岩井&花澤 まんが未知(2/16放送回) | 物語の面白さを考えるブログ

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テレビ朝日の『岩井&花澤 まんが未知』(2/16日放送回)を観ました。

 

まずは番組紹介。

紹介文は公式ページから引用。

文才&発想力に長けた芸能人と漫画家をマッチング! 芸能人が書いた原作を漫画家が作品に仕上げていく漫画バラエティ。原作に挑むのは芸人やアイドルなど、多彩な芸能人たち。漫画家の仕事場に潜入し作画の様子にも密着。芸能人×漫画家…未知なる掛け算から、どんな作品が出現するのか!?
さらに!! 宮下草薙の宮下と実の弟が本気で漫画家を目指す『宮下兄弟のプロまんが未知』や、漫画家のオススメ漫画を紹介する『人気漫画家が選ぶ! 本当にすごい漫画はコレだ!』など、漫画好きにはたまらない企画も盛りだくさん! MCはハライチ・岩井勇気と、声優の花澤香菜が担当。「まんが未知」が織り成す新しい物語の1ページを一緒に楽しみましょう!

 

この回の企画は、『宮下兄弟のプロまんが未知』。

「サンデーうぇぶり」で短期集中連載を勝ちとった宮下兄弟が、藤田和日郎先生にネームをチェックしてもらい、アドバイスをいただくという内容。

このアドバイスがすごかった!

「キャラクターの見せ方」と「新人漫画家が陥りがちな罠」について。

感動するほど、ためになったので、記事にしたくなりましたよ!

 

キャラクターを魅力的に見せる秘密は、「空間支配力」にあり!

「空間支配力」って何だ?

画面の中で、そのキャラクターが占める割合のこと。「空間支配率」と言い換えた方がわかりやすいかもしれない。これが高いほど、迫力や魅力が増すという理論。

藤田和日郎先生が例に挙げたのが「セーラームーン」。

 

 

身体は細いけど、髪の毛がブワーッと左右に広がっていることにより、「空間支配力」が高くなっています。

これによって、この画面の主役がこのキャラクターであることが、直観的に読者に伝わります。

これで、うしおが戦うとき髪の毛がのびる理由がわかりましたよ!

長い髪と、槍という長い武器を持たせることで、「空間支配力」を上げ、主人公を魅力的に見せていたわけです。

相棒のとらも、タテガミが広がることによって「空間支配力」が高まるので、迫力が出る。

キャラデザや構図を決定する際には、こういう計算が働いていたのですね。

なるほどなあ。

それでは、検証タイム――。

 

槍とタテガミにより、主役ふたりの「空間支配力」が上がっています。

槍がなかったら、とらの迫力に手前のうしおが呑まれていたかも。バランスがとれています。

 

白面の者。九尾の広がりにより「空間支配力」が増大し、大迫力の画面に仕上がっています。

上からのしかかるような威圧感がすごい。

 

ウェディング・ヴェールとスカートが広がることで、真由子の「空間支配力」が上がっているのがわかります。

とらのタテガミとの合わせ技で、ふたりで空間を支配しまくっていますね。

 

この画面で、麻子を主役にする見せ方とは?

開いた足とスカートの裾によって「空間支配力」を高める工夫がなされていることが窺えます。

 

なるほど、「空間支配力」。

こういう視点で漫画を見たことなかったなあ。勉強になりました。

「引き画」の多用がアニメ「チェンソーマン」の迫力を減衰させたという記事を前に書きましたが、「空間支配力」という概念を導入してあらためて言い直してみると、「引き画」はキャラクターの「空間支配力」を下げる構図である、と言うことができるわけです。

どうりで。

 

では、次の話題。

「新人漫画家が陥りがちな罠」とは?

読切や短期集中連載で、読者の支持を獲得し、晴れて連載作家となった新人は、次のように考えがちである。

これで何話使って描いてもよくなったんだ、と――。

紙数の制約から解放されたと錯覚した新人漫画家は、一番読者に披露したい「面白いネタ」を、もっとも効果的に見せるために、ストーリーを構成する。

「面白いネタ」を後にとっておき、そこにいたる段取りを周到に組み始めるのだ。

これで、最高に面白いストーリーを読者に提供できるはずだ、と新人漫画家は考える。

しかし、読者は、長々と段取りを見せられるので、面白くない、と感じる。

こうして、作家と読者との間で、乖離が生じるのである。

その行き着く先は「打ち切り」という末路だ。

打ち切りの決定した漫画が、最終回の間際で急に面白くなるのは、とっておいた「面白いネタ」を惜しげもなく、これでもかと披露して畳みかけるからである。

だから、出し惜しみはいけない。

自分が面白いと思ったネタは、バンバン読者に見せていけ――。

それが藤田和日郎先生のアドバイスである。

読者の心に残る面白さとは何か、っていう話も、藤田先生は少ししておられた。

「意外な展開」というのは、びっくりはするけれど、案外心に残らないものである。

心に残るのは、やっぱり、キャラクターの「心の変化」だとか「強烈な感情」なんだよね、って話。

だから、キャラクターを「見せる」、キャラクターで「魅せる」っていうのは、それだけ大事なんだよ、ってこと。

なるほど、なるほど。

 

もう、「なるほど」しか感想が出てこない。

正味、二十分もない番組だけど、中身は濃密でした。

いや、すごかった。

そして、後進に惜しみなく創作の秘密を伝授する藤田先生、かっこよかったぜ!

ありがとう!!