天狗の鼻 | 士は己を知る者の為に死す

士は己を知る者の為に死す

男は自分を理解してくれる人の為なら命を懸けて尽くす

主従関係は、征服支配よりも理解


2012年5月26日


ぼ~っと浮子を眺めていたら、釣り仲間の整体師がやってきた。僕は既に35センチのチヌを釣って余裕綽々である。



士は己を知る者の為に死す-2012_5_26 35戦地




整体師は、ゆっくりと準備を整え、竿を出したのは到着してから1時間後だっただろうか?


その間僕は鯵とカサゴを釣り上げて「はい!お土産」と、キャバ嬢に貢ぐ課長よろしく、せっせと魚を献上する。


そしてそれが・・・満潮前の夜中まで続いた。


「いませんなぁ」
「いませんなぁ」
「チヌさんお留守ですなぁ」
「お留守ですなぁ・・・」



先週は、爆釣とまでは行かなくても、ぽつり、ぽつりとチヌが釣れ、飽きることなく楽しんだのだが、今週は様子が違う。


のっこみ期の小潮。大潮で産卵をしたチヌは、一旦深場で休憩するらしい。が、一ヶ月間卵を産み続ける彼女等である。次の産卵に向けて、ただひたすらに餌を食う。


だから、のっこみのチヌは馬鹿みたいに釣れるのである。


産卵から一週間も経てば、彼女等は腹ペコのはずなのだが、ここはチヌの餌場ではないのだろうか?



バシャバシャ!


「ん?」
「やった!」
「え?」
「やりました」
「ほほ~」


バシャバシャ!


「また、やった!」
「え?」
「チヌさん、おるじゃん!」
「てめぇ!俺に喧嘩売ってんのか?」
「はよ釣らな!」
「むむぅ・・・」


すっかり天狗になった整体師、閻魔様からやっとこを借りてきて、滑らかに滑る舌を引っこ抜いてやろうかと本気で考えた。




2012年5月26日


昨日、天狗になった整体師。誘いもしないのに、うちの近所の岸壁で待ち伏せをしてやがった。その岸壁を見渡す道路が、通り道だから隠れようが無い。


「今日も行く?」
「そうね」
「じゃあ、俺、餌も買ったし、先に行っとくわ」
「はいはい」


開始早々に整体師が30センチのチヌを釣る。益々天狗の鼻は伸び、それで釣りが出来るのではないかと思うほどになった。


ところがである。こちらは、釣れども、釣れども、フグ!フグ!フグ!


半日経っても、チヌはおろかメイタの一匹も釣れない。


整体師もあれからは、餌取と格闘している。


「いませんなぁ」
「いませんなぁ」
「チヌさんお留守ですなぁ」
「お留守ですなぁ・・・」




万策尽きて、捨石の際でベラと遊んでいると、それまでとは少し違う浮子の動き。


「ん?・・・」


海面間際の浮子トップがひょこひょこと浮いたり沈んだりを繰り返す。


「これは、もしや?」


先週もあった、ここのチヌ独特の当り・・・って、言うか、針が付いた刺し餌を喰った後も、海底に落ちている撒き餌を拾って喰っている。つまり、餌を食べようと海底に口を近付けると浮子が沈み、餌を拾って体が水平になると浮子が浮くのである。


そっと、竿を立て、道糸を張ってやると、違和感を感じてその場から移動しようとしたのか、スッと浮子が沈む。竿先に乗ったところで、ちょいと竿を立てる。腕の動きに同期して、竿先は曲がり、やがて竿の胴に乗る。


「やった!」
「え?」
「やりました」
「ほほ~」


バシャバシャ! 35センチのキビレチヌ



士は己を知る者の為に死す-2012_5_27 35戦地


「やった!」
「え?」
「やりました」
「ほほ~」


バシャバシャ! 25センチのメイタ



「やった!」
「え?」
「やりました」
「ほほ~」


バシャバシャ! 25センチのメイタ



「やった!」
「え?」
「やりました」
「ほほ~」


バシャバシャ! 30センチのチヌ



俺が連続4枚釣り上げると、天狗の鼻はポッキリ折れましたとさ!



めでたし めでたし





お~っほっほっほっほ!