一斉攻撃の話 | 怖い話します(選集)

怖い話します(選集)

ここはまとめサイトではなく、話はすべて自分が書いたものです。
場所は都内某所にある怪談ルーム、そこに来た人たちが語った内容 す。

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お手間ですが、「怖い話します(本館)」のほうへおいでください。

農業 吉村統一郎さんの話
まず最初は私からですね。私、〇〇市の郊外に住んでまして、
今は農業をやってます。今は、というのは、数年前まで市役所に
勤務してたからです。つまり、その当時は兼業農家だったって
ことで。それが市役所を退職して、いちおう専業農家に
なりましたが、収入はたかがしれてます。それでもね、年金に
プラスしてお金が入ってくるわけですから、体がもってるうちは
続けようと思ってます。あ、米作じゃありません。果樹なんです。
うちは、子どもらはみな勤め人になりましたので、後継者はおらず、
農業は私の代でおしまい。ここらはそういう家が多いんです。
それで、去年の春ですね。近くの果樹園が何ヵ所か農地を売ったって
話が耳にはいって来たんです。かなり広い土地がまとめて買われた。
これは何か大きな施設が建つんだろうと思いました。

で、土地を売った一人が知り合いでしたので、どこにいくらで
売ったのか話を聞いたんです。そしたら、購入先は不動産屋だが、
どうやら新興宗教団体から依頼されてるらしい、ってことだったんです。
え!?と思いました。じゃああそこ、新興宗教の施設が建つのか。
やっぱり不安に思いますよね。オウム真理教事件のこともありますし、
この田舎に、得体の知れない人たちが入り込んでくるのは嫌だなって。
ですから、「何で売ったんだよ」と、つい詰問口調になりました。
そしたら、金額が相場の数倍だったし、県会議員の口利きもあって
断れなかったって言うんです。それ聞いて、うーんと考え込んじゃいました。
相場の数倍なら、私だって売ったかもしれません。で、すぐに建設会社が
入って、土地はフェンスで囲まれました。どうやら建つのは拝殿のような

ものらしく、壮麗な建物がだんだんできてったんですが、お寺とも
神社とも判然としないものでした。後で聞いたところでは、その団体、
神道系だったみたいですが。けど、建物は立派なんだけど、
コンクリ造りだったんです。あと、あちこちが金色に塗られてまして、
なんとなく下品な感じもあったんですよ。で、1ヶ月ほど前に完成
したんですが、近所のわれわれには挨拶のようなことはありませんでした。
施設は駐車場も広く、いつも黒塗りの高級車が停まってて、
だんだんその数が増えてったんです。全国から幹部が集まってきてるって
噂でした。それで、つい3日前、その宗教団体の人たちで拝殿が
完成した儀式のようなことをやったんです。その前の晩でした。
私は腎臓があんまりよくなくて、夜、頻繁にトイレに起きてしまうんです。

あれは夜中の2時ころだったかな。トイレへいくため廊下を通ってると、
窓の外がパッ、パッと断続的に明るくなったんです。雷?
しかし、そのときは雨も降ってなかったし、第一、雷の音が
しませんでした。何だろうと思って窓の外を見ても、よくわからない。
それで外に出てみたんです。そしたら、新興宗教の建物、
私の家から500mくらいですが、その上空が金色に光ってたんです。
うまく説明できませんが、そこだけ夜空が明るくなり、
雲が渦巻いてました。あ、気象衛星の写真の台風の画像に似てたと
言えばわかってもらえるかもしれません。で、その雲の中心が
断続的に金色に光ってる。・・・うーん、自然現象なんだろうと
考えましたけど、今まであんなの見たことがなかったですよ。

水道工事業 三田洋平さんの話
次は私の番ですね。私、小規模ですが、水道工事会社を経営してるんです。
それと同時にというか、神職の資格も持ってまして、私が住んでいる
地区の、いくつかのお社を管理させてもらっているんです。
どれも小さいものだから、会社経営のかたわらにできるんです。
それぞれの御社の御祭神ごとにお祀りする日が決まってて、
簡単なお供えをして祝詞を唱えます。あとは、週に1度お社のまわりを
掃除し、壊れたとこがあれば修繕する。あちこちにある小さいお社
というのは、だいたいそんな感じで維持されてるんです。
それで、翌日、お稲荷様の祭礼があるという前の晩、夢を見たんです。
私は池のほとりのようなところに立ってたんです。池は浅く、
水は澄んでいました。魚や植物は見なかったです。

池の底は白い丸石が敷きつめられ、赤い橋が架かってたんですが、
その橋はとても長く、しかも向こう側は霞がかかったようになって、
よく見えませんでした。ここはどこだろう?と思いましたが、
わからない。そのうちにね、橋の上を4人の人物が私のほうに
近づいてくるのが見えたんです。4人とも白い、昔の高位の
神官の装束を身に着けてて、3人は立派な白髭、あとの一人は
烏帽子の下にキツネの面をかぶってました。呆然と見てると、
その人たちは私の前に来て、キツネの面の人が、甲高い声で
「明日の祭礼は必要ない。留守にして不浄に手を染めることになるから」
こんなことを言われたんですが、そのときは意味がわかりませんでした。
で、それと同時に目が覚めたんです。時計を見ると

夜中の2時きっかりでしたね。それからは眠れず、夢の意味を
考えてたんですが、なんとなくわかった気がしたんです。
私が受け持っているお社は4つです。あの人たちは、そこの神様
なんじゃないかって。キツネの面をつけた方は、明日祭礼予定の
稲荷社の神様。それにしても、「不浄」とはどういうことか、
そこまではわかりませんでした。で、夢のお告げにしたがい、
翌日は稲荷社の扉は閉めたままにして、何もしなかったんです。
あと、市の神職仲間に連絡してみました。そしたらね、
その人たちも私と似たような夢を見てたんです。自分が担当してる
神社の神様が夢の中に現れて、「明日は留守にする」って言った。
ですから、この市の神様のほとんどが、どっかに行ったってことです。

会社員 柏木玲美さんの話
あ、じゃあ次は私ですね。私、学習教材の会社で働いてまして、
社は駅前にあります。それで、その日は午後3時ころに早めに
退社したんです。はい、コロナの影響で、自宅でのリモート勤務が
多くなってたんですよ。で、社を出たすぐのところで信号を
待ってました。そんな時間でしたから、人通りは少なかったですが、
道路の向こうに白いだぶだぶの服を着た人が2人いて、
テイッシュ配りをしてました。その人たち、最近この市でよく
見かけるようになった新興宗教の信者なんです。駅前を中心に
あちこちでテイッシュ配りをしてる。なんだか怖いですよね。
このとき、そういえば、市の郊外にこの宗教団体の施設が
建つんだったということを思い出したんです。

市が、その団体に占領されていくんじゃないかって考えたんです。
信号が青になったので渡りました。いつも、テイッシュはもらわず
無視するようにしてました。はっきりと勧誘されたことは
ないんですけど、やっぱりね。下を向き、足早にその人たちの
前を取りすぎようとしたとき、信者の人の片方が「ああっ!?」と
叫んだんです。で、2人ともがテイッシュの入ったかごを下に
落とし、両手を水平に広げて独楽のように回り始めたんですよ。
びっくりしました。信者の人はものすごい速さで回転を続け、
通行人はあっけにとられてそれを見ていました。
ぐるぐる、ぐるぐる、それが3分ほども続いたでしょうか。
やがて2人は、へたへたと崩れるようにして地面に倒れたんです。

仏具店経営 木田亘さんの話
この市内で仏具店を経営しています。といっても、仏具よりも
神道の用具のほうを多く扱ってます。というのはね、ここの市、
明治時代の廃仏毀釈が激しかったところで、仏教より神道が盛んなんです。
で、あの日、新興宗教施設の完成記念式典に招かれました。
気前よくたくさん商品を買ってくれてたんですが・・・式典は施設の
大ホールで行われ、市長を始め大勢の招待客がありました。
でね、いよいよ教祖のあいさつになったんです。教祖は60代の
恰幅のよい男性でした。ところが、登壇しても話が始まらなかったんです。
やっと出てきた声が「ああああ、お許し下さい」で、それからその場で
土下座したんです。顔をあげると、涙とよだれでびしょびしょでした。
大量の血を吐いて突っ伏し動かなくなり、救急搬送されたんですよ。

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