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秋田県乳頭温泉郷の鶴の湯温泉 ここは掛け流しというか、

湯船の足下から温泉が湧き出ている

名古屋市のスーパー銭湯から検出されたレジオネラ菌。
これによるレジオネラ症は、高齢者や病人など体の抵抗力が
低い人に感染しやすい傾向があります。感染すると発熱や頭痛、
筋肉痛やせきなどの症状が出て、重篤化すると呼吸困難や
意識障害などを引き起こし、死亡するケースもあります。

感染の経路は、菌に汚染された「エアロゾル」という
目に見えないほどの細かい水滴を吸い込むこと。そのため
人から人に感染することはありません。家庭用の浴槽でも
レジオネラ菌が増殖することがあり、配管などのぬめりを
しっかりと取るなど、定期的な掃除や消毒することが必要です。
(東海テレビ)


レジオネラ菌
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今回はこういうお題でいきます。科学ニュースからですが、
後半は文化的な内容になると思います。で、最後に怖い話を
用意しておきますね。まず、レジオネラ(属)菌とは何か?
自然界にふつうに存在する常在菌です。

河川、湖水、温泉や土壌など、どこにでもいます。ですから、
過度に怖れる必要があるものではありません。レジオネラ属菌は
現在までにおよそ60種類が知られており、その中でも、
レジオネラ・ニューモフィラが、レジオネラ肺炎を引き起こす
代表的なレジオネラ属菌です。

次に、レジオネラ肺炎とは何か? これが最初にわかったのは
アメリカでした。1976年、ペンシルベニア州米国在郷軍人会の
大会が開かれた際、参加者と周辺住民221人が原因不明の
肺炎にかかり、34人が死亡しています。病因を追求した結果、
レジオネラ菌が発見されたわけです。

レジオネラ菌は、ぬめりに生息するアメーバの中にいる
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このことから、アメリカではレジオネラ肺炎は在郷軍人病と
長い間 言われていました。レジオネラ症の潜伏期間は、
2~10日。主な病型としては、重症のレジオネラ肺炎と
軽症のポンティアック熱が知られています。

レジオネラ肺炎は、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛などの
症状に始まり、咳、38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難。
コロナウイルスと同じで、高齢者や基礎疾患のある人、喫煙者は
重篤化しやすく死亡率も高い。ちなみに、日本の近年の
感染者は年間約1600人。

では、レジオネラ菌はどうやって感染するのか? 3つのルートが
あり、エアロゾル感染、吸引・誤嚥、土壌から ですが、
ほとんどはエアロゾル感染です。人から人への感染はまず
ありません。エアロゾル感染が起きやすいのは、加湿器などの
冷却水、あるいは風呂などで菌が繁殖した場合。

レジオネラ菌の感染者 年々増えているように見えますが、

これは検査法の進歩のせいが大きい

 

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上記の在郷軍人会でも、会場近くの建物の冷却塔から飛散した
エアロゾルが原因と考えられています。対策としては、
とにかく掃除するしかないですね。加湿器を使用するときには、
毎日水を入れ替えて容器を洗浄し、熱湯消毒する。

浴槽では、引用記事にあるように、ぬめりの中で繁殖しやすいので、
やはりしっかりお湯を抜いて掃除することです。家庭の風呂は
温度調節機能がついていることが多く、42度くらいに設定してる
でしょうが、その温度では死にません。レジオネラ属菌は
60℃では5分間で殺菌されます。

レジオネラ菌のエアロゾル感染
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さて、ここから温泉の話に入ります。ちかごろネット上に温泉評論家
なる人物が複数出てきて、しきりに「本物の温泉」という話を
書くようになりました。みなさんも目にされたことがあると思います。
で、その人たちのいう本物の温泉とは「100%源泉かけ流し」を
指している場合が多いんですね。

たしかに100%源泉かけ流しは素晴らしいんですが、では、
すべて源泉かけ流しの温泉がどれだけあるかというと、
全温泉施設の1%程度です。じゃあ残りの99%はニセ物の
温泉なのか。これは違いますよね。温泉法に定められた基準を
守っていれば、温泉と名のって何の問題もないはずです。

源泉かけ流しと対比されるのが、循環濾過式の温泉。1週間お湯を
取り替えない、温泉水に水道水を加え、さらにボイラーで加温する。
その上、循環濾過式風呂ではレジオネラ菌が発生しやすいので、
塩素を入れて消毒する。たしかに、それが温泉なのか、
と言いたくなる気持ちもわかります。

循環システムの一例 
源泉かけ流し以外はニセ物という自称評論家は、

温泉業界のことを何も考えていない
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温泉が温泉たるゆえんは、温泉水にあります。いくら部屋がよく、
眺望が素晴らしく、料理が美味しくても、温泉水がなければ
温泉とは言えません。温泉評論家の松田忠徳氏は、現代の人間は
癒やしを求めていて、温泉の質にこだわるようになってきたと
書かれており、自分もそのとおりだと思います。

でも逆に、温泉がいくらよくても、料理や部屋、従業員の接客態度が
ダメだったら、やっぱり旅行はだいなしになってしまいますよね。
ここで重要なのは情報公開です。自分とこの宿は源泉かけ流しなのか
循環風呂なのか、加水や加温をしているのかをきちんと公開すること。
その上で、料理やサービスの上で、自分の宿の売り物をつくる。

循環風呂が流行るようになったのは、客にも大きな原因があります。
洗い場にはシャワーがほしい、露天風呂、家族風呂があればいい。
混浴は嫌だ。これでは源泉の湯量が少ない宿は対応できません。
ですから、循環風呂は温泉客が呼び込んだという側面もあるんです。

料理も温泉宿の楽しみの一つ
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最後に怖い話。高鐵山という力士をご存知でしょうか。最高位は
西関脇で1975年引退。その後1996年、原因不明の急性
重症肺炎および原因不明の心不全により、愛知県の大学病院内で
53歳で死去しています。で、高鐵山の後援者の代表も、
同日・同病院で、同じ症状で死去してるんです。高鐵山はこのとき、

角界の内幕暴露本の発刊直前でした。内容は、横綱北の富士の八百長と
暗黒街との交友、女癖の悪さ、角界の脱税体質、さらには力士の
大麻吸引や賭博行為も、著書『八百長~相撲協会一刀両断~』に
記されています。これらのことから事件性を疑われ、暗殺の噂が
流れたんです。いっぽう、高鐵山は後援者と風俗の特殊浴場に行き、
そこでレジオネラ菌に感染したのでは、といった話も出ました。

さてさて、コロナ禍によって旅行・観光業は大ダメージです。
温泉宿も例外ではなく、廃業するところも増えているようです。
この機会に経営を見直し、上で書いたように、自分の宿の売り物は
何なのか、戦略をもう一度考えてほしいと思いますね。
では、今回はこのへんで。

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