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あまり縁起のよくない内容になりますが、今回はこういうお題でいきます。
「冥婚」をWikiで見てみると、「生者と死者に分かれた異性同士が行う結婚のこと。
陰婚、鬼婚、幽婚などとも言う」と出てきます。中国をはじめ、東アジアで
広く見られる風習です。中国だと、山西省、陝西省、河南省あたりが多いですね。

中国の冥婚は、およそ3000年前からあったと考えられています。
『三国志』には、魏の曹操が、かわいがっていた八男の曹沖が13歳で未婚で
死んだため、葬儀にあたって、同時期に亡くなった甄氏の娘の遺体をもらいうけ、
妻として一緒に埋葬したという記述があります。

元来、中国の冥婚は、「未婚の死者同士を結婚させる」ものだったんですね。
では、なぜこれが行われていたのか。中国の宗教は基本的に、
儒教をベースとして、それに民間信仰である道教が混じったものです。
儒教では、祖先の霊を祀ることが重視されます。

 



日本の仏教では、位牌を用いる宗派が多いですが、これはインドで生まれた
原始仏教にはなく、中国の儒教の葬送儀礼が形を変えて持ち込まれたものです。
おおざっぱな話をしますと、中国の死生観では、
天界には天帝を始め天人がおり、仙界には仙人、人界には生きた人間がいる。
そして、死んだ人間は地下の冥界に行くことになります。

このとき、結婚して自分の家族を持たない人間は、
供養してくれる子孫がいないため、「鬼 キ」と化すとされます。
ここでいう鬼とは、角が生えて金棒を持った日本の「鬼 オニ」ではなく、
「幽鬼」、つまり死者の霊のことを指します。

幽鬼 その中でも「僵尸 キョンシー」は死体のまま動き回る


そこで、冥婚という習俗が行われるようになったわけですが、
死者の鎮魂を願ってのものだったんです。中国では、死者の供養として、
紙銭(冥銭)を燃やします。これは死者が冥界で使えるようにするためで、
冥婚では、あの世で一家を構えられるように、
紙の屋敷、召使い、家具、宝石なども大々的に燃やすんですね。

紙銭
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さて、冥婚には、弱い形から強い形まで、さまざまなものがあります。
最も弱い形の冥婚は、日本の山形県で行われる「ムカサリ」に見られる、
「事故や事件、病気などで子供を失った親が、絵や写真で婚儀の様子を描き、
奉納する」という形です。これは、結婚する相手が、
この世に存在しない架空の人物であってもかまいません。

ムカサリ絵馬
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それから、上記した死者同士を結婚させてから埋葬する形、
もっとも過激なのは、婚約者の男性が結婚前に亡くなった場合、女性のほうを
殺してしまうものですね。ただ、これが実際に行われたケースは、
歴史的にそれほど多くはないと考えられます。

さて、2016年、中国、陝西省の交通警察が、2名の女性の死体を乗せた
自動車を発見し、運転していた男ら3人を拘束しました。
調べによると、この2名の女性は知的障害者で、冥婚の相手となるために
殺害されたことが判明したんですね。遺体の値段は、3~10万人民元
(45万~150万円)で、中国の農村部では大金です。

 



冥婚の相手となる女性の遺体は、以前は公然と売買されていましたが、
2006年に、日本の死体遺棄にあたる法律ができて禁止され、
その後は、未婚の女性の墓が暴かれ、遺骨が盗み出される事件が多く発生
するようになりました。そしてとうとう、殺人が起きてしまったわけです。

このようなことが起きる背景には、中国での、女性と男性の数のアンバランスが
あります。女性のほうが数が少ないので、未婚の男性が多いんです。
これは、以前中国で実施されていた「一人っ子政策」によるところが大で、
もし子どもが一人だけなら、嫁に出さねばならない女子より、
一家を継ぐ男子がほしいのは当然ですよね。

一人っ子政策のポスター
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そこで、妊娠して女児であることがわかったら堕胎したり、
産まれた女児は間引きで殺したり、無戸籍児になったりしました。
また、中国では改革開放により、地方でも大規模な建築工事や土木工事が行われ、
若い男性の死者がたいへん多いんです。これらのことが、
冥婚をめぐっての犯罪が頻発するようになった背後にあるんです。

さて、中国本土と台湾では、冥婚の概念は異なっており、台湾で未婚の
女性が亡くなると、遺族が現金や紙銭、髪の一束、爪などを入れた赤い包み
を表に出して、男性が拾ってくれるのを待つという風習があります。
それを最初に拾った男性が花婿となるわけですが、
素通りするのは不吉とされるため、拾ってくれる男性もいます。

これを拾う
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このとき、男性は既婚者であってもかまわないし、未婚でも、その後に
生きている女性と結婚してもかまいません。生きた男性と、亡くなった女性は、
結婚式をあげ、その後男性は、女性の位牌を家において供養します。
一般的な結婚と同様、両家の間に関係ができて、何かにつけて援助してもらえます。
ですから、男性側にもメリットがあるんですね。

 

さてさて、ということで、本来若くして亡くなった者の冥福を祈って行われる

習俗が、墓暴きや殺人の犯罪を引き起こすことになってしまいましたが、

これは現在の中国が、一方に迷信深い田舎の人々、また一方には、

文化大革命後に生まれた、拝金主義でやったもの勝ちの、神も仏も信じない

人間が混在しているためなんです。では、今回はこのへんで。