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怖い話します(選集)

ここはまとめサイトではなく、話はすべて自分が書いたものです。
場所は都内某所にある怪談ルーム、そこに来た人たちが語った内容 す。

※ このブログでコメント等にはお返事できません。
お手間ですが、「怖い話します(本館)」のほうへおいでください。

あ、ども、今晩は。俺、早瀬っていって、都内のある大学の
2回生です。オカルト研究会に所属してます。入った動機は、
もともと子どもの頃から、それ系の話が大好きで。
うーん、そうですね。UFOや陰謀論も好きだけど、やっぱ
一番興味があるのは心霊です。幽霊はいるし、死後の世界も
あると思ってたんですが・・・それでね、今、オカルトブームと
言ってもいいような状況でしょ。地上波テレビであんまり
オカルトを扱わなくなったかわり、ネットは盛り上がってます。
特にyoutubeですね、怪談語りや朗読、心霊スポット凸とか、
もう怪談師なんて何人いるかわかんないです。けど、
うちの大学のオカルト研究会は入るやつが少なくて。

暗いやつが多いサークルだと思われてるんでしょうね。
ま、それは否定できないんですが・・・俺らの下の1回生は
一人だけだし、全体で女子はゼロなんです。それでというか、
3年の先輩たちが、もっと目立つ活動をしないとサークルが
消滅してしまうって言い出して。最初はyoutubeをやろうって
話になったんですが、いざやってみるとネタが続かなかったんです。
youtubeって、ほぼ毎日投稿しないと固定ファンがつかないんですね。
それで、まずはネタをちゃんと集めようってことに。それまでも
サークルのブログはあったんですが、更新もあんまり
してなかったのを、ちゃんとしたホームページにして、そこにまず
ネタをストックし、それからyoutubeに流そうって相談がまとまりました。

でね、「お前らヒマだろ」って言われて、俺ともう一人の2回生、
湊ってやつが担当にさせられたんです。まあ、俺と湊が情報工学部
ってのもあったと思います。パソコンの操作は慣れてますから。
で、ホームページ作りが始まり、サークル長のあいさつとか、
メンバー紹介とかはブログからコピペしました。それでね、
企画として、ありきたりですけど、全国の心霊スポット地図を
載せることになって。けど、その手のサイトっていっぱいあるじゃ
ないですか。実際、アクセス数はあんまり伸びなかったんです。
それで俺が、ブログの中に心霊スポットを作って、ホラーゲーム
みたいに、見にきた人が自由にそこで遊べるようにって考えました。
グラフィックなんかの打ち込みは大変でしたが、

夏休み、毎日出てきて、少しずつやっていったんです。でね、
そのホームページの中の心霊スポットは、「四石碑の村」って
名前にしたんです。廃村ですね。明治の時代に栄えてた鉱山の村が、
閉山ともに廃墟になり、ボロボロの建物がいくつも残ってる。
で、その村に鉱山事故とかの記念碑が4つあるんです。
訪問してきた人は夜の村の中を回って、その石碑を見つけていく。
ゲームじゃないんだけど、そんな感じで、4つの石碑を全部見つけたら
達成感が得られるよう考えました。で、これを作ってる最中、湊と仲が
悪くなったんです。湊はもともと、あんまり心霊とか信じてなくて。
オカルト研究会に入ったのは、自分だけでユーチューバーとかに
なろうと思ってのネタ探しだってことが、だんだんわかってきたんです。

これ、腹立ちますでしょ。心霊を信じてないくせに、それで金儲け
するつもりかって思いました。それに、湊は俺と同んなじくらいに
パソコンができるのに、面倒な仕事はみな俺に押しつけてきて。
で、ケンカみたくなって、後半のほうはずっと俺一人でやってたんです。
それでも夏休みが終わるギリギリで完成しました。新学期が始まったら
先輩たちに見てもらう。その前に、やっぱ湊に見せなきゃいかんでしょ。
サークル室のパソコンで見せたら、「うわあ、メンド。お前よく
 つくったなあ」て、ひと事みたいに言ったんで、また腹が立ちました。
でね、4つの石碑のうち、鉱山事故のやつ、昔の飢饉の犠牲者のやつ、
公園にある古墳の近くのよくわからないやつ、この3つは
それほど時間をかけずに見つかるようにして、ただ最後の一つだけは

慎重に隠して、村の中を歩き回って、謎を解かないと発見できないように
したんです。案の定、湊は見つけることができず、「どこにあるんだよ」
ってイラ立った調子で言ったんで、俺は「最後のは難しいんだよ。
 この廃村は今日中にウエブにアップするから、テストもかねて
 お前、家で探してみろよ」 「チェッ」とか言ってましたね。でね、
じつを言うと、そのときはまだ、4つめの碑はなかったんです。
場所は、村外れの神社の裏って決め、石碑自体もできてて、
あとはそこに入れるだけにしておいたんですけど。ザマミロ、湊のやつ
一晩中探し回るか、それとも早々にあきらめて寝てしまうか。
おそらく後者だとは思ってました。いちおうね、探せなくてメールや
電話が来るかもしれないんで、スマホは電源オフにしてたんです。

やっとできたんで解放感がありました。かなり根を詰めて
やりましたから。その日はビールやチューハイを買い込んで、
酔っぱらって12時過ぎに寝ました。で、夢を見たんです。
真っ暗・・・でもなく、大きな月が空に見えて、空気が青みがかって
ました。「あ、ここは?!」自分の作った廃村だと思いました。
月の光で、輪郭だけが照らされた古い家並み。ただ、このとき、
これは夢なんだって、はっきり自覚はしてなかった気がします。
もちろん廃村なので、いくら月明かりと言っても、街灯もなく、
足もとが見えなくて、何かにつっかかって転びそうでした。どうやら
村の中央をつっきる一番広い通りにいるみたいだったので。慎重に
一歩一歩進んでいきました。どこに行くってあてはなかったんですが。

どのくらい歩いたか、夢の中なので時間の感覚がつかめなかったです。
村の外れの、それ以上マップできない突きあたりまで来たとき、
「おーい、誰かいませんか、おーい」という呼び声が聞こえて
きたんです。湊の声だとすぐわかりました。やつもこの村にいるのか。
「ここにいる!」大声をあげると、ややあって「早瀬か?!」
そっからお互いに呼び合いながら、声のするほうに進んでって、
人の姿がぼんやり見えてきたんです。暗くて顔はよく見えなかったけど、
湊だと思いました。すぐそばまで行くと、湊は「お前、よく一人でこんな
 丁寧に作ったな。行っても行っても村の中だ。石碑は3つは見つけた。
 けど、最後の一つはわからんかった」こう言ったんですが、怒ってる
口調じゃなかったです。「スマン、じつはまだ、4つめは入れてないんだ」

「マジかよ!」 「ああ、けど、場所はもう決めてある。村外れまで
 きてるから案内するよ」すぐに神社の鳥居が見つかり、参道に入ると、
社殿の前にオレンジの灯りが見えました。「え、俺らの他に人がいるのか?」
でも、ロウソクは立ち並んるものの、社殿の扉は閉まってて人影はなし。
「この裏だよ」そう言って、湊とともに神社の横を通って裏に回ると、石碑
らしきものがあったんです。「ええ!?」 そのとき急に、稲妻みたくあたりが
真っ白になり、碑に彫られた文字が見えて「湊〇〇ノ墓」。そんな馬鹿な。
ここで目が覚め、気がつくと朝でした。でね、これで湊が実際に死んでた
とかならオチがつくんでしょうけど、そんなことはなく、その日、しれっと
サークルに出てきて、「4つめは見つからなかった。それで夜中
 お前に連絡したが、スマホ通じなかったぞ」って言ったんです。

 

それで、これだけなら、すべてが俺の夢ってことで片づくんだけど、
ほら、まだ入れてなかった4つめの碑、夢と同じように「湊〇〇ノ墓」って
なってたんです。俺が作った覚えはまったくないけど、もしかして
無意識のうちにやったんでしょうか。 


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