遺伝子を改変した人間を体外受精で誕生させることが理論上可能になったのは、
ゲノム編集技術「CRISPR」という安価かつ容易な遺伝子編集ツールが
発明されたおかげだ。そして、それは理論上のことではなくなってきている。

中国の研究者は今月、遺伝子を編集した人間の赤ちゃんを誕生させることに
成功したと発表した。これは世界初の試みで、
誕生した赤ちゃんはHIVに対する免疫力を持っているという。
ただしこういった実験は、デザイナーベビーという新しい優生学へとつながる
危うさもはらんでおり、懸念の声も上がっている。
(グノシー)

賀建奎教授


今回はこのお題でいきます。現在、各社の科学ニュースを見ると、
上掲の話題でもちきりです。やはり大きなインパクトがあるんですね。
当ブログではこれまで、たびたび、中国の生命科学界の状況について
危惧を表明してきましたが、とうとうヒトゲノムの編集が行われたようです。

臨床試験を行ったのは、広東省、深セン市にある南方科技大学の
賀建奎(ハ・ジエンクイ)教授のグループで、治験計画書に掲載されている
データでは、24週(6ヶ月)までの複数の胎児に対して実験が繰り返され、
今月、ある女性が、双子の女児を出産したと伝えられています。

この報道が事実なら、ゲノム編集で遺伝子を編集した子どもが生まれたのは
世界初になります。賀建奎教授は、中国科学技術大学で近代物理学の
学士号を取得。10年に米テキサス州ライス大学で生物物理学の博士号を取り、
翌年から2年間、米スタンフォード大学で遺伝子研究に従事。

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28歳で南方科技大学の最年少副教授に就任。
それとともに、遺伝子ビジネスにも参入する実業家の顔も持っており、
中国の8つの遺伝子ビジネス会社の経営幹部も務めているようです。
今回、ゲノム編集技術を人間の受精卵に対して行った目的として、

賀教授らは、父親がHIVウイルスに感染しており、ゲノム編集によって
ウイルスが細胞に入らないようにするためだったと述べています。
また、賀教授らはこの他にも、複数の組の夫婦にも、不妊治療を目的として、
遺伝子改変を行っているようで、さらに今後、不妊治療研究のために
400個の受精卵にゲノム編集を計画しているという報道が出ています。

この発表に対し、南方科技大学は公式に「双子誕生の報告はなく、
もしそれが事実なら、学術倫理や規範に反する」との声明を出しています。
また、中国人科学者122人が、強く批判する署名付き声明を公開し、
中国科学院のトップも懸念を表明しているようです。



ただ、この治験について、「事前に大学や省の倫理委員会の審査を通っていた」
とする暴露記事がネットにあがっており、このあたり、中国らしい混乱が
見られます。世界的にこれほどまでに批判が高まっている現状から、
今後も、ヒトゲノムを改変する治験が実施されるかどうかはわからないですね。

とまあ、ここまでは各社のニュースをまとめたものです。具体的な遺伝子編改変は、
当ブログで何度かお伝えした、「CRISPR」という遺伝子ハサミを使い、
受精卵の、HIVウイルス感染にかかわると考えられるたんぱく質
「CCR5」を切除し、また母親の体内に戻したということのようです。

この技術自体はけっして難しいものではなく、もし倫理規定が許せば、
できる研究者は世界にたくさんいると考えられますが、もちろん多くの国では、
中国と違ってヒトゲノムを編集することを禁じる法令があります。
これに対し、中国は「やったもん勝ち」の風潮が強いんですよね。

この手のことは、別の分野ですが、自分は中国で何度も経験しています。
ただまあ、中国および賀教授を批判するのは、他のメデイアがいくらでも
やるでしょうし、当ブログでは少し違うことを述べたいと思います。
なぜ、ヒトゲノムの編集は禁忌とみなされるんでしょうか?

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これはまず第一に、ゲノム編集によって生まれてくる赤ちゃんの
将来が保証できないということですね。遺伝子の人為的な改変は、
突然変異、つまり癌化を起こす可能性が高いんです。
また、将来、深刻な遺伝病に罹患することも考えられます。
前例がないので、当然ながら、絶対安全という保証はどこにもありません。

それと、欧米ではキリスト教勢力の影響が強く、神が創造した「人間」を、
人類が勝手に変えてしまうことに対する拒否感があるんですね。
これまでにも、妊娠中絶や体外受精などに対して、キリスト教勢力からの
反対が多数あった歴史があります。また、遺伝子改変が赦されると、
髪や肌の色などの外見、知能や運動神経も変えてしまう、
デザイナーズベイビーの誕生につながる危惧があります。

さて、ここから書くことは、他のメディアにはまず見られない内容になります。
もしかしたら立腹される方もおられると思います。「病気」って、遺伝子改変を
してまで、必ず克服しなくてはならないものなんでしょうか? これまで人類は、
ワクチンや抗生物質の発見によって、天然痘や結核などを大きく
減らしましたが、それが世界の人口増の一つの要因にもなっています。



日本は少子化でピンとこないかもしれませんけど、世界的には人口増というより、
人口爆発と言っていい状況にあります。で、病気には、人口抑制の作用が
あるんですね。中国では、かつて「一人っ子政策」を実施していましたが、
これはある意味、「子どもが一人しか産めない病気」を、人為的に
作り出したのと似ているんじゃないかと思います。

「自然淘汰」という進化論の概念がありますよね。病気にかかりやすいかどうか、
親から病気が遺伝するかどうかも、一種の自然淘汰と言えなくはないと
自分は考えます。本庶博士のノーベル賞受賞により、癌治療に対する希望が
広がっていますが、もし、癌が完全に撲滅されたらどうなるでしょうか?

おそらく平均寿命が伸びるでしょうが、認知症や関節の摩耗など、体の老化
そのものがなくなるわけではないので、医療費や年金はかさむ一方でしょう。
子どもが親を介護する期間も伸びます。一個人としてはもちろん、
病気が治ったほうがいいわけですが、ある病気を駆逐することが、必ずしも
人類全体の利益につながるかは、現状では、わからない
と思うんですよね。

さてさて、ということで、HIVや癌で闘病されている方には、
お叱りを受けるかもしれない内容を書きましたが、みなさん、これについて、
どうお考えになるでしょうか。まあ、不老不死が実現すれば問題ないのかも
しれませんが、それはまだまだ先のことでしょうしねえ。
では、今回はこのへんで。