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今回はこういうお題でいきます。これもなかなか難しい話ですね。中国の歴史は4000年とも5000年ともいわれ、その早い段階から天の思想があったのは確かです。では、とは何か? うーんまずは、中国では古くから「天円地方」とされてきました。
 
天は円く、地は方形であるという古代中国の宇宙観です。人間の住む地上は方形で東西南北があり、そのそれぞれに守護神がいる。中国は広大な国ですが、その中心となるのが中原(ちゅうげん)で、この地を支配したものが正式な王朝であるとされました。中原は黄河の中下流域のけっこうせまい範囲です。
 
そして中原以外は四夷の蛮族の住む地とされ東夷・ 西戎 (せいじゅう) ・南蛮・ 北狄(ほくてき)の異民族が住んでいる。中原は、中華思想のもととなった考え方です。中華が世界の中心であり、その文化・思想が神聖なものであるとする思想ですね。「中原に鹿をおう」ということわざがありますが、この意味は、 「帝王の位を得ようと戦う」ということです。
 
中原
 
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まずここまでが人間が住む世界。では天はどこにあるのか?たんに位置的に人間界の上にあるといった単純なことではないようです。むしろ天界は人間界とは重なっていない別世界ととらえるのがいいようです。ここからは天界の説明をしていきます。天界には人間よりも神に近い天人が住んでいる、苦痛の少ない世界と考えられました。
 
そしてそこを支配しているのが天帝です。天帝は天皇大帝、上帝などともいい、天界における最高権力者です。ですが天帝はあくまでも天界を治めるだけで、人間界を支配することはありません。そのかわり一人の人間を選んで、皇帝となって支配する命を与え、これを天命といいます。
 
天命は人間一人一人にあり、その人が皇帝になるか、それともいっかいの兵士で終わるのかも決まっています。人間はすべて天から、一生をかけて行うべき使命が与えられており、それを実行しようとする人は天から助けを受け、天命に逆らう者は必ず滅ぶと考えられていました。これが天命思想ですね。
 
麒麟
 
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天から特に選ばれた人間は、中原を支配して皇帝になりますが、誰でもいいわけではなく、徳の高い人間が選ばれるんです。皇帝になるべく天命を受けた人間は、幾多の戦いで勝ち上がり皇帝の座につくんですが、天はすべての人のふるまいを見ており、善を行うものには天恵を、悪を行うものには天罰を与えます。
 
その時の朝廷が悪政を行えば、天は彗星や地震、疫病などの凶兆という災害を与え、逆に皇帝の治世がよい場合、天は麒麟や鳳凰、白い雉などの瑞兆を出現させたり、珍しい出来事を起こしたりして知らせると考えられました。中国の皇帝のことを天子と呼ぶのはこのためなんです。ちなみに「獲麟(かくりん)」ということわざがあります。
 
これは儒家の始祖である孔子が、麒麟が獲らえられたのに、誰もその獣がなんなのかわからないことに絶望し、執筆の筆を折ってしまった故事が元になってできた言葉で、「物事(あるいは人生)の終わり」という意味で用いられるようになりました。さて、そのときの皇帝の政治があまりにひどい場合、天は別の人間に天命を与えて味方をします。
 
秦の始皇帝
 
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なによりも皇帝にはが必要とされるんですね。そうすれば自然に皇帝の徳が広まり、その治世が安定するとされました。また、自分の子孫に徳がなかった場合、他の血筋であっても有徳の人物を選んで帝位を譲ります。これを禅譲(ぜんじょう)といいます。
 
しかし、中国の長い歴史の中で禅譲が行われた例はほとんどありません。禅譲は形だけで、じつは皇位の簒奪であったケースが多かったんです。またもし、その皇帝が天意にそむいた場合、易姓革命が起こります。王朝の交代が起きるわけですね。
 
ですから歴代の中国王朝の始祖は、すべて天命を与えられた人間ということになります。一般に中国の歴史では、王朝の最後の皇帝は多くは悪女の色香にたぶらかされて悪政を行い、それによって天から見放されるという形になります。
 
泰山
 
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夏王朝の「肉山脯林(にくりんほざん)」、商(殷)王朝の「酒池肉林」などが有名です。悪辣な支配者の代名詞として桀紂(けつちゅう 夏の最後の王、桀と商の最後の王、紂)ともいわれてますね。さて、中国で人間として初めて皇帝の座についたのは、その名のとおり秦の始皇帝ですが、始皇帝は現山東省の霊山である泰山に登り、封禅(ほうぜん)の儀式を行ったとされています。
 
泰山は天に最も近い場所と考えられており、そこで帝位につくことの報告と報恩の礼を行ったわけです。ここまで見てきたように天の概念は中国における古代思想なんですが、儒教、道教、仏教に取り入れられて少しずつ意味が変化してきています。特に道教の影響が大きいようです。
 
さてさて、ということで天についてみてきました。今の中国では習近平による指導体制が3期目を迎え、習氏はまさに現代の皇帝といってよいように思います。ではその治世に、はたして徳はあるでしょうか?天に見放されるようなことがなければいいと思いますが。では、今回はこのへんで。
 
酒池肉林
 
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