「魔犬」を読みました。
ストーリーは以下のごとし。
世の中のすべてに退屈し切った主人公は、相棒とともに、墓荒らしという倒錯した趣味に耽っていた。遺体ではなく、埋葬品を蒐集するのが目的であった。
ある教会墓地を暴いたところ、白骨化した遺体の首に、翡翠の魔除けがかかっているのを発見し、持ち帰る。墓は元どおりに埋めた。
その日を境に、周辺に不吉な空気がただよいはじめる。相棒は得体の知れない獣に引き裂かれて死んでしまった。
主人公は棲み処を引き払い住まいを変えたが、獣の遠吠えは移転先まで追ってきた。
魔除けを遺体に返すことを決意し、墓地に向かったものの、道中で魔除けを盗まれてしまう。
盗人と思しき者は獣のようなものに惨殺された死体となって発見された。
墓を掘り返すと、白骨だった遺体には肉が付いており、その手には翡翠の魔除けが握られていた。嘲笑うような光をたたえた遺体の目を見た瞬間、主人公はこの呪いから逃れるためには自殺するほかないと悟ったのであった。
墓荒らしがヤバい品に手を出したばかりに破滅するという概略はわかるのですが、問題は翡翠の魔除けや遺体をどう解釈するかですよ。
私は吸血鬼だと解釈しました。
魔除けは、遺体を護るものではなく、遺体が魔として甦るのを阻止するために置かれていたのだ、と。
その魔除けを盗んだものだから、遺体が復活してしまった。
吸血鬼だと思ったのは、やたらと蝙蝠の描写が出てくるからです。
蝙蝠と魔犬を従えているとくれば――吸血鬼しかないっしょ。
ラヴクラフトが既存のモンスターを扱ったか! と妙な感動に打たれたものの、よくよく考えてみれば、吸血鬼という解釈には無理があるような気がしないでもない。魔除けのせいで封印されていたのだとしたら、復活したあと、なぜそれを取り返したのか?
辻褄の合う説明が思いつかないんだなあ。
ネットで他の方の感想をあさっても、吸血鬼と解釈する見解は見当たりませんでした。
自信をなくし、ふりだしに戻る。
遺体と魔除けって、結局、何なんだ!?
魔除けの意匠について、『ネクロノミコン』に記されたレン高原の食屍宗派と同じものとの記述があるので、本作はクトゥルフ神話に連なる一編であるようです。
「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」というタイトルが、長すぎるという理由で掲載誌の編集長によって「白い類人猿」に勝手に解題されたとき、激怒したラヴクラフトはこう言ったそうな。
「もし私が『白い類人猿』というタイトルをつけたなら、白い類人猿は登場させない」
と。
タイトルでネタバレするようなタイトルを採用するのは、ラヴクラフトの流儀ではないらしい。
で、あるならば――。
「魔犬」というタイトルの本作に登場する獣が、犬であるわけがないじゃないですか。
魔犬と思われる存在は、やっぱり、吸血鬼が化身した姿だったのじゃないかしらん。
と、吸血鬼に未練タラタラのまま、記事を終わります。
