今回はこのお題でいきますが、あんまり自信はありません。
「まじない」について、自分は、きちんと定義づけをしたり、
分類整理をしたりしてる本を読んだことがないんですね。まあこれは、
自分の知識が足りないせいなんでしょうが、「まじない」という概念が難しいので、
誰も手をつけられない、といった面もあるんじゃないかと思います。

さて、まじないは漢字で書くと「呪い」で、「のろい」と区別がつかなくなって
しまいます。要は「呪術の一種」ということなんでしょう。ちなみに
英語では「まじない」は spell、「のろい」は curse かな。
ネット辞書で「まじない」を引いてみると、「神仏その他、神秘的なものの
威力を借りて、災いを取り除いたり起こしたりしようとする術」とあります。

うーん、この「神仏その他」という部分がまず難しい。というのは、
日本の宗教は、民衆レベルでごちゃまぜ、なんでもありになっていて、
ある一つのまじないについてルーツを調べてみると、神道からきたもの、
仏教からきたもの、その他にも陰陽道、道教、あとは、意外にけっこうあるのが
儒教からのもの・・・ということで、収拾がつかなくなってしまうんです。
 
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これがアメリカなどだと、そう難しくなさそうです。前にも書きましたが、
知り合いのアメリカ人に、「節分の豆まき」について説明しようとしたことが
ありました。下手くそな英語であれこれ話したんですが、じっと聞いていた彼は、
最後に一言「superstition 迷信」と言って、わかったような顔をしました。

彼は、毎週日曜に教会に通って牧師の説教を聞く敬虔なプロテスタントの
家庭に生まれ育ったため、キリスト教ではないもの、例えば、
「鏡が割れると不吉だ」とか「幸運を運ぶウサギの足」みたいなものは
すべて迷信と理解してるみたいなんですね。

ウサギの足のお守り
imagesええええ

まあ、自分からすれば、キリスト教でいう「処刑の3日後に生き返る」とか、
「海が割れる」とか、「クジラに飲まれて生きている」とか、
そんなのありえない迷信じゃないか、と思うわけですが、
それはもちろん、友人関係を円滑に保つために言ってはならないことです。

さて、ということで、日本のまじないを宗教的に分類することは、
自分は不可能だと思います。しかし、目的別、用途別の分類なら
できるんじゃないかという気がするんです。そこで、少し考えてみました。

① 幸運、天運を呼び寄せるためのもの 
② 災いや穢れ、悪縁を去らせるためのもの
③ 禁呪  ④ 他人を呪う  大きく分けて、この4つくらいでしょうか。
呪いについては以前書きましたので、今回、④は考察しないことにします。
あと、「まじない」と「占い」は区別します。

①は、世間にはたくさんの開運グッズがあふれていますね。
例えば「黄色い財布を使えば金が貯まる」これ、元は中国の風水でしょう。
「恋がかなうハートのペンダント」これは西洋魔術でしょうか。
その他にも、ネット通販では、神社のお守りなどもふくめ、
さまざまな物が売られています。神や仏、あるいは物そのものの持つ力
(パワーストーンなど)を借りて、自分の願いをかなえようとするわけです。

imagesでえええ

②は、医学が発達していない時代においては、まじない=治療でした。
天皇が病気になったりした場合、高位の仏僧、神官、陰陽師らが
それぞれに平癒祈願の祈祷を行いましたし、平民でも、病気になれば、
ありがたい御札を丸めて飲んだり、患部に貼りつけたりしてたんです。

この手のことは明治時代になっても続き、地域には子どもの癇の虫を鎮める
拝み屋などがいました。現在でも「いぼとり地蔵」とか「とげぬき地蔵」などを
信仰しているお年寄りがいますね。あと、子どもが手などをぶつけたとき、
「いたいのいたいの飛んでけ~」などというのも、まじないの一種です。

また、先日、怖い話に書いた「エンガチョ」は、穢れと縁を切るための
まじないです(下図)。悪い夢を見れば、それが正夢にならないよう、
まじないをすることは「夢違え」と言いますし、
夜道を歩くときキツネなどに化かされないよう眉に唾をつける・・・などなど、
災いを避け、不幸を去らせるためのまじないもたくさんあります。

『平治物語絵巻』で、信西入道の首を見てエンガチョをする人
imagesffff

③は、まじないには「禁厭」という漢字もあり、これは神道で、
農耕においてやってはならないこと、という意味を持っていました。
何かを禁じることも、まじないの一種なんですね。
例えば、「夜に口笛を吹くと蛇がくる(だからやってはならない)」
「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」この手のものです。

照明状態の悪い昔は、夜に爪を切ると深爪してしまうなどの
生活の知恵もあったでしょう。衛生知識が浸透し、カットバンを貼ればすむ
現代と違って、破傷風や敗血症などの細菌感染症は命とりの病気で、
そういう意味からも、血を出すことは忌まれていたんです。

さてさて、ということで、かなり舌足らずな考察になってしまいました。
自分で書いたくせに、いまいち納得のいかない部分もあります。
まあでも、そのうちリベンジする機会があるかもしれません。
では、今回はこのへんで。
 
「塩まじない」
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