今回はこういうお題でいきます。ここでいうイギリスとは、
イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの
4国による連合王国のことを指します。

 

キリスト教以前の遺跡 ストーンヘンジ



さて、イギリス人は幽霊の話が好きですよね。温かい暖炉の前で
紅茶を片手に幽霊話を語る伝統があり、あちこちに幽霊が出ると
される城や館があります。では、これはどうしてなんでしょうか。
少し理由を考えてみたいと思います。

まず原因の一つ目は、イギリスでキリスト教の受容が遅れたからでしょう。
キリスト教は他のヨーロッパ諸国では、ローマ帝国が313年に
それまで迫害していたキリスト教を国教化して以来、急速な
広まりを見せました。しかし、島国であったイギリスはその
伝来が遅れたんですね。

キリスト教がイギリスに伝わったのは教皇グレゴリウス1世の
時代、6世紀ころと言われていますが、本格的に布教が始まったのは
1066年、ノルマンディー公であったウィリアム征服王
がイングランドを征服して以後のことと思われます。

 

ヘンリー8世



では、それまでイギリスではどんな宗教が信じられていたかというと
ドルイド教などのケルト民族的な土着宗教であったと考えられます。
イギリスにはアーサー王伝説がありますが、もしアーサー王が
実在だとしてもキリスト教徒であったとは考えにくいんです。

ですから、アーサー王伝説に聖杯が出てきて、円卓の騎士たちが
聖杯探索の旅に出るのは変なんですね。まあこういう事情で、
イギリスでは魔女が魔法の鍋で秘薬を作っているとか、妖精などの
ケルト土着的な話がずっと後世まで残っていたんです。

もう一つの大きな原因は、16世紀のイングランド王、ヘンリー8世が、
王妃キャサリン・オブ・アラゴンと離婚し、アン・ブーリンと再婚しようと
したんですが、ローマカトリックは離婚を禁じており、

ヘンリー8世は教皇と対立して破門されたからです。そのため、
ヘンリー8世はしかたなく英国国教会を作ったんです。ですから、
イギリスでカトリックが盛んでないのは、宗教的な理由ではなく、
まったくヘンリー8世の個人的な事情によるんです。

 

ヘンリー8世と6人の妻



ちなみにヘンリー8世は生涯で6回結婚し、このことはイギリスの
キーボード奏者リック・ウェイクマンによって『ヘンリー8世と6人の妻』
という作品になっています。で、この6人の妻のうちアン・ブーリンと
キャサリン・ハワードは姦通を疑われて処刑されていますが、

冤罪の可能性が高かったと言われます。こんなことがあって、破門された
ヘンリー8世は教皇権から独立し、独自に英国教会を作ったんです。
この後、17世紀にかけて、教会の改革を主張する清教徒が勢力を持つ
ようになり、特に国教会からの分離を求めるグループは分離派と呼ばれて
弾圧を受けていました。

このため、信仰の自由を求めた清教徒を含む102人(ピルグリム・ファーザース) 

がメイフラワー号に乗ってアメリカに渡り、アメリカ建国の

基礎を作ったということになっています。こうしてみるとヘンリー8世の

離婚問題は世界史の流れに大きな影響を与えているんです。

 

ピルグリム・ファーザース



これらの一連の出来事からイギリスではキリスト教はあまり民衆に
浸透せず、キリスト教的な霊魂の考え方ではなく、幽霊が信じられる
ようになった大きな原因だと自分は考えています。

この他にもイギリスでは多数の血腥い事件や、王侯を幽閉したり
処刑した牢獄などが多かったことも関係していると思われます。
その後、18世紀から19世紀にかけて、イギリスの作家
ホレス・ウォルポールの『オトラント城奇譚』を嚆矢として

ゴシック小説が流行しました。このゴシック小説にはパターンが
あり、ある人物が遠い親戚から郊外にある屋敷を相続し、実際に
住んでみると不可思議な出来事が起こり、調べると地下室で
鎖につながれた骸骨を発見する・・・といった筋書きが多いんです。

 



こういった歴史があって、英国スピリチュアリスト協会が、心霊主義の
原理を伝道することを目的として1872年に創立され、イギリス各地には
スピリチュアル教会があって、シッティングなどを行ってるんです。

さてさて、ということでイギリスではなぜ幽霊話が盛んなのかという
疑問について解説してきました。スピリチュアリストと日本で
呼ばれていても、これらのことを知らない人は多いんです。
では、今回はこのへんで。

 

スピリチュアル教会でのシッティング