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なかなか奇異な感じのする題名ですが、
西欧世界では、けっこう議論の対象になる内容です。
まず、宇宙人(知的生命体と言ったほうがいいかな)はいるんでしょうか。
世界の科学者でも、さまざまな論があるんですが、
「いる」と考えている人も多いようです。

宇宙には実にたくさんの、想像できないほどの数の星があります。
その中にはおそらく、地球と同程度の気温、重力、光量、
回転速度、元素の種類や量などを持つ星はあると思われます。
そこに生命が生まれているという可能性は、否定できない気がします。

もっとも、SF的な思考に慣れた方であれば、
温度の高い星にはプラズマ状の生命体がいるかもしれないし、
重力の大きな星には、地表にへばりつくように住むケイ素主体の、
鉱物の身体を持つ生命体がいるかもしれない・・・

こんなふうに考えられるかもしれません。
もっと言えば、「生命体」という言葉を使いましたが、
もしかしたらそれは、地球で考えられているような「生命」の概念には、
あてはまらないものであるのかもしれないんですね。

『天地創造』 ミケランジェロ
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さて、ここではキリスト教にのっとって考えてみます。
基本的にこの世界は、キリスト教では神が創造したものであるとされます。
ですから原理主義的なキリスト教には、進化論を認めず、恐竜と人間は
ともに創造され、共存していた時代があったなどの論もあります。

それで、天地創造のときに「神は地球人類以外を創造されなかった」
としてしまえば話は簡単なのでしょうが、
この宇宙探査時代にあっては、実際はなかなかそうもいかないのでしょう。
2008年、11月14日。現ローマ法王・ベネディクト16世が、

バチカン宮殿において「神はアダムとイブと共に、地球外生命体を
創造された」このような声明を発表したという話があります。
しかしこの真偽はよくわかりません。確実なのは、同じ2008年に
バチカン天文台長のガブリエル・フネス氏が、バチカン新聞に
「宇宙人は我が兄弟である」という記事を寄せ、

「地球に様々な形態の生命があるように、宇宙にも神が創られた
知的生命体がいるかもしれない。さらに、宇宙人の中には原罪を負って
いない存在さえあるかもしれない。地球外生命体も神が創られたもので
あるため、 地球外生命体の探求と神への信仰とは矛盾しない」
このような内容を書いていることです。(元記事 BBCニュース)
BBCニュース

『楽園追放』 大天使ミカエルに追われるアダムとイブ
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さてさて、ここで出てくる「原罪を背負っていない存在」とは何でしょう。
まず原罪とは「アダムとイヴが神が禁じた楽園の知恵のリンゴを食べた罪」
のことです。このため2人は楽園を追放され、そしてこの罪は受け継がれます。
神への不服従の結果、人の世に苦しみ・情欲の乱れ・死が生じたわけですね。

現在の人類はすべて、アダムとイヴの子孫ですから、
この原罪から逃れるものはいないとされます。
しかし、宇宙人はアダムとイヴの子孫ではないでしょうから、
原罪を持たない存在というものもありえることになるんです。

このあたりの宗教的な問題を追及したのが、
ジェイムズ・ブリッシュというアメリカのSF作家が書いた『悪魔の星』
という本です。1959年ヒューゴー賞受賞ですから、けっこう古いものです。
内容はかなり難解です。科学的に難解というより、宗教的に難解な話で、
日本人にはあまり興味を持たれないと思われます。

だいぶ前に読んだので、うろおぼえの部分もあるんですが、
あまりネタバレにならない程度に内容を紹介すると、科学者でもある神父が、
リチア星という惑星の調査に訪れる。そこにはトカゲのような姿の異星人が
住んでいるが、彼らには宗教がないにもかかわらず、知能が高く理性的で、
犯罪など、心の暗い面とは縁のない生活をしている。

パンスペルミア仮説
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それを見て、神父は悩み始めます。神を持たない彼らの暮らしが、
地球人よりもはるかに優れたものであるのならば、神とはいったい
何なのか?そして、ついにはこのような疑念を持つに至ります。
彼らリチア人は、悪魔が作り出した星の住人なのではないのか?

しかし、キリスト教の教義上、悪魔には創造する力はないことになっている。
では、自分の考えは異端なのか?こういった内容が、
前半で神学論争なども交えて緻密に書かれます。後半、主人公は
リチア人から彼らの卵の一個を託され、地球に持ち帰ります。

そこから生まれたリチア人は、リチア星にいる他のリチア人のようには育たず、
原罪を持たないものとして、扇動者のようにふるまい始めます。
かつて地球にもう一人だけ存在した、原罪を持たない者
(マリアの処女懐胎から生まれたイエス・キリスト)のようにです。

バチカン天文台
キャプチャdddddd

ここで作者は、善と悪の間で、神とはいったい何なのか?
神の本質、宇宙の本質とは善なることにあるのか?というような疑問を、
読者に投げかけているのだと思いました。言い方を変えれば、
いったい悪魔の星とは、神を持ち、それゆえに原罪を背負い、

背徳と犯罪にあふれた地球と、神を持たず理知的に暮らしている
リチア星のどちらであるのか・・・宇宙人という要素を入れることで、
これまでキリスト教で考えられてきた神の概念が、
大きく揺らいでしまうんですね。

ところで、最近「生命宇宙飛来説」がとりざたされることが多くなってきました。
これはパンスペルミア仮説といい「宇宙空間には生命の種が広がっている」
「地球上の最初の生命は宇宙からやってきた」とする仮説のことです。
この仮説のアイデア自体は、もともとは1787年、



ラザロ・スパランツァーニによって唱えられた古いものなんですが、
根拠とともに提示されることが多くなってきたんですね。
南極などで見つかった隕石から、生物のDNA(デオキシリボ核酸)
を構成する分子を発見したと、NASAなどの研究チームが発表したこと。
また、38億年前の地層から真正細菌らしきものの化石が発見され、

地球誕生から数億年というわずかな期間で、ここまで進化した生物が
登場するのは考えにくいこと、などなど。もしこれが正しければ、
地球人はアダムとイブの子孫ではないんでしょうか。
今までキリスト教の教義の根本にあった原罪の概念はどうなるんでしょう?
興味深いなあと思っています。では、このへんで。

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