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今回はこういうお題でいきます。どっから書いていきましょうか。
まず、「蠱術 こじゅつ」は中国から日本へと伝わったものですが、
さまざまな内容を含んでいて、たいへんわかりにくくなっています。Wikiを始め、

あちこちのホームページに書かれている記述には混乱が見られます。

自分は、すべてのものを総称した上位概念を「蠱術」と呼んでいて、
その中に「蠱毒 こどく」 「巫蠱 ふこ」 「犬神の法」などが含まれます。
蠱術は、簡単に言えば、他人に害を与える目的の、
「中国式の呪詛」を表しています。

さて、「蠱」という漢字ですが、これは壺などの容器の中に、
たくさんの虫がいる状態を表します。ひじょうに古い漢字で、
3000年以上前の中国の殷(商)の時代には、甲骨文字としてすでに
あったようです。ですから、長い長い歴史を持っているわけですね。

「蠱毒 こどく」は、みなさん聞かれたことがあるでしょう。
蠱術の中でも生き物を使う技法で、現在も、中国の少数民族である、
苗(ミャオ)族に伝わっているという話もありますが、
自分が文献を調べても、はっきりしたことはわかりませんでした。

蠱毒
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蠱毒の方法として、『隋書 地理志』には、「五月五日に百種の虫を集め、
大きなものは蛇、小さなものは虱と、併せて器の中に置き、
互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。蛇であれば蛇蠱、
虱であれば虱蠱である。これを行って人を殺す。」
と出てきます。

で、人を殺すためには、その生き残った虫を相手に食べさせるわけですが。
これで本当に人が死ぬかどうかは大いに疑問です。
蛇などの毒は、噛まれて血液中に入った場合は致命的ですが、
口から胃に入った場合は、それほどの効き目はないはずです。

おそらく、中国で古くから研究されていた、漢方薬系の毒薬を
併用したのではないかと思われます。ちなみに、漢方薬には副作用はない、
などという人もいますが、そんなことはなく、重度の肝障害や、
肺炎での副作用死をもたらすものが知られています。

次に「巫蠱 ふこ」について。これは、呪う相手をかたどった木製の人形を
土中に埋め、巫女が呪いをかける
ものです。
そんなことで本当に効果があるのか?と思われるでしょうが、じつは、
たいへんな効果があり、中国では内乱まで起きています。

巫蠱
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ただし、効果というのは「巫蠱を行った罪で、相手を陥れる」ことです。
中国の漢の時代、紀元前91年、漢の武帝からうとんじられていた
皇太子の戻(れい)が、重臣の江充から、巫蠱の法を行っていると訴えられ、
皇太子の宮殿から木人形が発見されました。

進退窮まった皇太子は、江充を斬った上で反乱を起こしましたが、
死者数万人の激しい戦いの後、皇后とともに自殺しています。
この事件を「巫蠱の乱」と言います。なお、後に、皇太子の無実が

明らかになり、武帝は江充の一族を滅ぼし、皇太子を追悼しています。

井上内親王を祀る御霊神社


日本でも、奈良時代の「養老律令」において、蠱毒は厳しく禁じられ、
772年、井上内親王が天皇を呪い殺そうとした罪で皇后の位を追われ、
皇太子とともに、不自然な形で死亡しています。
井上内親王の蠱毒は冤罪の可能性が高く、その怨念と考えられる天変地異が
しきりに起こったため、後に無実を認められ、名誉回復されることになりました。

ということで、蠱毒や巫蠱は、その呪いが効力があるというより、
相手が「蠱術を行った」と言いがかりをつけ、呪いの人形などを偽造し、
政敵を葬るために用いられたケースが、たいへん多いんですね。
呪詛よりも、現実的な勢力争いのほうが、ずっと怖いということです。

さて、最後に「犬神の法」ですが、「犬を頭部のみを出して生き埋めにし、
その前に食物を見せて置き、餓死しようとする瞬間ににその首を切ると、
頭部は飛んで食物に食いつき、これを焼いて骨とし、
器に入れて祀る。すると永久にその人に憑き、願望を成就させる」


犬神
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こういう使い方が一般的に知られています。相手を呪う場合は、
その人が通る道筋に、犬の頭蓋骨を埋めておいて踏ませる。
あるいは、犬の首についたウジを乾燥させ、
食物に入れて食べさせるなどの方法があるようです。
でも、現代の目からすれば、こんなことで人が死ぬとは思えませんよね。

さてさて、ここまで見てきたように、蠱術はまあ迷信です。
歴史的には、それを行ったと喧伝して、政敵を葬り去るために使われてきました。
現代でも、メールを偽造したりとか、会話を録音したりとか、
人を陥れるためのさまざまな謀略がありますが、
その一種だったわけです。では、今回はこのへんで。

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