今回はこういうお題でいきますが、これはなかなか
難しい話です。というのは、現代でこそ神社の建築様式に
ついて、あれこれ述べることはできますが、では、古代は
どうだったかというと、それがよくわからないんです。

以前「古神道は復元できるか?」という記事を書きまして、
そこで「復元できないだろう」という結論を出したんですが、
建築についても同じだと考えています。日本では、
宗教的なものは縄文時代の早い時期に始まったと考えられ、
それを裏づける土偶なども多数出土しています。

縄文時代の石棒
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まあ、これが神道そのものというわけではないですが、
後の神道に大きな影響を与えたのは間違いないでしょう。
ただし異なる部分もあり、例えば、縄文時代には性に関連した
祭祀が行われていたと考えられ、男根を模った石棒や、
妊婦の土偶が見つかっています。

出産は豊穣の象徴と考えられ、安産が祈られていたわけです。
これに対し、現在の神道では、性的なものは注意深く
とりのぞかれ、経血や妊婦は穢れとみなされたりしますよね。
ですから、必ずしも古代のアニミズムがそのまま
神道になったわけではない。

纏向遺跡の掘立柱建物の柱跡
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あ、こんなことを書いてると字数がなくなる。で、古代の
神道の形がわかりにくいのは、文献が残されてないことが
最も大きな理由です。『古事記』  『日本書紀』があるではないか、
と思われるかもしれませんが、どちらも8世紀に成立した
書物であり、8世紀は仏教が隆盛を迎えていた時期です。

三内丸山遺跡
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ですから、どうしても内容が仏教や儒教の影響を受けてしまって
いるんです。で、建築については、法隆寺のような古い
建築が残っているわけではありません。奈良の大神(おおみわ)
神社が歴史が古いと言っても、再建された建物です。
古代の遺跡の発掘をしても、建物については、柱穴しか

残ってないんですね。ですので、その上の建築がどうなって
いたかは、想像をめぐらして復元するしかないんです。
画像は、青森県の縄文遺跡、三内丸山遺跡のものですが、
あえて柱だけを立てて復元してあります。それ以上やると
正確性を欠くおそれがあるからです。

大社造り


さて、では古代の神社がどうなっていたかというと、おそらく
現在のような本殿、拝殿の区別はなかった。また、鳥居も
だいぶ後代までなかったと思われます。ただ一つ言えるのは、
高床式の建物であっただろうということ。

神明造り


古代は、ずっと後まで、庶民は竪穴式住居に暮らしていましたが、  
その一方、早い時期から掘立柱の高床式建物もありました。
これは一つには、貴人の住居として使われ、また、
穀倉、稲倉として使用されたと考えられます。

高床で湿気がこもるのを防ぐとともに、ネズミなどの有害生物が
侵入できないように工夫していたわけです。そして古代では
穀物はたいへんに重視されました。これは当然ですよね。
その年の作柄が集落の生死に直結するわけです。ですから、
古代の神社は稲倉のような形から始まった。

ねずみ返し
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さて、ここで少し話を変えて、原初的な神社の建築に最も近い
のではないかと言われているのが、出雲大社の「大社造り」と
伊勢神宮の「神明造り」です。大社造りは、屋根はゆるやかな
曲線で、社の中心の心御柱が棟にまで通っています。また、
入り口が左右どちらかに偏っている場合が多い。

神明造りのほうは、大社造りとは逆に屋根の反りがなく、
心御柱は床下までです。伊勢神宮は「唯一神明造り」
と言われ、普通の神明造りとは微妙に異なっていて、
他の神社が真似することを許されない特別な様式です。



自分は建築は素人なんですが、あちこちの神社に参詣して   
写真などを撮らせていただいているうち、だんだんに
違いがわかってくるようになりました。後代に造られた
神社は、仏教寺院の影響を強く受けていて、「流造り」 
「春日造り」 「入母屋造り」などがあります。

現在の神社の90%以上が、ここまでの5つの形式に該当すると
言われますね。この他には、外見は一つでも、内部が2部屋に
分かれている、大阪・住吉大社の「住吉造り」、
2つの棟を一つにつないだ「八幡造り」など。

神明造りの神棚
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あとはそうですね、自分は神社を参拝したときには、正面が
どちらの方角を向いているか記録するようにしてるんですが、
東向きか南向きになっている場合が多いです。東向きにすれば、

朝に社殿に日があたり、たいへん雰囲気がいいですから。

ただこれは地形とも関係しています。

さてさて、神社建築のルーツと建築様式についてみてきました。
みなさんには、家に神棚があるという方も多いでしょう。
一般的に、神棚は神明造りで造られることが多く、神明造りが
祀るのは天照大神ですから、できるならば正面を東に
向けるのがよいでしょう。では、今回はこのへんで。