今日はこのお題でいきますが、おそらく生理的拒絶反応のある方は多いでしょう。
その場合は、スルーをお勧めします。
『海外での食用昆虫ビジネスが活気を帯びている。
ここ3年の間にクラウドファンディング「Kickstarter」において、
食用コオロギを扱ったプロジェクト4件が目標額に達成しており、
総計126万ドルの資金の調達に成功している。食用昆虫への投資は増えており、
前述の4件のうち1つの企画団体(Exo社)は、さらに今年3月、
400万ドルの資金調達に成功したという。日本においても今年3月、
徳島大学の研究グループが学術系クラウドファンディング「academist」を通じて、
コオロギ養殖技術の開発プロジェクトを立ち上げている。』(JBpress)
ま、昆虫食への投資がどんどん増えているということですね。
これは世界の人口増加と食糧問題に大いに関係があります。日本をはじめ、
世界の先進国の中には少子化による人口減少に悩まされている国も多く、
いまいちピンとこないのですが、途上国中心に人口は増大化をたどっており、
2050年には世界人口は90億を超えるという試算もあります。
で、地球全体で見れば食料が足りなくなる。これには、
穀類をはじめとした植物由来の炭水化物の摂取の問題がまずあるのですが、
それと同時に、肉類から摂取するタンパク質の問題もあります。
現在は、牛・豚などの家畜の肉が主に食べられていますが、
食肉の摂取量は将来的に、途上国において50%増加するほか、
世界全体でも3割近く増加すると見込まれています。
これで何がマズいかというと、畜産というのは効率が悪いんですね。
牧草地などで大きな面積を使うのに、とれる肉の量は多くはありません。
穀物の増産を阻害する要因となりえます。
それと、心配されているのは畜産による環境の破壊です。
世界に排出されるアンモニアの7割り程度が家畜に由来するほか、
人間活動による温室効果ガス排出量の14%以上が家畜の排泄物や腸内発酵による、
という試算があるのです。かつて恐竜は、自分たちが出すオナラで、
どんどん環境を破壊して滅びにつながっていったなんて話もありました。
畜産が拡大すれば、土壌汚染、大気汚染も増加します。
せっかく工業由来の2酸化炭素排出量を抑えても、
こちらが増大してしまっては意味がなくなってしまいます。
ビジネスチャンスがある、というわけです。小昆虫養殖の利点としては、
・排出される環境汚染物質が家畜に比較ししてずっと少ない。
・小さな面積で多くの収量を得ることができる。
・飼料も少なくてすみ、コストがあまりかからない。
・昆虫はまるごと食べられるが、牛・豚などは廃棄する部分が多い。
この他、漁業などは資源枯渇、種絶滅などの問題がありますが、
養殖であればそれは関係ないですよね。
栄養価も、昆虫食は牛・豚などに劣るということはないようです。
全身まるごと食べるのですから、むしろ多様な栄養素が含まれています。
これはいいことずくめのように思えるのですが・・・
こっから話は不快になっていきますのでご注意ください。
現在、養殖が研究されている昆虫として、「ヨーロッパイエコオロギ、
ミールワーム、アルゼンチンモリゴキブリ、イエバエ」
などがあげられています。どうでしょう、
みなさんはハエやゴキブリを食べる気になるでしょうか。
これらは少ない面積でくり返し増やしやすいんですよね。
自分は海水魚を飼育していて、ミールワームやコオロギは、
アロワナなど大型魚の餌として熱帯魚店で売られているのをよく見ています。
これらの養殖はすでに始まってるんです。
うーん、しかし、ゴキブリを食べる気にはならないですよねえ。
これには先入観が大きいと思われます。まず、ハエやゴキブリは不潔であるという。
ですが、ゴキブリやハエは基本的に毒素を持っていません。
寄生虫がいたり、細菌がついている場合はありますが、
清潔な、無菌環境で養殖すればそれはクリアされるはずです。ですから、
生食したとしても問題はないのですが、加熱調理すればより安全でしょう。
安全性については心配はないのです。マンガの『鉄鍋のジャン!』に、
未来のサバイバル食としてハエのウジを生で食べるシーンがありましたが、
あれも無菌養殖されたものだったと思います。
次に食味の点ではどうでしょう。昆虫類は体が小さいですので、
味はその餌による面が大きいと思われます。
サクラケムシを焼いて食べると桜の香りがすると言いますし、
主に樹液を吸っている甲虫類などは木の実のような味がするという話です。
もちろん蜜を常食としていれば、甘い蜜の味に。あと、
昆虫ではないのですが、クモ類などはエビ、カニときわめて近縁の生物です。
タランチュラはカニ味噌の味がするということです。
ですから、味の面でもバラエティに富んでいるんですね。
料理のしがいがあるかもしれません。
さて、ここまで読まれて、将来的に昆虫食をする意欲がわいてこられた
でしょうか。日本人は、イナゴやハチノコなどを食べる場合もありましたが、
世界の中では、あまり昆虫は食べられていないほうだと思います。
ですから、内需が当面は期待できないので、
ビジネスとしても出遅れる可能性が高そうです。
しかし東南アジアの市場に行けば、タガメなどのさまざまな昆虫、
サソリなんかも並べられているのを見ることができます。ヨーロッパ各国も、
日本よりは昆虫食に対する心理的な抵抗感は少ないと思われます。
まずは、粉末やペーストなど、加工食品として導入され、
じょじょに慣れていくという形になるのかもしれません。
あと、日本人は環境保護という言葉に弱いので、
それを使って昆虫食の普及を図るとか。
「僕は環境保護をモットーとしているから、肉は食べないで昆虫を食べる!」
このように公言する人が将来出てくることになるのでしょうか。
さてさて、最後に、昆虫食からは離れますが、悪食・ゲテモノ食いを
テーマとした作品を書かれているホラー・SF作家が日本にはいます。
田中啓文氏ですね。氏の『異形家の食卓』 『ミミズからの伝言』などは、
それ系の話がまとめられたものですが、中でも『異形家の食卓』収録の
「新鮮なニグ・ジュギペ・グァのソテー キウイソース掛け」という短編は
傑作です。自分はアンソロジーの『異形コレクション』で読んだのですが、
これにはうならされました。みなさんもぜひご一読を。