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物語の面白さを考えるブログ

マンガ・映画・フィギュア・思索など

 

「魔宴」を読みました。

 

古い秘儀を伝えるその一族は、百年ごとに冬至の日に儀式を行うよう、父祖より命じられていた。

一族の末裔である主人公は、言い伝えにしたがい、儀式の場であるニューイングランドの町・キングスポートを訪れる。

古い街並みを歩き、指定された家を訪ねると、唖の老人が出迎え、鉄筆と蝋板による筆談で待つように伝えられた。

時刻となり、老人とともに丘の上の教会に向かう。近隣の家からは、ローブをかぶった群衆が儀式に参加するために集まってきた。

教会の地下納骨堂にある螺旋階段をさらに下り、地底の洞窟に着く。

そこでは、緑色の火柱を群衆が礼拝しており、闇から現れた皮膜の翼をもつ名状しがたい生物にまたがり、次々と闇の彼方へ旅立っていくのだった。

主人公が怖気づいていると、唖の老人は、指輪と懐中時計をとりだして見せ、自分が秘儀の主宰者であることを告げる。その二つの品は、数百年前に埋葬された先祖のものであった。

主人公は地底を流れる川に身を投じ、脱出を図る。

気がつくと病院であった。海で凍死寸前で漂っているところを救助されたのだという。

病院から見るキングスポートの町は、近代的な景観をしており、儀式の夜とはまるで様相がちがった。丘の上は教会墓地になっていると聞き、主人公は恐怖におののく。

 

クトゥルフ神話の先行作品と評されるだけあり、ラヴクラフトらしい要素がてんこ盛りの一編。

「不定形のフルート奏者」が初登場し、『ネクロノミコン』がミスカトニック大学に収蔵されているなどの設定も明確化しています。

注目したいのは、儀式の夜、主人公が過去に迷い込んだともとれる描写。

ラヴクラフトの作品では、時間は過去から未来へ一律に流れるものではなく、錯綜することもしばしば。

また、精神と肉体は別々の存在であるという生命観が根底にあることを考慮すれば、父祖の魂は死後も存在し続け、儀式の日に子孫を異次元へ誘っているとも読み取れます。

結局のところ、謎は謎のままで終わるのですが。

地底の儀式のシーンは圧巻のひとこと。異界的なおどろおどろしさの描写は、さすがとしか言いようがありません。

難しい考察はなげうって、妖しい雰囲気を堪能するのが正しい味わい方なのかも。