今回はこれに関するお話です。最初に余談を述べますと、
「呪(のろ)い」と「呪(まじな)い」って同じ書き方なんですよね。
でも、ニュアンスは違うと思うので、自分は「まじない」のほうは
平仮名で書くことにしています。さて、みなさんは呪いってあると
思いますか。まさか、実行されたりはしてないですよね。
先日、このブログにちょくちょく登場いただく霊能者のKさんに
お話をうかがう機会がありました。Kさんの本業は不動産や飲食店の
経営で、年収数億です。そのためというわけでもないんでしょうが、
謝礼などは一切うけ取らず、霊に関係する事件の解決に
全国を飛び回ってるんです。この話は、大阪市内のホテルにある
いつものバーでお聞きしました。

「あ、ご無沙汰してます。最近、事件とかありましたか」 
「うん、一昨日まで山形にいて、ミイラ復活に関するものに首を
つっ込んでた」 「うわあ、山形でミイラというと、即身仏関係ですか」
「そうだ」 「うーん、それもお聞きしたいですが、今夜は呪いについて、
考えを聞かせていただきたいんです」 「呪いねえ、まさかお前、
誰かを呪うつもりか」 「いやまさか、滅相もないです。
そうじゃなく、一般論として」 「ある、と答えてほしいんだろ」
「・・・まあ、お話はブログに書かせていただくんで、あるほうが
面白いとは思います」 「呪いの話は、世界各地に古くからある。
日本だと、奈良時代の養老律令に人を呪うことの禁が出ているな」
「知ってます」 「中国だと3000年も前から呪いはあるし、

それで戦争まで起きている」 「ああ、前漢の巫蠱の乱のことですね」
「ああ、それだけじゃなく、古代のヨーロッパ、アメリカ先住民、
アフリカ大陸、太平洋の島々・・・ どこに行ってもあるし、
方法も定まっていて、世界中でよく似ているな」 「たしかに」
「で、呪いには一つ重要な法則があるんだよ」 「え、何ですか?
人形を使うとか?」 「いやいや、そういうことじゃなく、
呪いというのは、弱い者から強い者に対して行われる」
「ああ、なるほど」 「強い者は武力や権力を使って弱い者を踏み潰せばいい。
それに対抗するための唯一の手段が呪いなのさ」 「うーん、そういう
観点から考えたことはありませんでした。勉強になります」
「あと、呪いと祟りの違いはわかるか」 「そうですね、呪いは普通、

生きた人間が行いますよね。それに対して祟りは、死んだ人間の怨念の
場合が多いとか。怪談でよく、殺された人物が死に際に、末代まで祟ってやる
なんて言いますよね」 「正解」 「ところでKさん、呪いを行ったとして、
現代の法律ではそれを裁くことはできませんよね」
「昔は日本でも中国でも、呪いを実行した者は即座に死罪だった。
たしかに今は、一般的に呪いでは罪にならないと言われてるが、
秋田県で、呪いを行った者が逮捕された事例がある」
「え、それは」 「ある女性が自分をふった男性に対して丑の刻参りを
行ったんだが、体調を崩して自分が倒れた。それは暗示効果や寝不足に
よるものだろうが、警察はその女性を逮捕したんだよ」
「でも、呪いは不能犯ですよね」 「相手の男性が、噂と本人からの話で

自分が丑の刻参りのターゲットになってることを知ってたんだ。
だから、警察は脅迫罪にあたると判断したんだな」 「うーん、裁判の結果は?」
「無罪・・・だけど、その女性は職場や地域に居づらくなっただろうし、
結局、その地を離れざるをえなかった」 「なんか気の毒な話ですね。
ところでKさん、呪いが中心となる事件に関わったことあるんでしょ。
ぜひ話を聞かせてもらえませんか」 「・・・あまり後味がよくないぞ」
「望むところです」 「お前、バブル期の1980年代の終りは何歳だった?」   
「小学校の高学年くらいですかね。うちは両親とも公務員だったんで、
バブルの恩恵はあんまりなかったみたいですが」
「当時はな、右を向いても金、左を見ても金、金、金、金、金、世の中に
金があふれてた」 「土地が金を産んだんですよね」 「まあそうだ。
 
土地を買ってゴルフ場をつくる、レジャーランドをつくる。ただ転がして
おくだけでも倍々ゲームになった」 「Kさんもだいぶ儲けたんでしょう」
「俺は地上げとかしちゃいないぞ」 「地上げといえば、悪い噂を聞きますよね。
立ち退きをしなかった家族がこつ然と行方知れずになったとか」
「それに類する話だが、地上げじゃなく会社買収に関するものだった。
ある親族会社の会長の祖父、社長の父親、母親、高校生と中学生の子どもの
一家計5人が、ある夜を境にして消えた。もちろん警察の捜査はあったが、
一軒家の中は荒らされておらず、血痕なども見つからない。
結局、今にいたるまで手がかり一つなしさ」 「全員が拉致された?」
「まあな。で、その社長の弟が俺のちょっとした知り合いで、
当時シンガポールに住んでた」 「で」 「俺のとこに来てな、

真相を調査してくれって言われたが、俺は危ぶんでた。血の気が多やつで、
事情がわかったら、たぶん復讐に出るだろうって」 「どうしたんですか」
「まあ、調査はしたよ。その結果、ある筋者の組が経営してる金融会社が
関わってることがわかった。だが、そいつらは末端でな、
上にはゼネコンの幹部、地方政治家までいたんだ」 「で」
「その家族は、船でロシアに密出国したことも判明したよ、おそらくは死体で。
「それを教えたんですか」 「・・・そいつを呼んでな、
金融会社のとこまで話をした。で、予想どおり いきりたったんで、
復讐するつもりなら一人までは協力する、って言ったんだよ」
「え? Kさんがそんなことを」 「当時は俺も若かったし、そのやり方には
腹にすえかねるものもあった」 「復讐はどうやって」

「合法的なことだよ。ここからは詳しいことは話せないが、ある山奥に神社がある。
つくられたのは6世紀ころだ。日本で知ってる人間は100人もいないだろう。
闇の神社なんだ。神職はいないが、管理者は江戸末まで皇族だ」 「で」
「そこに連れてって、俺から事情を話して頼み込んだ。1ヶ月ほどして
呪詛を行う許可が出たんだよ」 「どうやって」 「言えない。ただな、
呪いは、呪うほうもただでは済まないのは知ってるよな」 「はい」
「その弟は左手を肩から失った」 「・・・相手は?」
「金融会社の会長にして組長」 「どうなったんですか」 「その会長
60歳を過ぎても愛人が何人もいて健康そのものだったが、
ある日ゴルフに出かけ、2番ホールでドライバーをふった途端に
腹が裂けた」 「ええ!?」 「芝の上に内臓をデラデラとまき散らして即死だ」

「まさか」 「いや、本当のことだ。死因は病死。目撃者も大勢いて、
その前までピンシャンしてたことはわかってる。警察の監察医も
困惑しただろうが、急な動きによって腹直筋から腹膜が裂けた、
刃物の傷ではないし、そういう結論を出すしかなかったんだ」
「・・・まだ、続きがあるんですよね」 「ああ、俺が関わったのはそこまでだが、
その弟、半年ほどたって、兄一家が消されたのは政治家の指示だったって
知ったんだな。また俺のとこに来たが、もう協力はできないと言った」
「で」 「直接あの神社に行ったらしいが、場所が見つからなかった。
結界で隠されてるから」 「うーん、で」 「弟は片腕を失ってるし、
政治家にはボディガードもいて、直接的な襲撃は不可能に近い」
「それで」 「俺が悪かったんだが、その弟、この世に呪いってものが

マジであることを知ってしまったからな。東南アジアに戻り、金にあかせて
呪いの情報を収集した」 「見つかったんですか?」 「執念だな。
ジャワ島で、力のあるまじない師に出会ったらしい」 「で」
「噂では億の金を払ったそうだよ」 「どうなったんです」
「その政治家の地盤の地方で地震が起きた。直下型だが震度3程度で、
死傷者はなかったんだ、その政治家本人をのぞいて」
「一人だけ死んだと」 「そう、それも自宅の中でだ。どういう死の
様子だったかは伝わってないが、葬儀のときに棺は閉じられていたそうだ」
「でも、呪いで地震を起こせるなんて信じがたいです」 「まあな」
「で、その弟のほうは」 「願いがかなったのに沈んだ様子でな、
それから2ヶ月で消息が途絶えた。今もってどうなったかはわからん」