今回は医学の話・・・のような、そうではないような
内容です。がん治療で、自由診療の免疫クリニックって
ありますよね。ここで言うのは、オブジーボなどの
免疫チェックポイント阻害薬のことではなく、

がんワクチン治療、樹状細胞療法、NK細胞療法などの
ことです。それと、この記事は、一方的にちまたの
免疫療法クリニックを批判するのが目的ではありません。
自分は、このあたりのことは日本人の死生観の問題
だと思ってるんです。

がんには標準治療がありますよね。標準治療とは何か、
という定義はけっこう難しいんですが、ぶっちゃけた話を
すれば、健康保険がきく治療ということです。まず、
がんが発見されて、手術で取りきれそうな場合は手術します。
今は手術前に術前抗がん剤治療をするケースも増えてきました。

そして全部取れればいいわけですが、もし転移・再発して
しまった場合、放射線治療や抗がん剤治療をしますが、
それで完治することはレアケースです。で、だんだん
腫瘍に抗癌剤耐性がつき、効かなくなる。

そうすると病院側から、「もう治療法がないので緩和ケアに
行ってください」と言われることが多い。ただ、最近は、
がんが判明した当初から、痛みを取るなどQRLを上げる
ための緩和ケアは、治療と同時に進められなければ
ならないと言われるようになってきました。

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ですから、上記の病院の言葉は、ホスピスに行ってくださいと
言うのと同義なんだと思います。さて、次は街の免疫クリニック
について。これは自分の考えですが、それらの免疫クリニックで
やっている治療はほとんど効果はないと思っています。

このあたりのことは、自分はかなり調べてますが、長くなるので   
割愛させていただきます。ただ、言えるのは、世界のどこの
国でも、これらの免疫療法は一般的ではないということです。
製薬会社や研究所でいくら治験を行ってもはかばかしい成果が
出ない。ですから、日本でも保健医療になっていません。

では、なぜ巷の免疫クリニックは存在しているのか。ここが
難しいんですよね。がんは個別性が強いので、病院で
「もう治療法はありません」と言われても、まだまだ歩けるし
しゃべれる、元気な人も多いんです。ですから、あとは
ホスピスにと言われても納得ができない。

ここで、みなさんだったらどうしますか? 素直にホスピスに
行くか、それとも在宅医を頼んで在宅死を望むか。
個人個人の死生観が出てくるんです。素直にその方向に
行く方もいるでしょうし、いや、まだ死にたくない、
何かできることがあるはずだ、と思う人もいるでしょう。

そこで免疫クリニックが出てくるんです。免疫クリニックは
立派な施設で、医師や看護師は患者に言葉優しく寄りそってくれます。
患者数も少ないので、ほとんど待つこともありません。まあね、
治療費は数百万、千万を超えることが多いので、患者が少なくても
成り立ち、そこと提携している細胞培養会社も儲かる。

キャプチャ

どうしても死にたくないと思う患者が免疫クリニック、あるいは    
その他の民間療法に駆け込む。これは誰かに勧められたわけ
ではなく、本人の自由意志な場合が多いので、止めることは
できません。家族が反対する場合もあるでしょうが、治療を
受けるのは本人ですからね。

ただ、上で書いたように、免疫クリニックでの治療では
がんは治らないですし、好転する場合もほとんどありません。
そのうえ、クリニックという言葉どおり、入院設備は
ないですし、夜間も人がいません。ですから、末期になったり、
急に症状が出たりした場合、対応ができないんです。

そこで患者は、いよいよどうしようもなくなって、救急車を呼んだり、
ホスピス探しを始める。「もう治療法がありません」というのは、
免疫クリニックでもやっぱり言われるんです。つまり、つかのまの
希望を患者に持たせるのが、免疫クリニックと言ってもいいでしょう。

さて、ここまで読まれて、みなさんはどう思われたでしょうか。   
標準治療が悪いのか、免疫クリニックが悪いのか?
そうではないと考えます。多くの場合、患者本人の死生観の
問題なんです。治らないこと、死ぬことを受け入れ、
最期を静かに過ごすのか。

それとも、あくまで治癒をめざし、最後の最後まで奮闘するのか。

そういう人は多いですよね。日本は諸外国とは宗教のあり方が
違うので、死ねばもうそれで終わりという考え方が強い。それは
本人の死生観であり、また自由であると言うしかありません。


そういう意味で、免疫クリニック、サプリメント、金の延べ棒で
患部をなでる療法、手かざしなどなどが、そのニーズに応えるために
世の中に存在しているわけです。ただ、最期になって、多額のお金を
使ってしまったことを後悔する場合は多いです。

さてさて、ということで、免疫療法を話の軸に、死生観に
ついて考えてきました。じゃあお前はどうする、と言われたら、
自分で、もう治らない、死が近いと見定めたらムダな抵抗はしません。
できるだけ家族にお金を残したいですね。その手のことは、

日頃から家族と話し合っておくことも大切だと思います。