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今回はこういうお題でいきます。さて、トウモロコシとは、イネ科の一年生植物で、穀物として人間の食料や家畜の飼料となるほか、デンプン(コーンスターチ)や油や異性化糖(コーンシロップ)、バイオエタノールの原料としても重要で、年間世界生産量は2009年に8億1700万トンに達します。
 
小麦、米と並んで、世界三大主食の一つとされていますね。で、このトウモロコシ、じつはアメリカ合衆国の建国の歴史と深いかかわりがあるんですよね。そしてトウモロコシ畑は数々のホラー小説や映画の舞台としてあつかわれてきました。

何から話しましょうか。まずはアメリカの歴史かな。1620年に、102人のピューリタンたちが信仰の自由を求めて絶対王制下のイギリスからメーフラワー号で北アメリカに移住しました。そして、現在のマサチューセッツ州プリマスに上陸し、ニューイングランド植民地開拓の基礎をつくったと言われています。
 
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まあ伝説のようなものなんですが、このときのピューリタンの子孫は今でもアメリカでは名家中の名家といわれています。例えばケネディ家とか。これらのピューリタンはピルグリムファーザースと呼ばれています。ピルグリムは巡礼という意味。彼らの上陸地は「ニュー・プリマス」と名付けられた地域でした。
 
入植当初の状況は厳しく、イギリスから持ってきた野菜や小麦は収穫にとぼしかったため、翌1621年の4月までに半数程が病死しまた。ピルグリム・ファーザーズが上陸した土地には先住民のワンパノアグ族が暮らしており、ピルグリム・ファーザーズに食糧や物資を援助しました。
 
ワンパノアグ族のスクアントはイギリスに連れられて行った経験があるため英語を知っており、ピルグリム・ファーザーズに狩猟やトウモロコシの栽培などを教えたとされます。 ここで、アメリカ新大陸に初めて小麦が渡り、また白人たちも初めて先住民が育てていたトウモロコシを目にすることになります。このことをアメリカでは「偉大な交換」(The Great Exchange)と呼びます。
 
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これによって、人類の食生活が大幅に進歩し多様化したんですね。さて、アメリカでは主に中西部のアイオワ州、イリノイ州、ネブラスカ州などおいてトウモロコシ栽培が盛んで、ほとんどが大規模経営です。これらの栽培地域をコーンベルトと呼ぶことがあります。で、このトウモロコシ栽培、アメリカの土着的なホラーと結びついていることが多いんです。
 
トウモロコシ畑では不思議なことが起こる。トウモロコシが登場するたくさんのホラー小説や映画があります。この後の記事では、それらの作品を順不同にご紹介していきたいと思います。ネタバレありです。

まずは小説から、シャーリー・ジャクスンの『くじ』。短編ですが、アメリカンホラーの古典の一つですね。有名なのでご存じの方も多いと思います。ある村ではトウモロコシの収穫の時期に、村人全員参加のくじ引きが行われます。乳幼児も例外ではありません。何のためのくじ引きなのか、最初は理由が明らかにされていませんが、だんだん事情がわかってくると・・・
 
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次は長編小説、トマス・トライオンの『悪魔の収穫祭』。画家である主人公は、家族とともにコーンウォール・クームの村に移り住みます。陽光と土の香り、昔ながらの方法でトウモロコシを育てる農民たち。そこはまさに理想郷だった。ただ一つ気になるのは墓地の外にぽつんと建つ墓だった。自殺した若い女のものだというが、村人は多くを語ろうとしない。主人公の不審の念はますます強まり、その時から彼は、村の恐るべき秘密と禁忌の中に大きく足を踏み入れていたのだった・・・こんなお話ですね。

映画だと枚挙にいとまがないほどたくさんあります。まずは『ヒューマンキャッチャー2』。2003年の映画。不思議な怪物が26年に一度よみがえり、26日間人を殺して食い尽くす。怪物には羽があり、空高くから下りてきて人をとらえるので、ヒューマンキャッチャー。その正体は最後まで謎のままです。映画の冒頭は怪物がトウモロコシ畑の中で案山子に化けているシーンから始まり、最後は畑の中での追いかけっこになります。けっこう怖かったですね。

『スケアクロウ』1995年のホラー映画。同名のジーン・ハックマン主演の映画とは別物です。トウモロコシ畑に封印されていた邪悪な魂が、バカな若造によって封印から解かれ、畑の案山子に乗り移って自分を殺した一族を殺しながら復活に必要な魔導書を探す。といったお話。
 
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『ザ・フィールド』比較的最近の2011年のホラー映画。トウモロコシ畑を舞台に謎のクリーチャーに襲われる若者たちの恐怖を描いたシチュエーション・ホラー。トウモロコシは人の背丈を超えることもあり、畑の中では全体を見渡すことができないので怖さが増すんすね。

『サイン』M・ナイト・シャマラン監督のSFホラー映画。妻の事故死を境に牧師を辞めた主人公は、弟と2人の子供達と静かに暮らしていた。しかしその家族の前に様々な兆候(サイン)が現れる。愛犬の暴走、畑に出現したミステリーサークル、家の周りに出没する姿の見えない謎の存在など。そしてサインは世界各地に現れるようになった・・・

『フィールド・オブ・ドリームス』ホラーではありません。 1989年のファンタジー映画。主人公はトウモロコシ畑の中に野球場をつくれば、八百長にかかわった今は亡き名選手たちが現れるという啓示を受け、黙々とグラウンドを作り始める。主人公の父親はかつてメジャーリーグを目指したが、かなうことはなかった。その夢を息子に託そうとしたが、反発したレイは十代で家を飛び出して父の葬式まで再び会うことはなかった。そのことが主人公の心の傷となっていた・・・ まだまだありますが、これくらいで。
 
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ところで、自分がアメリカにいたときキャンディコーンというお菓子がありました。ハロウィンのときによく売られていて、オレンジ・黄・白の3色で、とても甘い、二等辺三角形の形をしたお菓子ですが、まるでトウモロコシの粒に色をつけたようでした。ハロウィンも何かトウモロコシとの関係があるみたいでしたが、詳細はよくわかりませんでしたね。

さてさて、なぜトウモロコシ畑がホラーの舞台になりやすいのか? いっぱいあるから、といってしまえばそれまでですが、どうもそれだけではない気がします。トウモロコシは先住民の作物であり、神秘的な力を持っていると思われてるのではないでしょうか。また白人の開拓者も初期の段階では、収穫のよしあしは生存に直結していたでしょう。そこに穀霊信仰のようなものがかかわり、こういう形になっていったのだと思います。では、このへんで。
 
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