沼鬼との戦闘回。
被害者二人を守りながらでは、攻撃に集中できない炭治郎。
だが、禰豆子の参戦により、風向きは変わりました。
二人の守りを禰豆子に託し、二体の沼鬼が待ち受ける
沼の中へ、果敢に身を投じます。
空気もほとんどなく、足場もないため、地上のようには動けない
この状況でも、使える技が「水の呼吸」にはありました。
陸ノ型・ねじれ渦。
上半身と下半身の激しい〝ねじり〟により発生した
強い渦動は、刃となって沼鬼の頸を切断!!
吾峠先生の作劇法の特徴は、いくつかありますが、
そのひとつに〝出し惜しみをしないこと〟があります。
水の呼吸の剣技には、壱から拾まで、十個の型があります。
(冨岡義勇はオリジナル技である〝拾壱ノ型〟を開発している)
ありきたりなバトル漫画であれば、技を小出しにすることでしょう。
序盤では定番となる技を二・三個使いまわしておいて、
中盤以降、敵のインフレに合わせて、
温存していた技を披露する、といった感じでしょうか。
これもひとつの方法論であり、決して悪手ではないのですが、
吾峠先生はこれを採用しません。
惜しげもなく、ガンガン技を見せていきます。
水の呼吸の剣士としての初戦である〝最終選別〟では、
三つの型を、炭治郎は使いました。
以下、登場した順に、羅列してみます。
「最終選別」
・肆ノ型 打ち潮
・弐ノ型 水車
・壱ノ型 水面斬り
「沼鬼戦」
・捌ノ型 滝壺 (伍ノ型から変更。伍ノ型は未発動)
・陸ノ型 ねじれ渦
――と、このように、わずか二戦にして、半数までが判明しました。
「断片化した情報」を小出しにして、「フック」を作り出す一方で、
吾峠先生は、惜しげもなく設定を明かしていきます。
マンガとしての〝見せ場〟〝盛り上げどころ〟では、
出し惜しみをしないポリシーを持っているように感じます。
殺陣は剣士の見せ場。
剣技を出し渋っていては盛り上がりません。
上弦の鬼が集結したときも(第12巻)、
上弦の壱は後ろ姿のみの登場かと思っていたら、
しっかり顔を見せてくれました。
その顔があまりに〝異形〟で、ビックリしましたよ。
どのタイミングで何を見せたら、読者が高揚するか、
吾峠先生は、ちゃんと計算していらっしゃる。
そして、ここぞ、というときには、出し惜しみをしないのです。
情報の〝チラ見せ〟と〝大盤振る舞い〟。
知りたいことは煙に巻かれ、予想していなかったところで
新事実が現れる。
一話におけるストーリーの流れだけでなく、
情報の提供のし方にも「緩急」があるので、
「鬼滅」は展開の予想がしづらくなっています。
これもまた、「鬼滅」の面白さの秘密のひとつなのです。
話を十二話に戻して――
〝沼〟から地上に生還した炭治郎は、
三体目の沼鬼を追い詰め、鬼舞辻無惨の情報を聞き出そうとします。
すると――
沼鬼は顔色を変えて、ガタガタと震えだしました。
「言えない」
と言ったコマで、次回へ続く。

