常時、天狗のお面を付けているという、
インパクトのあるヴィジュアルで登場した鱗滝さん。
なぜにお面?
という疑問の答えは、作中で示されていないので、
わかるはずもなく。
なぜに天狗?
これも作中では語られていないのですが、
私には、鬼と天狗は仲が悪いという知識があったので、
鬼と敵対する鬼殺隊の元柱が天狗の姿をしていることに、
さほど不自然さは感じませんでした。
しかし、よくよく考えてみれば、この知識の出どころは、
菊地秀行先生の 『鬼獣伝』 という伝奇小説であって、
民俗学などの資料の中に、鬼と天狗の敵対関係に関する
記述を見た記憶がないのであります。
今回の記事執筆をよい機会とばかりに、Google 先生に尋ねてみたところ、
鬼と天狗の不仲を肯定する明確な証言は出てこない。
両者はともに「妖怪」という大ジャンルに包括される、
いわば同じ陣営の朋輩なのでありました。
唯一、該当したのが、「豊橋鬼祭」。
愛知県豊橋市の安久美神戸神明社(あくみかんべ しんめいしゃ)の
例祭で、そのクライマックスでは、
悪さを働く赤鬼を、薙刀を振るう天狗が成敗します。
国の重要無形民俗文化財に指定されているこの祭りは、
神話を取り入れた、平安時代から続く田楽であり、
赤鬼の原型は高天原で暴れるスサノオで、
天狗として表現される武神は、サルタヒコであるとも言われています。
赤鬼が降参し和解が成った後、天狗は神楽を舞います。
『鬼滅の刃』において神楽といえば「ヒノカミ神楽」。
ヒノカミ神楽は「日の呼吸」。
してみると、〝ヒノカミ〟は〝日の神〟ということになる。
日本で日の神といえば、天照大御神をおいて他にない。
日の呼吸を使う剣士とは、太陽神の加護を受けた武神であろうか。
武神が退治するのはスサノオ=鬼。
ならば、日の呼吸の剣士を恐れる鬼舞辻無惨は、
スサノオである、という図式になる。
鬼と天狗の不仲説から論を起こして、筆のすべるままに進めたら、
鬼舞辻無惨=スサノオという結論になってしまった。
かなりコジツケましたが、今後、無惨様にスサノオ要素を発見できるか、
楽しみながら本編を読んでいこうと思う次第であります。