中国の科学者がヒト受精卵に世界初の遺伝子操作──
タブーを冒したこの実験について、欧米では学術誌からマスメディアまで、
その是非をめぐり大論争となっている。

世界を驚愕させたその実験は今年4月に生物学・生物医学の学術誌
プロテイン&セル」に掲載された論文で明らかになった。
中国広東省にある中山大学の黄軍就副教授らの研究チームが、
ヒト受精卵の「ゲノム編集」を行ったというのだ。




この話題について考えてみます。「デザイナーベビー」という概念があります。
人間の遺伝子配列を人工的に操作することにより、目や髪の色といった
特定の身体的特徴を持つ子供の生まれる確率を上げる、
技術的アイデアのことです。これは外見だけではなく、

知能や体格、運動神経まで操作することも論理的には可能です。
しかし倫理的には強い批判があり、積極的な実験を行っている
専門機関は、表向きにはありませんでした。それが、
この中国における実験が発表されて論争を呼んでいるんですね。

中山大学の研究者は、批判を予期していたのでしょう。
使った受精卵は、子宮に戻しても育たない異常なものである、
ということを論文につけ加えています。うーん、受精卵を使って
研究する場合は世界的に規制は少ないんですが、

だSADさa

倫理的な問題のため、やはり行っている機関は多くはありません。
ですから、もしある国が本気でこれをやろうと考えた場合、
技術レベルで他国を大きくリードできる可能性があります。
中国は全体主義国家ですので、

このような実験は他の国よりも行いやすい面があると思われます。
世界的な制限はどうしても必要でしょうし、
抜け駆け的な研究は評価されるべきではないような気がしますね。
さて一方、これを強く批判しているアメリカはどうでしょうか?

実は10年ほど前から、バイオ系の会社で遺伝子を解析して、
結果を有料で依頼者に知らせるサービスが存在しています。
これは本人自身の遺伝病にかかるリスクもそうなのですが、
親となる男女のサンプルを提出して、生まれてくるだろう赤ちゃんの

病気のリスク、目や髪の色、知能などを知らせることができます。
アメリカでは、20年以上も前から精子バンク、卵子バンクが定着しており、
優れた子を持ちたい男女が、高額な費用を出して、
有能な人の精子や卵子を買うということが行われているんです。

デザイナーベビーは、パーフェクトベビーに結びつきやすいのですね。
完璧な子どもを持ちたい、背が高く、肥満にはならず、将来ハゲることもなくw
長生きし、運動神経は世界トップアスリート並み、知能は天才科学者並み・・・
そのような子どもを得たいと考える親はそれなりに多くいるのだと思われます。

dsっdさ

上記のアメリカの事例は、ただ遺伝の可能性を知らせるだけでしたが、
これに遺伝子操作を組み合わせれば、
パーフェクトベビーができあがってしまいます。
つまり、商売になるということです。米国最高裁判所は2013年、

「自然界に存在する遺伝子自体には特許は認められない」が、
「遺伝子であっても人工的に作出されたものならば特許が認められうる」
とする判決(Myriad最高裁判決)を出していますが、
これはかなり危うい話だなあと自分は思います。特許を得るために、
とりあえず危険そうなものでも作ってしまおう、とはならないでしょうか。

どうでしょう? もし倫理的に許されるなら、
みなさんはパーフェクトベビーを望まれるでしょうか。
完璧であるものの、親である自分にはほとんど似ていない、
先祖代々伝わっているものを受け継いでいない赤ちゃんの誕生をです。

このあたりは、アメリカは日本とは事情が異なっていて、
向こうは能力主義的な傾向、つまり優れた素質を持つものが
社会で上に行く、という考え方が日本よりも強いですし、
さまざまな民族が混在する人種のるつぼ社会でもあります。

日本では、他人より突出しない、目立たず大勢にしたがう、
こういうこともある種の美徳として見られる面があるのですが、
アメリカはそうではないんですね。
しかし現状、パーフェクトベビーが認められたとしても、

fsっdfs

おそらく高額な費用が必要でしょうし、富裕層しか利用できないのであれば、
社会的にはますます貧富の差が増大するかもしれません。
では、このような事例はどうでしょう?
英紙「Telegraph」によると、「イギリスに住むカルメンさんは、

自身の妊娠を知った時非常に不安を感じたという。なぜなら、
彼女は父から珍しい型の筋ジストロフィー難病「シャルコー・マリー・トゥース病」
を遺伝しているからだ。幸いにも、カルメンさんは軽度の症状で済んでいるが、
もし出産する場合、子どもに遺伝する可能性は50%だと専門医から警告されていた。」


このケースでは、彼女の母親、そしてガブリエルさんのDNAサンプル採集、
遺伝子コードの染色体の30万ヵ所で遺伝子配列の比較を行い、
変異の原因を突き止めました。そして、
体外で培養した胚で両親から受け継いだ遺伝的欠陥の有無をチェックし、

正しい数の染色体を持つ健康な胚だけを選りすぐり子宮に移植、結果、
息子のルーカス君が生まれました。彼は病気もなく、
すくすくと育っているようです。子どもを持ちたいが、
深刻な病気が懸念されるため出産を躊躇していた母親が、

念願の健康な子どもを持つことができたわけです。
しかもこのケースは、遺伝子操作ではなく、
欠陥のない自分の遺伝子を選んで胚とするという方法でしたので、
倫理的な問題点は少ないです。

これを行ったことによって、不幸になった人は、
赤ちゃんの周囲にはいないように思われます。
このようなケースの場合は許されるのでしょうか?
これもなかなか難しいところです。

さてさて、自分が思うのは、この遺伝子操作は、あくまで
個人の観点から考えられていて、人類という種全体についての
考察があまり見られないことです。遺伝子というのは、
基本的には種全体が繁栄する方向で動いています。

とすれば、ハゲの人がいることも、知能に高い低いがあるのも、
極論すれば遺伝病があることも、人類全体にとって、
われわれには計りしれない、何らかの意味があるのかもしれないんです。
例えば弱者がいることで、社会全体の人権意識が高まり、
弱者保護や、障害を個性として見る方向に動いていくとか・・・

突然変異にしても、バリエーションがあるから適者生存につながります。
ですから、自然のまま、あるがままのにしておくほうが、
人類全体に対するリスクは少ないのではないかという気がしますね。
世界的な議論の進展が望まれます。では、今回はこのへんで。