bigbossmanです。みなさんは殺し屋というと何を思い浮かべますで
しょうか。劇画の「ゴルゴ13」と答えられる方が多いんじゃないかと
思います。ただあれ、厳密には殺し屋じゃないんですよね。自分も
ゴルゴ作品はかなり読んでるんですが、あの中でゴルゴは自分で、
「自分はスナイパーだ」と言ってるんですね。彼は主にライフル銃を
使って狙撃をしますが、女性のリボンや、宝石、原子力発電所の弁なんかを
吹っ飛ばして終わる回もしばしばあるんです。つまり、それが人で
あろうが物であろうが、ライフルで狙えるものなら何でも撃つのが仕事
なんです。おっと余談が長くなってしまいました。さて、今回は「殺し屋」
と名乗る人にインタビューを試みましたので、その内容を掲載したいと
思います。ただ、あくまで自称でそう言ってるだけで、その人が

本当に人を殺したことがあるのかはわかりません。もし本物だとしたら
自分の命が危ないかもしれないので、裏はとってはいないんです。
向こうが指定してきたので、繁華街にある和食店の個室で話をうかがいました。
「bigbossmanといいます。今日はよろしくお願いします」 「こんな高価い店で
おごってもらって、こっちこそもうしわけないね」 「いえ・・・さっそくですが、
殺し屋ということですが、本当ですか?」 「まあ、本当だよ。ただし
一般的に思われてるだろう殺し屋とは少し違う」 「ははあ、どんな点が?」
「まずだな、俺のやり方じゃ百発百中で人が殺せるわけじゃないんだ。それと俺が

やってるのは復讐の手助けだから。世の中の役にも立ってることなんだ」
「百発百中じゃやないというのは?」 「殺し損ねることもある。だから、
もし殺せなかった場合は金はもらってない」 「そういうことは
よくあるんですか?」 「・・・よくってこともないが、あることはあるよ」

「うーん、今まで何人ぐらい殺したんですか?」 「そうだなあ、片手以上、
両手まではいかないと言っておこうか」 「5人以上10人未満ってこと
ですね」 「そう。漫画のゴルゴよりもだいぶ効率は悪いな」
「それで、料金はどのくらいですか?」 「それは決まった額がある
わけじゃない」 「どうして?」 「依頼人が無理して払おうとすると足が
つきやすいからだ。まあ、ついても困らんけどな」 「どういうことです?」
「例えば、死んだ人に多額の保険金なんかをかけてて、それで払おうとする場合、
どうしたって保険金をかけたやつが疑われるだろ」 「そうですね」
「そのあたりは警察も馬鹿じゃない。まず最初に見るのが金の流れだ。
だから、無理な額を払おうとして、依頼人の行動が不自然になるのは
困るんだよ。だからそれほど無類なく払える額にしてるんだ。
だから値段は依頼人によってケースバイケースだよ」

「なるほどねえ」 「これ、基本だから」 「そうですか。すみません。
まだ、人を殺したことがないもので。で、殺すときの方法はどうしてるんですか。
これもケースバイケース?」 「いや、そうじゃない。主に2通りの方法を
用いることにしている。一人のターゲットに2つの方法を行うんだ」
「ははあ」 「まず一つはターゲットを心理的に追い込む。つまり鬱にさせたり、
自責の念にかられたりするようにするんだ」 「どうやって?」
「これは例をあげて話したほうがわかりやすいだろうな。うーん、ある会社社長が
いたと思いな。そいつは悪どい会社の乗っ取りで、乗っ取られた会社から
自殺者を出した。その自殺者の奥さんから頼まれたんだけどな」 「はい」
「ターゲットがそういう腹黒いやつだと、やりがいがあるんだよ」 「で」
「殺しはチームでやってるんだが、こっちには電波関係の専門家がいる」

「はい」 「で、そいつが例えば車に一人で乗ってるときをねらって、
近くからカーステレオに電波を飛ばすんだよ」 「それは?」 
「当然 故人の声だよ。もちろん前々から録音してたなんてことはないから、
機械合成された音声なんだが、依頼人に聞いてもらっても本物そっくりって
言われるな」 「で」 「その声で、お前のために自殺して悔しいみたいな
ことを言わせるのさ」 「うわあ、嫌ですね」 「まあな。聞こえたのは
一人のときだし、車を調べたって証拠は残ってない。今はドライブレコダー
つけてる車が増えたが、車の中の音声まで記録できるものはまずない」
「そうでしょうね」 「で、普通は幻聴だと思うだろ。自分の罪悪感から
そう聞こえたんだろうって。それが第一歩目だよ」 「で」
「あと、依頼人がターゲットの家族の場合も多いんだ。

そういうケースでは様々な仕掛けができる」 「・・・・」 「例えば、
テレビから一瞬死んだ人の姿が見えたり、携帯から見えたりだな」
「そんなことができるんですか」 「その家庭内に協力者がいれば
できる。まったくの他人では難しいがな」 「で」
「サブリミナルって知ってるか?」 「あの映画とかで、フィルムの間に
商品の広告とかを一瞬混ぜておくやつですね」 「そう。そういうのを
使ったり、電車通勤してるやつには、通り道や駅の広告に、
自殺の引き金になるような言葉や画像を入れておくとかな」
「でも、それじゃあ殺しにはならないですよね」 「そうだ。だから
ターゲットが自殺した場合は、料金は格安にしているんだ」
「なるほど。まあ自殺しないまでも、ターゲットは自分の罪を意識する

ようにはなるでしょうね。で、さっき、2つの方法を併用するって
言いましたよね。そのもう一つの方法というのは?」 「ああ、ここで
俺の出番なんだ。俺の得意分野だからな」 「それはどういう?」
「ターゲットが弱ってきたところで、とどめとして故人の霊を出すんだよ」
「え、どうやって?」 「俺が呼び出すに決まってるだろ。これでも、
殺し屋になる前は、ある新興宗教で教祖をやってたんだ。教団は公安と
モメてつぶれちまったがな。ターゲットにとどめを刺すのは霊本人に
やってもらう」 「そんなことができるんですか?」 「ふつうは
できない。霊ってのは思ってるより力が弱いもんだから、通常では
見えもしないよ。なにしろ肉体はすでに焼かれてないんだから。
だから、霊を出す前にターゲットの心を十分に弱らせておくんだよ」

「なるほど。霊って簡単に相手をとり殺すことができるんですか?」
「霊にもいろいろなのがいるからな、中には気の弱いのもいる。
そういう場合は、霊が相手をとり殺しやすいように、呪符とか
護符とか、さまざまな呪具を使って手助けをしてやるんだ」
「うーん」 「どうだ、これだったら、仮に足がついたとしても
俺は無罪、せいぜいが微罪だろ。懲役になるなんてことはない。
日本の法律は霊がいない前提で動いてるから」 「そうですね。
特に気をつけてることとかは?」 「そぅだな。霊を出す場合、
まあ夜になるな。昼でも出せないわけじゃないが、人に気づかれる
可能性もあるし。だから基本、霊を出すのは、ターゲットが一人で
いるときに限るな」 「だいたいわかりました。呪い殺しじゃなく、
 
本人の霊を呼び出して復讐する手助けをするってことですね。
それだと確かに法律には触れない。・・・何かこの仕事をする上で
困っていることなどありますか?」 「ああ、あるよ。
年々、成功率が落ちてきてるんだ。これは霊を信じないやつが
増えてるってことじゃなくて、霊が視えてたとしても平気なやつが
増えてきてるんだ。困ったもんだよ。それだけ世の中が荒れて、
人の心がすさんで、罪悪感がなくなってきてるんだろうな」
「そう言えば、最初に成功率の話をしましたよね。それってどのくらい
なんですか?」 「・・・まあ、2割ってとこだな」
「うーん、あんまり効率はよくないんですね」 「こっちも新技術を
導入したりして工夫してるんだが、年々悪くなってる。

それだけ生きるのがハードになってきてるんだ」 「だいたい話は
わかりました。ただ、こう言ってはなんですが、自分の目で見ないことには
信じるのが難しいですね。何か証拠を見せてもらうことってできますか?」
「まあ、そう言うだろうと思った。じゃあ、あんたあの奥の駐車場に
車を停めただろ。代公かい?」 「いや、飲んじゃいませんから、
運転して帰りますよ」 「じゃあ、車に乗り込むときに注意してくれ」
「え、どういうことです?」 「行けば分かるから」ということで、
殺し屋の元教祖と別れて駐車場に向かったんです。繁華街のど真ん中
なので怖いとも思わずに。でね、車に乗り込もうとして思わず
大声をあげて飛び退いたんです。車の助手席に、生きているはずのない人が
座ってて、こっちを見てすうっと消えたんです。いや、誰かは言いませんよ。