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『デュエリスト/決闘者』

今回はこういうお題でいきます。カテゴリは世界史かな。
さて、みなさんは決闘というと何を思い浮かべられるでしょうか。
『OK牧場の決闘』なんかの西部劇でしょうか。背中を向けて立った
2人の男が互いに10歩歩いてからふり向き、
腰の銃を抜いて撃ち合い、どちらかがバッタリ倒れる。

西部劇の様式美ですよね。ですが、20歩も離れると、
互いに当たらないことも多かったようです。もしこれで相手が
死んでも罪にはなりませんが、確認のための裁判は受けねばならず、
民事賠償などもあったみたいですね。このアメリカの開拓時代の決闘も、
もともとはヨーロッパで行われていたものが持ち込まれたんです。

西部劇の決闘のイメージ
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ヨーロッパでは、主に上流階級の間で、10世紀以前から
19世紀まで、決闘が制度として行われていました。
え、何でそんな野蛮なものが、と思われるかもしれませんが、
これにはいろんな事情がからんでいます。

まず、上流貴族というのは警察や裁判になじまないこと。
ヨーロッパでは、貴族は封建領主でもありますから、国王といえども
簡単に裁くことはできない。もし揉め事があった場合、
当事者同士で決着をつけてもらうのが一番よかったんですね。

もう一つは、キリスト教の影響です。ヨーロッパの歴史は
キリスト教を抜きに語ることはできません。もちろん教会が
決闘を推奨していたなんてことはないんですが、
決闘を行う者の間では、神は正しい方に味方すると
考えられていました。一種の神聖裁判の趣があったわけです。

『三銃士』
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さて、決闘の理由の多くは、名誉を傷つけられたことによります。
例えばある貴族が、自分の妻が別の貴族と密通していると
疑った場合、証拠をつかんだらその貴族のところに行き、
足元に白手袋を投げます。もし相手がこれを拾えば承諾の印と
なりました。拾わなかった場合は罪を認めたことになりますが、

それは死よりも不名誉なこととされたので、16~17世紀頃だと、
ヨーロッパ全体で、毎年1000人以上が決闘で命を落としていた
とみられています。ただ、決闘のルールはさまざまで、どちらかが
死亡するまで戦う場合もあれば、最初に一方がケガをして
血を流した時点で終わりというのもありました。

ロシアンルーレットにはギャンブルと決闘の側面があります
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銃を使った決闘では、決闘の立会人が2丁の銃を用意し、
片方にだけ実弾を入れておき、くじで2人の決闘者に選ばせる
という形もあったんです。これでは、勝敗が運に左右されてしまう
わけですが、上記したように、神に裁きをゆだねるという形です。

さて、では日本では決闘は行われていたでしょうか。これは、
ヨーロッパのような合法の制度としての決闘はありませんでした。
「仇討ち」は公認されていましたが、私闘の場合はあくまで
喧嘩両成敗ということになります。

ロンドンオリンピックの決闘競技 銃を使ったフェンシングとも言えます
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とはいえ、「試合、立合」としての決闘はありました。有名な、
宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の戦いは、小倉藩細川家の
主催で行われています。また、領主の公認がなくても、
武芸者どうしの試合はしばしば行われ、どちらかが死んでも
罪を追求されることは少なかったでしょう。

さて、ここからは有名な決闘の事例を見てみましょう。これは
フィクションですが、フランスの文豪、アレクサンドル・デュマの
『三銃士』では、田舎から出てきた若者ダルタニャンが、
銃士隊員であるアトス、ポルトス、アラミスの3人と1日のうちに
別々のトラブルを起こし、決闘の約束をするところから始まります。

巌流島の戦い 決闘ではなく、あくまで試合
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『三銃士』の連載開始は1844年ですが、作中の舞台は
17世紀です。デュマの時代には、もうほとんど決闘は行われなく
なっていました。とはいえ、1908年のロンドンオリンピックでは、
防具をつけロウの弾丸を用いた決闘が公開競技として実施されて
います。決闘で命を落とした有名人はいろいろいますが、1832年、

フランスの天才数学者エヴァリスト・ガロアが、21歳で決闘で
受けた傷がもとで死亡しています。理由は女に関するいざこざ
だったようで、腕に自信がなかったガロアは、自分の死を覚悟した
心境を書き残しています。ガロアは17歳で画期的なガロア理論を
構築しており、早すぎた死というしかないですね。

エヴァリスト・ガロア
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あと、これもフィクションですが、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
だったかな。ドラコ・マルフォイと「魔法使いの決闘」をする話が
出てきていました。立会人がスネイプ先生で、細長い通路に立ち、
互いに杖を向け合うという、伝統を踏まえた決闘シーンになってました。

さてさて、最後に、『エイリアン』や『ブレードランナー』を撮った
巨匠、リドリー・スコット監督のデビュー作は『デュエリスト/決闘者』
というイギリス映画で、決闘にとり憑かれて生涯を送った人物を
描いた内容でした。では、今回はこのへんで。

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
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