蠱毒の話 | 怖い話します(選集)

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ここはまとめサイトではなく、話はすべて自分が書いたものです。
場所は都内某所にある怪談ルーム、そこに来た人たちが語った内容 す。

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あ、じゃあ話してくけど、これな、今から30年以上前のことだからな。
もしかしたら記憶違いとかあるかもしれない。ただ、人が2人
死んでるのは間違いのないことだよ。俺は森田っていって、
今、仕事は板金工場に勤めてる。で、俺が中2のときだった。
当時は、暴走族ってのがまだあったが、警察の取り締まりが
厳しくなって、都会の有名どころが解散したって話がぼちぼち
聞こえてきてた。けど、俺が住んでたのは地方都市だったから、
まだ そこまでではなかったな。族の名前は〇〇って言った。
もちろん、俺は中学生だったから正式なメンバーじゃねえ。
予備軍みたいなもんだな。中学を卒業したら免許取ってバイクを買う。
そしたらメンバーに加えてもらえることになる。

いやいや、高校に行く気はなかったっていうか、いっつも授業の
じゃまばかりして、一つも聞いてなかったから。
成績は下の下だったし、内申なんて☓ばっかだったろ。
知ってる先輩が何人か土木作業員になってて、俺もそこへ行く
つもりだったのよ。親はどうせバイク買う金なんて出してくれないから。
うーんまあ、今にして思えば、高校くらい出ておけばよかったのかも
しれないが、その場の勢いだな。けど、20歳過ぎてから心を入れ替え、
運転とか機械関係の資格をいろいろ取ったんだ。
あ、すまん、本題に入る。俺と同じ2年で、栄村ってやつがいて、
俺と2人で学年を締めてたんだよ。ずっと突っ張って先公には
反抗し続けてたし、空き家に集まってタバコを吸い、ボヤ出したりもした。

でな、3年のグループのトップが横沢ってやつだった。同じガッコで、
同じ暴走族の息がかかってるわけだから、俺らは頭が上がらねえ。
学校の中ではなかったが、外ではよく殴られたし、使い走りも
させられた。ただまあ、そういうもんだと思ってたのよ。
横沢が卒業していけば俺らの天下になるから。それにな、族に入れば、
ヤキは日常茶飯事だから。あんたら知ってるかな。「集金」ってのが
あったんだよ。族の〇〇さんの彼女が妊娠した、で、子どもを堕ろすから
いつまでにいくら金を集めてこいって司令が横沢のとこにくる。
それ以外にも、バイクで事故ったってのもあった。要は口実だよ。
で、それが俺らに降りてくるわけだ。で、俺らは先公にチクリそうも
ないやつらから、一人100円ずつ集める。

筋者の上納金みたいなもんだった。そうやって2年も終わりかけ、
いよいよ横沢らが卒業するってとき、栄村が大ケガをしたんだ。
どういう事情か、俺はその場にいなくてはっきりわからないが、
横沢に鉄パイプで膝の脇を叩かれたんだよ。病院に行ったら、
筋が何本も切れてるって話で、骨と違って手術もできねえ。
それから半年くらいは跛ひいてたな。で、栄村が俺と2人のときに
「横沢許せねえ」って言い出した。けどよ、もう卒業してるし、
どうにもならないと思ったんだよ。したら栄村は「けどな、
 俺ら卒業したら族に入るだろ。そうすれば横沢がいて、
 またやられることになる。今のうちにケリつけちまおうぜ」って。
それは確かにそうなんだが、ケリつけるたって、

まさか横沢を2人で襲うわけにはいかない。そりゃ2人がかりなら
勝てるが、まさか殺すわけにはいかんし、俺らがやったって必ずバレて
袋叩きになる。だから、「ガマンするしかねえぞ」って言ったんだが、
栄村は「呪い殺す」って言い出した。最初それ聞いたときは
ふき出したよ。いくら俺が頭悪くったって、この世に呪いなんてものは
ねえと思ってた。けど栄村は真剣な顔で、「雑誌で見たんだよ。
 蠱毒って知ってるか」俺が首をふると、「虫だよ。虫をたくさん集める。
 トンボとかじゃなく、毒があったり、針で刺したりするやつだ。
 それを一つのビンとかに入れると戦って共食いするだろ。
 で、最後まで残ったやつを使って横沢を呪う」これ聞いてもなあ、
やはりそんなにうまくいくとは思えなかった。

ビンに入れてフタした段階で全部死んじゃうんじゃねえかって。
それと「そこまではわかったが、生き残ったやつをどう使うんだよ」
そしたら栄村は黙ってしまい、どうやらよくわかってないようだった。
けどな、話そのものは面白そうだったから、その週の土日をかけて
虫を集めることにした。ちょうど夏場でな、蛾なんかはたくさんいた。
土曜の夜に俺が虫を集め、日曜の午前、虫かごに入れて栄村と合流した。
そしたらだよ、栄村のやつ、スズメバチの生きたのをつかまえて
きてたんだよ。俺はびっくりして、「よく刺されなかったな」って言った。
それから、2人で近場の山に行って、でかいムカデとかをさらに集めたんだ。
最終的には虫はかなりの数になったが、もう死んでしまったのも
けっこうあったな。それらを、栄村が持ってきた、

ほら、駄菓子が入ってるガラス瓶があるだろ。あれに入れたんだ。
もちろん酸欠で死なないよう、金属のフタには釘でいくつも穴が開けてあった。
でな、林の奥の腐葉土に、ビンの口がぎりぎり外に出るようにして埋めた。
それから、栄村はポケットからテイッシュを二つ折りしたのを出し、
「それ何だよ」と聞くと、「横沢の髪の毛だ」って。「よくそんなの
 取ってこれたな」 「前から仕返ししてやろうと考えてたから、
 やつのバイクのヘルメットから取った」で、それをフタの穴から
中に落とし込んだのよ。さらに栄村は、フタの上でパンパンと手を叩き、
呪文みたいなのを唱えたんだよ。「今の何だ? どうやって覚えた」
「雑誌についてたんだよ」 「へえ、後で俺にも教えてくれよ」
「ああ」こんな感じでその場は終わり、1週間後に見に来ることになった。

で、その1週間後の日曜だよ。時間はけっこう朝早かったはず。
栄村とビンを見に行った。俺も興味があったな、本当に一番強いやつ
一匹だけが生き残ってるのか。ビンを掘り出そうとして、
少しガラス面が見えて、俺らは息を飲んだよ。あの青い色のついた
ガラスが真っ黒になってたんだ。俺が栄村に、「お前、あの後で何か
 したんか」と聞くと、やつはふるふると首を振って「いや、なんも」
と答えた。ビンを上に持ち上げ、太陽の光に透かしてもみたが、
底まで真っ黒でやはり何も見えない。栄村がゆっくりとフタを回し、
外したとき、中から真っ黒い虫が飛び出してきた。蜂? 蛾?
よくわからなかったな。黒い煙みたいな感じ。それが栄村の後ろ首を
かすめて林の奥へ飛んで行ったんだよ。

栄村が手で首を押さえたんで、「刺されたんか」と聞いたが、
「いや、ちょっと触っただけだ。痛くもないがぞくぞくした」って。
でな、土の上にビンの中のものを開けると、俺らが入れた
虫の死骸が出てきた。どれもカサカサに乾いていて、
生きて動くものはなかった。あと、ビンの黒色はいつの間にか
消えてたな。俺らは、ビンを藪の斜面に投げ込んで帰った。
呪いが成就したかどうかは、そんときはわからなかったが、
ちょうど1週間後の日曜、横沢が死んだんだよ。
族でヤキを入れられて脳出血を起こしたんだ。さすがに警察も
放ってはおけず、大々的な手入れが入って何人も逮捕者を出し、
族は解散になったんだよ。まあなあ、俺としては、

目標がなくなったみたいで、すげえ気落ちしたよ。族に入ろうと
思ってたからこそ、高校にも行かないつもりだったんだし。
そうなるとただの落ちこぼれだろ。その後、栄村と会ったが、
やつも、目論見どおり横沢が死んだのに浮かない顔だった。
俺と同じような気分だったんだろうと思う。まさか族の
解散にまでつながるとはな。それから、11月ころだな。
中学校で進路の三者面談があった。俺が就職すると言うと、
親は何も言わなかった。もうあきらめてたんだろう。だが、栄村の
とこは違ってた。三者面談を戻ってから、高校に行け、行かないで
父親とケンカになり、殴られたのがもとで死んだんだよ。やはり
脳出血だった。・・・あの頃は、穴2つなんてことは知らなかったが。
 

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