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今回はこういうお題でいきますが、ご存じの方も多いかもしれませんが、自分はあんまり詳しくはないので、概論程度の話になります。さて、キリスト教には大きくカトリックとプロテスタントがあります。カトリックのほうは1世紀ころに始まり、ローマ教皇を中心とした大きな世界的組織です。
 
これに対し、プロテスタントは16世紀にはじまったもので、たくさんの細かな宗派にわかれています。では、いったいどんな違いがあるのか、どうやって始まったのか?その歴史ははっきりしています。16世紀の初め、カトリックの教皇は、「これを買えば罪がすべて許され天国に行ける」という贖宥状(免罪符)の販売を始めます。
 
まあ表向きは教会への寄付にあたるんでしょうが、誰もがわかるようにこれは金儲けのためのものです。金銭によって罪が許されるというのはひどい話で、これに抗議したのがドイツの神学者マルティン・ルターです。1517年、ルターは、「95か条の意見書」を公表し、既成の勢力を批判します。ここから宗教改革が始まるわけです。
 
マルティン・ルター
 
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ルターは「教会の取り決めによってではなく、信仰によってのみ救われる」と説き、聖書を信仰の中心としました。また、スイスではジャン・カルヴァンが独自に宗教改革をすすめ、衝撃的な説を発表します。これは「予定説」と呼ばれますが、「救われる人とそうでない人はあらかじめ決まっているので、善行を積むなどをしても意味がない、それよりも自分の仕事に勤勉に励むべきだ」というものです。
 
さらにイギリスでは、カルヴァンの主義を徹底させようとするピューリタニズム(清教徒派)が生まれます。これらの運動とルネッサンスをきっかけに、ヨーロッパでは中世が終わり、近代が始まったとされます。清教徒はイギリス国内で分離派が発生し、初期アメリカ入植者としてニューイングランドの形成に大きな影響を与えました。
 
このことは、アメリカの歴史に大きな影響を与えています。「ピルグリム・ファーザース」の伝説の始まりですね。これは、イングランド王による弾圧を恐れてメイフラワー号に乗り、アメリカに渡ったイギリスのピューリタン(清教徒)たちのこと。ちなみにピルグリムとは巡礼という意味です。
 
意見書を教会の扉に打ちつけるルター
 
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これにより今でもアメリカはプロテスタントが中心で、多くの宗派に分かれています。今は人種差別的としてあまり言われなくなったものの、かつてはWASPという言葉がありました。アメリカ社会で優位なのは、White(白人)Anglo-Saxons(アングロサクソン)Protestant(プロテスタント)であるという意味です。
 
現在のアメリカではプロテスタントが5割、カトリックはその半分くらいでしょうか。プロテスタントは多くの宗派に分かれていて、モルモン教やエホバの証人などもそうですね。プロテスタントは政治勢力としても強く、「私は神を信じる人間だ」と公言する人もいます。
 
ジャン・カルヴァン
 
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このピルグリム・ファーザースの子孫はアメリカでも名門とされ、ケネディ家などが有名ですね。さて、プロテスタントとカトリックの違いとしては、まず教会です。カトリック教会は華美で装飾的なのに対して、プロテスタントの教会は簡素なつくりです。また、カトリックの十字架はキリスト像がついていますが、プロテスタントでは十字架だけです。
 
またカトリックはその頂点がローマ教皇ですが、プロテスタントはすべての人間は平等と考えます。カトリックの司祭は神父と呼ばれ聖職者ですが、プロテスタントでは牧師といい、信者の代表という意味です。神父は妻帯は許されませんが、牧師にはふつうに家族がいます。違いはまだまだあります。
 
簡素なプロテスタント教会
 
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カトリックは膨大な神学に支えられていますが、プロテスタントは聖書中心主義です。聖書に書かれていることはすべて真実とするため、人工妊娠中絶や進化論に反対しています。世界はいちどきに神が創造したということですね。あとカトリックに比べてプロテスタントの儀式は少なく、そのかわり聖書の暗唱などが重視されました。『トム・ソーヤの冒険』だったかな、トムが日曜学校で聖句の暗唱の記念品を集める場面が出てきます。
 
それから、プロテスタントでは祈りの場面で十字を切ることはしません。プロテスタントの牧師は聖書の内容をもとに説教をします。映画の『白鯨』で、オーソン・ウェルズの牧師がやってましたね。プロテスタントには懺悔という概念はありません。あとそうですね、プロテスタントでは聖母マリア信仰や聖人の信仰は一般的ではありません。
 
タイトルなし
 
まあこんなところなんですが、みなさんが欧米の映画を見るときキリスト教が出てきたら、これはプロテスタントかカトリックなのかわかって見ると、かなりの違いがありますので内容の理解が深まると思います。例えば、『エクソシスト』のシリーズですが、悪魔祓いをするのは基本的にはカトリックです。
 
うーんそれから、クリント・イーストウッドの代表作『ペイルライダー』で、主人公はプリーチャーと呼ばれていましたが、これはプロテスタントで説教する者という意味です。自分はただの牧師とプリーチャーの違いがよくわからず、知り合いのアメリカ人に尋ねたら、プリーチャーは大変怖い存在だと言われました。ちなみにペイルライダーとは「蒼ざめた馬の騎手」という意味で、黙示録の内容からきています。
 
アメリカはテレビでの説教なんかも盛んで有名な人がたくさんいます。映画になりやすいのは、これははっきりとカトリックのほうですね。まず映画の小道具がぜんぜん違います。また、魂が悪魔の側に傾くという恐怖も、カトリックのほうが強い気がします。
 
ここまでの内容を三行でまとめると、
・プロテスタントは宗教改革ででき、ルター派、カルヴィン派、清教徒派にわかれます。
・アメリカは清教徒がつくった国とされ、プロテスタントの勢力が強い。
・プロテスタントは信仰中心主義、聖書中心主義、万人祭祀主義が特徴です。
では、このへんで。
 
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