異修羅 (全12話) | 物語の面白さを考えるブログ

物語の面白さを考えるブログ

マンガ・映画・フィギュア・思索など

 

 

 

2024年冬アニメについて、一言も触れていなかった気がするので、ちょっと語ります。

一番おもしろかった作品を挙げようとしましたが、各作品に各自のおもしろさがあり、決められなかったので、「一番語りたい作品は?」と自問し直したところ、自答として出て来たのが『異修羅』でした。

本作は異能力者たちのバトルを描いたファンタジー作品。

原作は、KADOKAWAの「電撃の新文芸」レーベルから発行されている同名小説。

 

おおまかなストーリー:

「本物の魔王」が死んだ。

しかし、魔王を殺した勇者の名前も実在も伝わっていなかった。

ならば、一番強い者を勇者にすればいい。

勇者選定のため、強者を集め戦わせる〝上覧試合〟が幕を開ける――。

 

それぞれの能力の頂点を極めた最強者たちによるバトルロイヤル――という触れ込みに、単純にワクワクしました。

男の子は、いくつになっても、こういう〝比べっこ〟が好きな生き物なのです。

「最強の能力者」がわんさか登場するとなると、前口上に内実が追いつかずにショボくなるか、ご都合主義が目立って説得力を失うか、インフレが過ぎてギャグ同然の茶番に堕するか、のいずれかに該当する危険性が高くなるのですが、本作の偉いところは、説得力を以て各キャラクターの最強ぶりを描出しているところです。

最強者候補として戦うキャラクター全員が、「どうすればこんなのに勝てるんだ?」という感慨を抱かせるに足る強さを備えています。

負ける姿が想像できないキャラクターばかり――。

しかし、それでも、ひとたび戦いが始まれば、決着は訪れます。

その決着のし方――勝ち方・負け方に説得力があるのが、凄い。

あそこでああしていれば勝てた・負けなかった、という感想が後から出てこないのは、ご都合主義が排されているからでしょう。

本作は主人公を一人に定めない群像劇なので、誰が最後まで生き残るのかわからない緊張感を常に帯びています。

いわゆる「主人公補正」が存在しないバトルは、ストーリーと噛み合い、おもしろさを倍加させていると言えましょう。

 

本作には、人間以外の種族が登場します。

エルフやワイバーンあたりは、ファンタジー作品では定番と言ってもいいかと思われますが、珍しかったのが、マンドレイクを登場させているところ。

マンドレイク――別名マンドラゴラは、引き抜くときに発する悲鳴で聞いた者を死に到らしめる植物として、ファンタジー作品によく登場するものの(そういや『ダンジョン飯』にも出てきたナ)、これが「最強の剣闘士」という役回りで登場するのは、本作をおいて他にないでしょう。

 

マンドレイクの剣闘士――〝海たるヒグアレ〟(右側)。

この世界の住人は、王族以外、出生名の前に「二つ目の名」を持つ。この世界では、「海」はこの世と地続きの死後の世界と考えられている。

となりの骸骨も絵面的にヤバい奴だとわかるでしょ。こんなバケモノどもに会いたくねー。

 

同時に42本の剣を神速で操れます。おまけに、致死の猛毒を体内で生成できます。

死を振り撒くその姿は、まさに〝海たる〟と称するにふさわしい。あー、やだやだ。

――と、簡単に紹介しただけで、十分、強さは伝わったと思います。

しかし、所詮は植物、他の最強者たちには若干見劣りするかなあ、なんて思っていたのです。でも、そういうヤツこそ、案外いいところまで勝ち上がったりするのかなあ、なんて思い直したりしたのですが、最初に死にました。残念、けっこう好きなキャラだったのに。

 

もう一人、お気に入りのキャラを挙げると、〝濫回凌轢ニヒロ〟がそれ。「らんかいりょうれき」と読みます。

ご覧のとおりの美少女――なのだけれど、屍魔という、死体から造られた魔族(人造生命体)で、生体活動によらず駆動しているらしいです。

蜘蛛型の生体戦車〝埋葬のヘルネテン〟に搭乗し、生体兵器として暴れます。

 

〝埋葬のヘルネテン〟。

くっそ硬いのが特徴で、完全に近い防御性能を誇る。

完璧な気密性を有しており、毒ガスなどで搭乗者を殺害する手段も効かない。呼吸をしない屍魔であるニヒロだからこそ、完全密閉のコックピットでも無問題というわけ。

 

ヘルネテンに搭乗中のニヒロ(全裸)。背中から生えたコード状の触手でヘルネテンと神経接続しています。

美少女、エチエチ、声が高橋李依と、すべてにおいて隙がないニヒロちゃん、これは長生きするわ、してほしい、と思っていたのに、やられちゃいました(泣)。

ビームで焼いても傷つかないヘルネテンを、どう攻略するんだと思っていましたが、そこを突くのかー、なるほどー、と、意外性と納得感を同時に味わわされました。

それにしても、ワシが好きになったキャラから死んでいくって、何なの、このアニメ。

 

本作を語る上で、触れずにいられないのが、「異修羅構文」と呼ばれる、キャラクター紹介口上。

さっそく実例をご覧いただこう。

〝海たるヒグアレ〟の特徴を紹介する口上は、以下のごとし。

 

「それは死地にて散った膨大な流血に研ぎ澄まされた、決闘の技を持つ。
 それは生命である限り抵抗の能わぬ、絶対致死の毒を秘める。
 それは異形の肉体にて極めた、常軌を逸する無量の剣閃を誇る。
 全てに従いながら何者にも支配されることのない、最も自在なる奴隷である」

 

以上の口上を土師孝也のナレーションが読み上げた後に、クラス・種族・人物名が告げられる。

 

「剣奴(グラディエーター)、根獣(マンドレイク)、海たるヒグアレ」

 

うわあ、かっこいい! 中二心がくすぐられる!

 

〝濫回凌轢ニヒロ〟の場合は――。

 

「それは死者故に、歩行のみで地形を壊滅せしめる乗騎の巨重と速力にすら適応する。
 それは一網のうちに軍勢を切断する、遠隔にして必殺の砲撃手段を持つ。
 それは尋常の攻撃を尽く遮断する装甲と、停止の能わぬ不死性を同時に有する。
 二つの体を与えられながら、ただ一つ蹂躙の機能のみを求められた、惨烈の戦騎である」

「騎兵(カタフラクト)、屍魔(レヴナント)、濫回凌轢ニヒロ」

 

たった一人の最強者を決める戦いは始まったばかり――正確には、そのための〝上覧試合〟は始まってもいない。

前哨戦の段階で、アニメ第1期は終了。

第2期の制作はすでに決定しており、今から放送が楽しみです。