死体安置所にて (『ラヴクラフト全集 1 』より) | 物語の面白さを考えるブログ

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「死体安置所にて」を読みました。

 

雑な仕事をする葬儀屋のジョージ・バーチが、死体安置所に閉じ込められて、ひどい体験をするストーリー。

冬の間、地面が凍って墓穴が掘れないので、死体安置所には、埋葬を待つ死体が棺桶に入れられたまま保管されていた。

春になり、墓掘り人が仕事をすると、バーチは埋葬をするべく死体安置所に死体を取りに行った。

強風で扉が閉まり、丘の横っ腹を掘ってつくった死体安置所に、バーチは閉じ込められてしまう。

扉の上にある、レンガ造りの採光用の窓を壊せば、脱出できそうである。

その作業を実行するための踏み台として、棺桶を利用することをバーチは思いつく。

棺桶を積み上げ、その場にあった道具でどうにか窓を広げ、いざ脱出というとき、最上段の棺桶の蓋を踏み抜いてしまった。

バーチはぞっとした。何かが足首を掴み、行かせまいとするのだ。

どうにか脱出したバーチは、門番小屋まで這ってたどり着いた。彼を診た主治医は、アキレス腱のあたりに噛みつかれたようなひどい傷があるのを発見した。

主治医は死体安置所を調べ、最上段の棺桶の中身が、アサフ・ソーヤーという男であることに気づく。執念深い復讐心の持ち主で、生前、嫌われ者だった男である。

ソーヤーの体格に比して、棺桶は小ぶりであった。

バーチは、一度は放棄した出来損ないの棺桶を、ソーヤーを収めるために流用していたのだ。

棺桶のサイズに合わせるため、死体の足首を切断して。

 

実に怪談らしい怪談。

邪神も夢幻境も人喰いも先祖の因縁も登場しない、ラヴクラフトにはめずらしいとさえいえる作風の一編。

文庫本の内容紹介には、〝ブラック・ユーモア風の〟と記されています。

なるほど、落語か講談ふうにアレンジしても、成立しそうな話であります。

ラヴ先生、こういう話もいけるんですねえ。

惜しむらくは、こっちの路線の作品が他に見当たらないこと(ないよね? ある?)。

やっぱり、どこか現実と地続きになっているような怪談は、趣味じゃなかったのかしら。

〝現実世界からの疎外感〟がラヴクラフト作品の特色であることを鑑みるに、量産がかなわなかったことも宜なるかな、であります。

 

 

『ラヴクラフト全集』全7巻の感想文はこれにて終了です。

別巻[上下]の二冊があとに控えていますが、こちらには、多少なりともラヴクラフトの手の入った他作家の諸作が収録されています。

別巻は後回しにして、他の本を読む予定ですので、感想はいつか、その機会が訪れたときに記すことと致します。