ふたたびオウムアムア | 怖い話します(選集)

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太陽系の外から来たことが人類史上初めて確認された天体が、
実は宇宙人が送り込んだ探査機かもしれないとの説を、
米国の科学者らが論文で提唱した。もし本当なら有史以来最大の
ニュースだろう。その可能性をめぐり議論が白熱している。

この論文は米ハーバード大の研究者2人が昨年11月に発表した。
太陽系外から飛来したと確認された小天体「オウムアムア」が太陽に接近後、
謎の加速をした原因について考察したものだ。太陽光の圧力を受けて加速した
可能性を説明したのに続き、「より魅惑的なシナリオとしては、オウムアムアが
宇宙人文明によって意図して地球付近に送られた、完全に操縦可能な探査機
かもしれない」と驚きの見解を示した。
(産経新聞)

この画像は想像図で、実際に撮影されたものではありません
1280px-Artists_impression_of_ʻOumuamua

今回は、ひさびさに科学ニュースからこのお題でいきます。じつは、
オウムアムアについては、以前に当ブログの記事でけっこう詳しく
取り上げてるんです。よろしければ、下に貼ったリンクで
過去記事を参照されてください。  

関連記事 『オウムアムア騒動について』

さて、2017年10月、ハワイで初めて観測されたオウムアムアですが、
世界の天文フアンの間でたいへんな話題になりました。
というのは、オウムアムアは観測史上初の恒星間天体である可能性があった
からですね。つまり太陽系外から来た小惑星ということです。

それと同時に、あちこちから、これは宇宙のどこかにいる知的生命体が、
探査機として送り出したものではないかという声もあがりました。
なぜこういう意見が出たかというと、いろんな理由がありますが、
おそらく第一には、オウムアムアがロケットを思わせる細長い形状を
していたことが大きいと思われます。

ただ、残念ながら、アメリカNASAを中心とした積極的な観測によって、
その意見は否定されたんですね。まず、否定の根拠の一つ目としては、
オウムアムアからは、いっさいの電気的信号が出ていなかったことです。
もし探査機だとしたら、何らかの形で電気を出していると考えるのは、
大きく間違ってはいないでしょう。しかし、その痕跡はなかった。

もう一つは、スペクトル分析によって、オウムアムアの外殻が、
炭素と推定される固い物質で覆われていることがわかったからです。
SF映画などでは、宇宙船は金属でできている設定が多いですよね。
あるいはセラミックとか。炭素そのものでできているとは考えにくいんです。
ただ、この炭素は長年の宇宙の旅で付着したものでしょう。

それともう一つ、オウムアムアが回転している可能性が高いこと。
宇宙空間には上下左右はありませんが、宇宙船が飛ぶ場合、前後ができます。
そのとき、ロケットのようなペンシル型をしていれば、進行方向の星間物質などに
衝突する可能性を小さくできます。ところが、回転しているのなら、
その利点はあまり意味がなくなってしまうわけですね。

以上のようなことから、「オウムアムア=異星人の探査機説」は否定された
んですが、ここにきて、その可能性が再び取りざたされることになりました。
なぜかというと、オウムアムアが太陽に近づき、
また遠ざかるときに、謎の加速をしていることが判明したからです。

ある物体が、太陽のような巨大な重量のある星に近づくと、その重力によって
加速されます。そして、太陽から離れるにつれてじょじょに減速していく
わけですが、厳密なシミュレーション計算をしたところ、
その減速の度合が、想定よりも小さかったんですね。
ということは、何らかの原因で加速が行われた。

そこで、引用ニュースのハーバード大の研究者たちは、
オウムアムア宇宙探査機説を再燃させたんですね。その論文によれば、
オウムアムアの加速は、太陽光の圧力、つまり太陽風を受けたためとされています。
ふだんは格納してある下の画像のようなセイルを、
太陽から離れるときに広げた可能性が示唆されています。

太陽光を受けるセイル


うーん、それがもし本当ならすごいことですが、この論文に対し、
他の研究者の多くは否定的です。「面白いジョークだ」みたいな反応が多いですね。
まあ、アメリカの研究者というのは、そういうジョークを、
大真面目な顔をして発表したりするケースはありますからねえ。

NASAによれば、オウムアムアの謎の加速は「ガスの放出による」と推測されています。
太陽に近づいたための熱で表層の氷が溶け、内部のガスが噴出した。
あれ、ちょっと待ってください。だとすると、オウムアムアは小惑星ではなく、
彗星となってしまいます。彗星と小惑星の違いは、
ガスなどの物質を拡散しているかどうかによるんです。

さて、オウムアムアはかなりの高速で移動していますが、
もしこれが宇宙探査機だった場合、もっとも地球から近い恒星系から来たとしても、
5万年ほどの時間がかかっていると試算されています。それより遠くから来たのなら、
気が遠くなるほどの年月、宇宙を旅してきたことになります。

そんな長年の間、探査機の機能が持つとは思えないですよね。
また、探査機を発射した異星人が、5万年以上も成果を待っているとも考えにくい。
ですから、常識的に、探査機ではないんだと思われますが、
「死んだ探査機」である可能性がないわけではないでしょう。

つまり、燃料を使い果たし、すべての機械類は止まり、
もし中に乗員がいたとしても、全員死に絶えた状態で宇宙を漂っている。
あまりいい例えではないかもしれませんが、幽霊船のようなものかもしれません。
オウムアムアから電気信号が検出できないのもこれで説明がつくでしょう。
ハーバードの研究者たちも、太陽セイルの残骸である可能性に言及しています。

さてさて、ということで、宇宙探査機である夢は、かろうじて残っているんじゃ
ないでしょうか。オウムアムアは現在、土星軌道のあたりまで進んでいるはずで、
今年中に太陽系外に出ていくと考えられます。もはや接近して観測するのは
不可能ですし、二度と出会うこともないでしょう。
ですから、真相は謎のままということになります。では、今回はこのへんで。