岸本斉史『サムライ8』打ち切りは必然?読者が語る全5巻の評価 | 物語の面白さを考えるブログ

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(1巻と2巻を逆にする凡ミス……)

 

『サムライ8 八丸伝』を読みました。

原作:岸本斉史、作画:大久保彰。

侍をモチーフとしたSF冒険漫画。

 

少年ジャンプ連載時に読んでいたものの、わかりにくくて途中で読むのをやめた作品。

巨額の宣伝費を投じても、内容のおもしろさがともなわなければ打ち切りになることを実証した作品。「○○がヒットしたのはステマでゴリ押ししただけ」という意見を封殺できる貴重な反証的実例と言えましょう。

ネットで「語録」などがネタにされているのを見て、便乗して揶揄するのは簡単だけれども、語るならば、ひととおり読んでからではいけないと思い、今回、読むことにしました。

 

通読してみると、ネットで揶揄されているほどには悪くなかったです。

感情を刺激される箇所がいくつかあったので、「クソ漫画」ではない。

私の「クソ漫画」の定義は、「感情がウンともスンとも揺さぶられない作品」なので、本作は該当しません。

悪くはないけれども、良くもない。

どっちつかずという意味ではなく、良い点と悪い点が混在している。

良い点よりも悪い点の方が多いので、総合評価が悪い方に傾いている感じ。

 

具体的に悪い点を挙げると、

・作画における視認性の悪さ

・用語と設定のわかりにくさ

・主人公の倫理観がちょっとおかしい

・絵的に気持ち悪いところがある

といったところでしょうか。

 

作画における視認性の悪さとは、パッと見で何をやっているかわからないということです。

人物と背景が同じ太さの線で描かれているので、両者が一枚岩のごとく融け合っており、コマを見たとき、まっさきに視線が引きつけられるポイントがないのです。

結果、誰がどこにいて何をやっているのか、判読するのに時間がかかってしまう。読むだけで疲れてしまいます。

 

用語と設定のわかりにくさ。

SFだから、それっぽい専門用語・特殊用語が登場するのはいいとしても、ひとつの台詞あたりの情報量が多すぎます。だから、一読して、意味が頭に入ってきません。

でも、本当の問題は、情報量ではなく、用語が定義されていないことでしょう。

定義されていない用語を多用しながら設定を説明されたって、理解できるはずないじゃないですか。

全部読み終えたいまでも、作中用語を説明しろと言われたら、できませんもの。

これは、SF漫画は特殊用語が多いから一般にウケない、という話とは別問題だと思います。

 

主人公の倫理観がちょっとおかしい。

ちょいちょい不快感をもたらす言動をするんですよね、主人公の八丸くんは。

ヒロインのアンと、恋愛感情がらみですれ違いが生じるのですが、先に態度の悪さを出したのは八丸くんの方なのに、アンちゃんの方が先に謝って仲直りしてしまう。

「八丸くんに死んだ兄さんを重ねて見ていて、八丸くんをちゃんと八丸くんとして見ていなかった、ごめんなさい」

「ゆるすってばよ」

この流れ、何かおかしくない? モヤッとするわ~。

主人公が読者に拭いがたい不快感を持たれたらおしまいです。

 

絵的に気持ち悪いところがある。

侍の身体はサイボーグであり、上半身が頭頂から前後に割れるように開いて脊柱状の「キーユニット」が露出する。――この絵面が単純に気持ち悪いです。

斬られても死なない身体だからといって、自らの首を切断して相手の刀をよける絵面もちょっとどうかな……。生首状態で勝った勝ったと喜ぶ八丸くんの絵には、ちょっぴり狂気すら感じるような……。

「単純に気持ち悪い」は、作品を敬遠する理由になり得ます。「生理的に無理」に通じる、理屈では覆せない理由。

特定の漫画を敬遠する類似の理由に、「絵柄が受けつけない」がありますね(「ジョジョ」がとっつきにくかったり、「アンデラ」の売り上げがのびない理由はこれかもしれない)。

 

テーマはよかったと思います。

愛情をテーマにした物語には普遍性がありますし、観測者の状態によって観測対象の性状が変化するというテーマも、SFっぽくてよろしい。

しかし、上で挙げた「悪い点」によって、テーマのよさを表現しきれずに終わってしまった印象。

『NARUTO -ナルト-』の後続作品がこのような結果になってしまい、残念。