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今回はこういうお題でいきます。まあ忍者の話なんですが、
日本史の中でも、忍者の存在ほど脚色されているものはなく、
現代のイメージはまったく実体とかけ離れています。
そしてそれが、外国にもジャパニーズ・ニンジャとして
紹介されてるんですね。

これはもちろん忍者自身のせいではなく、講談本や映画、
劇画などの影響です。自分はさすがにやったことは
ありませんが、昔の子どもの中では、口に巻物を咥え、手に印を
結んでドロロンと消えるといった遊びがあったみたいですね。

キャプチャff

ちなみに、敵から逃げる戦法を「遁術 とんじゅつ」と言い、
江戸時代の忍法書には、中国の陰陽五行説からとられた
「五遁の術」が載っています。本題と関係ないですが、
興味深いものですので、ご紹介しておきましょう。

木遁・樹木、材木、草原、稲田、麦畑などに隠れて敵の目を
   ごまかす。木ノ葉隠れ、草葉隠れなどとも言います。
火遁・火や火薬、煙玉などを利用して敵の注意をそらす。
土遁・必ずしも土の中に隠れるということではなく、
   地形を利用して逃げる術。
金遁・敵を買収する術。  水遁・ 水を利用して逃れる術。

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さて、みなさんは山田風太郎の時代小説というか奇想小説、
『甲賀忍法帖』をお読みになられたでしょうか。これ、自分は
日本の娯楽小説の中でも10本の指に入る傑作だと考えて
います。山田忍法帖の第1作で、後年のもののように
エロやナンセンスは強くなく、かなりシリアスです。

あらすじは、甲賀卍谷と伊賀鍔隠れに潜む一族は不倶戴天の仇敵で
あり、家康は第3代の将軍選びを、甲賀対伊賀の忍法争いによって
決めることにした。それぞれが10人ずつの代表忍者を出し、
最後まで生き残ったほうが勝ち。双方の忍者は、
人間とは思えない異常な技を持った者ばかり・・・

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これ以外にも、伊賀と甲賀の対立を描いた作品は多いですが、
史実としては、そこまで仲が悪かったわけではありません。
地理的に近い位置にあったので、ときに協力し、とにきは
対抗するといった関係だったと考えられています。

甲賀流は、「こうが」と読まれることが多いんですが、正しくは
「こうか」で、近江国甲賀の地に伝わっていた忍術流派です。
現在の滋賀県甲賀市(こうかし)、湖南市に拠点がありました。
戦国時代は六角氏に属する形でしたが、自治を認められるなど
独立性が高かったようです。

芥川九郎右衛門
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有名な忍者としては、望月与右衛門、鵜飼孫六、芥川九郎右衛門
などがいます。芥川の逸話として、体を透明にすることができた。
薪割りをしていたとき、刺客が離れた物陰に隠れていたが、
薪に斧をふり下ろしたとたん、刺客の右腕も肩から切り落とされた。

松本藩に仕えていましたが、酒宴で藩主が、座興に何か忍術を
見せよと命じたものの、芥川は平伏したまま。しかし、
そのとき踊っていた十数人の女たちから悲鳴が上がり、見ると、
すべての女は腰巻きを引き下ろされ、それらが投げ上げられて
宙に舞っていた・・・といった話が残っています。

2代目 服部半蔵正成
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伊賀流は、伊賀国の地に伝わっていた忍術流派の総称で、
本拠地は現在の三重県伊賀市と名張市にありました。戦国時代は
伊賀守護、仁木氏に属しながらも、甲賀同様に合議制の
自治共同体を形成していました。有名な忍者としては、
百地丹波、服部半蔵などですが、半蔵については後述します。

この両流派が徳川家に用いられるようになったのは、ご存知の
方も多いでしょうが、本能寺の変からです。そのとき、
家康は少人数で上方を回ってましたが、信長の盟友であったため、
大きな危機に直面しました。

家康の伊賀越えルート(諸説あります)
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しかし、配下の服部半蔵の手配により、大阪の堺から、 
伊賀の険しい山道を越えることで、無事に本国三河に帰り着き
ました。このときに家康を護衛したのが、伊賀衆と甲賀衆
なんですね。これ以降、半蔵は忍者の頭領とされ、江戸幕府に
なると四谷に館を下され、その付近は伊賀町と呼ばれました。

この服部半蔵は、2代目の 服部半蔵正成ですが、
忍者ではなかった(忍術を使わなかった)というのが定説です。
松平氏(徳川氏)の譜代家臣で徳川十六神将、鬼半蔵の異名を持つ、
れっきとした武将だったんですね。その槍と称されるものが

半蔵門
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残っていますが、長大で、おそらく体が大きく体力があったと
思われます。戦場でも、一番乗り、一番槍などの武功を上げており、
忍者のイメージで見られるのは、ちょっとかわいそうでもあります。
江戸城西門の警備を担当し、その外に屋敷を構えたので、
「半蔵門」の名が残っていますね。

さてさて、ということで、今回は忍者のお話でした。
これ以外にも、風魔、根来、真田忍軍などが創作には登場しますが、
それについても、機会があれば書いてみたいと思ってます。
では、今回はこのへんで。

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