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今回はこういうお題でいきます。カテゴリはオカルト論ですか。
さて、ラノベとかアニメ、ゲームなんかで「異世界もの」というのが

たいへん流行っていますよね。現実世界ではニートとか、

まったくモテないとか、さえない主人公が何かのきっかけで

異世界へと転生し、そこで大冒険するみたいな内容です。


この設定は便利ですよね。ひじょうに応用範囲が広いと思います。

なんといっても「異世界」ですから、その環境は作者が自由に

設定することができます。また、現実世界では弱虫だったのに、

異世界内では勇者として怖れられる存在になるとか、

ギャップが大きいほど読者の関心を惹くでしょう。

この元となったのが「異界」の概念ですね。異界とは、Wikiによれば、

「人間が周囲の世界を分類する際、自分たちが属する(と認識する)

世界の外側のこと」こんなふうに出てきます。異界には、

「他界=霊魂が行く死者の世界」も含まれます。

また、異界の住人を異人と言うこともあります。
 

さて、異界をわかりやすく説明する例として、何がいちばんふさわしいか

を考えてみると、ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』がいいかと思います。

あの話は、異界をとりまく約束事を守って組み立てられているんです。
約束事の一つめは、この世と異界は重なり合っているんですが、
そこに行くためには境界を通らなければならないということです。



映画だと、千尋の家族は車で奇妙なトンネルに入っていきますよね。

あれが、この世とつながる境界なんです。次に、異界にとどまるための

条件があります。千尋の両親が、ずらっと並んだ無人の屋台で、

「金は後から払えばいい」と言って、食物を口にしてしまいます。

そして豚に変わってしまう。これは、異界の側に借りができて

しまったことになるんです。


人間が豚に変わるところは、西洋のおとぎ話の影響もあります。
この間ちょっと触れましたが、紀元前8世紀に書かれたホメロスの

『オデュッセイア』では、オデュッセウスの一行は魔女キルケーの

島に上陸し、キルケーの差し出す食べ物を口にして豚に変えられてしまいます。


西洋の童話では、魔法でヒキガエルに変えられた王子なんかが出てきますが、
その大もとは、おそらくギリシア神話なんじゃないかと思います。
変身の呪いを解くため、主人公の千尋は異界の中でさまざまな働きをします。
よく考えられたストーリーだと思いますね。

黄泉比良坂
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さて、『千と千尋の神隠し』と構造が似ているのが、日本神話の

イザナギ、イザナミの黄泉国の話です。亡くなった妻のイザナミに、

黄泉国まで会いにいったイザナギは、けっしてふり向いてはいけない

という約束を破って、腐り果てた妻の姿を見てしまう。

そして、怒ったイザナギに追いかけられますが、
黄泉国とこの世の境界が、「黄泉比良坂 よもつひらさか」です。

また、「黄泉戸喫 よもつへぐい」ということもあり、
これは、イザナミが黄泉国の食物を口にしてしまっており、

すでに黄泉国の住人になってしまっているとして、最初は地上への

帰還を断られ、イザナギがどうしてもと頼み込んだことで、

後ろをふりかえってはいけないという条件がつくんです。
 

で、さらにこれとそっくりなのが、ギリシャ神話の「オルフェウス」

の話です。できあがったのは、もちろんギリシア神話のほうが古く、

神話学者の吉田敦彦氏によると、ヨーロッパから中東、アジアを経て

日本に伝播したために、内容が類似しているのだということですが、

ありえないことはないでしょう。こうしてみると、

ギリシア神話の影響力って大きんですね。


妻と冥界から逃れるオルフェウス
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さて、日本の異界には、「隠れ里」 「迷い家」なんてのもありますが、
山の中で道に迷って入っていく場合が多いんですね。ですが、現代だと、
登山ルートは決められていますし、入山して下りてこなければ、
遭難ということになって、捜索隊が出されます。
 

そこで、現代の都市伝説では、乗り物や橋、トンネルが一種の異界へのルートに

なっていることが多いんですね。前に2ちゃんねるで話題になったのは、

エレベーターに乗って異界に行く方法でした。

4階、2階、6階、2階、10階と複雑な操作で移動し、

さらに5階に下りると、人ではない雰囲気を持った女が乗ってくる・・・

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「きさらぎ駅」というのも乗り物がらみです。投稿者の女性が、新浜松駅から

いつも利用している電車に乗車したら、電車はなぜかどこにも

停車せずに走り続け、他の乗客はすべて眠りこけている。そして

やっと停まったのが、「きさらぎ駅」というあるはずのない駅・・・


エレベーターも鉄道も、日常的に利用している人が多いですので、
山の中に入っていくよりはリアリティがあるでしょう。あとはそうですね、

物理学で、量子力学の波の収縮の解釈として、エバレット3世が

多世界解釈を示し、そこからSF作家がアイデアを発展させて、

「平行世界」という概念ができました。


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多世界解釈だと、他の世界とは行き来できないはずですが、それだと

つまらないので、何らかの方法で行くことができる設定にします。

これもネットで、縦横5センチの正方形の紙に六芒星をペンで書き、

その真ん中に赤字で「飽きた」と書いておくと、寝ている間に

パラレルワールドの自分と入れ替わることができる、

という方法が話題を集めました。

 

さてさて、ということで、異界について書いてきましたが、まとまらない

内容になってしまいました。ただ、やはり昔からの約束事というのはありますので、

異世界の話を書こうと考えている方は、それらに留意してストーリーを考えて
みるといいんじゃないでしょうか。では、今回はこのへんで

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