていて、日本神話では本来、男性の神様でした。それが、
中世ころからでしょうかね、年神様は女性ということにされ、
江戸時代には女性の絵姿がつくられるようになりました。
なぜそうなったかの理由はだいたいわかってるんですが、

説明すると長くなるので今回は割愛させてください。年神様は、
「歳徳神 としとくじん」とも呼ばれ、「頗梨采女 はりさいじょ」
という女性神と考えられることが多いですね。
頗梨采女は、牛頭天王のお后の母親で、龍神の娘です。

素戔嗚命と櫛名田姫
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また、牛頭天王の正体が素戔嗚命であることから、
「櫛名田比売 くしなだひめ」とも考えられています。
櫛名田比売はご存知と思います。出雲の国で八岐大蛇の生贄に
されそうになっていたのを、素戔嗚命が助け、自分の妃としました。
大晦日までに、この年神様をお迎えするための準備をするんです。

大掃除(大祓)をするのもこのためですし、大晦日当日は「除夜」
といって、朝まで起きている習わしでした。また、年神様が来る
方角は毎年決まっていて、それを「恵方 えほう」と言います。
2020年の恵方は西南西の方角ですが、これは太陰太陽暦で
計算されたものなので、現代でどれほど意味があるかは疑問です。

追儺の方相氏
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平安時代ころには、宮中では大晦日の日に「追儺 ついな」の
儀式が行われました。追儺は「鬼儺 おにやらい」とも言い、
手に戈を持った四つ目の「方相氏 ほうそうし」が
四方八方を回って魑魅魍魎を追い祓います。これが、
民間では大掃除になったと言ってもいいかと思います。

さて、大晦日は「おおつごもり」とも言い、江戸時代の庶民に
とっては大変な日でした。当時の生活必需品の米、薪、炭などは
掛売り、つまり借金で、支払い方法は盆と暮れの二季払い。
特に大晦日は一年の総決算で、貸したほうも返すほうも
走り回って、悲喜こもごもの話が生まれました。

2020年の恵方(64方位のため 西南西やや西より)
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井原西鶴の浮世草子『世間胸算用』はお読みになったでしょうか。
ある年の大晦日の1日を年末の風物とともに描いていて、
貸し手と借り手との駆け引きが20話の短編になっています。
内容はきわめて面白く、また江戸の風俗もよくわかるので、
もっと教科書などで取り上げられてもいいと思いますね。

さて、古典落語でも大晦日をあつかったものは多く、「芝浜」
「掛取万歳」 「尻餅」なんかが有名ですね。「掛取万歳」は
大晦日に来た借金取りを、借金取りの好きな歌舞伎、狂歌、義太夫、
三河万歳などを使って煙に巻き、追い返そうとする筋で、
落語家が音曲につうじてないと演ずることができません。

江戸時代の餅屋
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「尻餅」は、貧乏所帯の亭主がおかみさんに「あそこの家は貧乏で
餅屋も呼べないと思われてる。何とかしておくれ」と言われ、
夜半になって餅屋のまねを始める。やがて興が乗ってきて、
おかみさんの尻をぺったんぺったんと叩き始める・・・という
かなりバレた内容でした。

さてさて、現代では、25日にクリスマス、大晦日に仏教の除夜の
鐘を聞いてから、神道の初詣に出かけるというように、
いろんなものがごちゃまぜになっているとはよく言われますが、
自分はその原因の一つには、太陰太陽暦が西洋式の
太陽暦に変わったことがあるんじゃないかと思ってます。

七夕をはじめ、太陰太陽暦でやる年中行事を太陽暦でやると、
形だけになってしまって、天文的、暦的な呪力が
失われてしまうんですね。以前は旧暦でやるところも
ありましたが、どんどん新暦に変わっていっています。
では、今回はこのへんで。

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