夫はホテルスタッフの知り合いのタクシー運転手と話をつけました。昨日あれだけ時間と労力をかけて、バスを調べて、チケットも買ったのに、バスを降りてから数km荷物を担いで歩くのは、もう無理らしい。でも、タクシーで行くお陰で、私のスリーピングバッグ、携帯湯沸かしと、ランドリー行きの服などを持って行ってくれているので、私のバックパックはその分少し軽くなって助かりました。ありがたいことです。

 

 

今日は昨日の予習通りに、最初のスタート部分のルートが新しくなっていて、その方が景色も良く時間も短縮になるらしいので結構なことです。この新しいルートを採用するのはいいのですが、とにかく迷わないように、新しい区間が終わり、元ルートと繋がる所を再びよくよく地図を頭に入れて、7時25分、朝食のためにレストランに降りました。

 

まだ閉まっていてがっくり。7時半から朝食なのに、5分前で開いてないって、なんでやねん。(日本人思考)朝食込みなのにもったいないけど、バックパックを持って降りてきていたので、もうこのまま出発しようかと思った矢先に、スタッフが出勤してきてて、すぐに パン各種並べて用意してくれました。パウダーシュガーがかかったクリーム入りクロワッサンを選んで、おいしくいただきました。

なぜだか気がせいて、ゆっくり朝食を楽しむ心の余裕がないので、カフェを楽しむ夫に声をかけて出発しました。「いってきます!」

 

今日は4日目にして初めて1人でスタートです。日没は夜8時過ぎと遅く、1日は長いので焦る必要はないのですが、できるだけ早いうちに 今日の歩きを終えてゆっくり休みたいという思いがありました。日の出は6時前で、どうせいつもその前に起きてしまうので、朝の爽やかなうちに、さっさと出発したいのです。

 

今朝は水だけ飲みました。昨日は朝紅茶を飲んで、出発後、速攻でトイレに行きたくなって困りました。

 

 

 

 

頭にインプットしてい地図の画像の通りに行くと、すぐに線路を渡って町の中心外に出ました。

そこからは説明であった通り、新しい標識が頻繁にあったので、迷うことなく川沿いの畑にたどり着きました。

気分よく、迂回してあぜ道を進むのですが、雑草が腰近くまで伸びていて、かき分けて行かねばなりませんでした。もちろん、誰かが数名は通ったであろう踏みつけた跡は、申し訳程度にありましたが、雑草についている朝露がズボンに触れて、膝から下がびしょびしょになってしまいました。まあ、昨日の雨の日での泥だらけのブーツは、おかげで綺麗になったので、よしとしましょう。

背の高い雑草が密にびっしり生えていて、これ以上は進めないという所で、そこからは、畑の中のうねの間に数人の足跡が続いていました。足跡に従って、私も失礼しますと唱えながら、苗を踏まないように注意深く進みました。

 

川沿いの畑を進むと、橋が見えてきて、その橋を渡って元々のアプリの緑色のルートに合流しました。これで、今日の新しいルートの区間を無事に達成することができ、1人で鼻高々でした。

 

しばらすると、後ろから話声が近づいてきたのでM&CE夫妻かなと思って振り返ると、今までには会ったことのない人達でした。がっちりとした体格のいい若い女性の2人組でした。

1人が英語で声をかけてきました。「あなたもチテルナに行くの?私たちもよ」「じゃあね、バイバイ」みたいな簡単な挨拶をして、 彼女たちは私を追い越して行きました。

 

さらに進んで行くと、山道の入り口があったけれどアプリのルートでは、このままこの舗装道路を行くようになっていたので、この緩やかな坂道をテンポよく歩いていきました。

 

 

 

いくつかの小さな住宅街を通り過ぎました。郊外の小規模な新興住宅地でしょうか、家は新しめで、庭の花も美しく手入れされていて、住んでいる人たちの、生き生きとした日常生活の新鮮なエネルギーを感じました。幼稚園からは地元の園児たちの元気な声も聞こえてきて、若いパワー(笑)をいただける気がして嬉しくなりました。

 

イタリアの田舎、5月のとある平日に、ルーティーンをこなしている地元の人たちの間を、コンフォートゾーンから離れたアジア人冒険者(私)が1人歩いているというのが、客観的に見て、何とも言えず不思議に思われました。(私、こんな所でなにしているんだろう、みたいな)

 

 

周囲には畑があって、馬などの家畜も居て、そこを過ぎると、人々の住んでいる地域は終わり、また誰にも会わない1人の瞑想歩きが始まりました。

 

 

ちょっとずつ上り坂になってきました。

今日は上り坂で終わるという工程だと記憶しているけど、もしかしてその上り坂かい?と、 改めて アプリの地図をチェックすると、もう今日の2/3は 超えていました。なかなか調子よく歩けているではないか。今日は距離も短いし、平坦な道の部分が多かったのでありがたかったです。

 

 

 

しかしここにきて、左足が痛くなってきました。昨日の下りで痛めたのか 、あるいは連日の溜まった疲れのせいかもしれない。そういえば昨日の午後の街歩きの時は、結構しんどかったのでした。でも今朝部屋を出て階段を降りるときは、全然痛みはなかったのでリカバリーしたと思っていました。

 

 

図で見ると、最後の部分が全体的に上り坂ですが、実際には細かなアップダウンが続きながら少しずつ高度が上がっていくのです。そのちょっとした下り坂のたびに左足が付け根から全体に痛みました。

歩き方を工夫しようかと考えてみました。

大きい水ぶくれが足の内側にできていたことを思い出し、足の外へ少し重心をかけるようにして歩くように試してみたところ、足の付け根の痛みが軽減しました。

 

 

それでも緩やかな斜面の上りだったので、リズムよく歩け、 距離も少なかったので約3時間(昨日や一昨日の半分の時間)でCiternaに到着きました。

最後に、あの女性の2人組に追いつきました。

 

中心のカテドラルの前に展望広場がありました。

 

 



 

教会に入ったらすぐに男性がが3人入ってきたのでしばらく待って、出て行くのを見届けて、誰もいなくなったところで、アヴェ・マリアを歌って祈りました。

 

 

宿の方向に行こうとしましたが、教会からの横の細道は行き止まりになっていたので、一旦、展望広場まで戻っていくと、あの女性2人組と、私の後にたどり着いたであろうM&CE夫妻が興奮しておしゃべりをしているのが目に入りました。

イタリア語であっても、昨日の雨の中の山登りが滑りやすくて本当に大変だったと話しているのが分かりました。やはり ベテランのM&CE夫妻であっても、雨のおかげで手強い道のりになっていたのだと、私も頑張ったなあと、自分を褒めてあげたい気分になりました。

 

彼らは私を見ると喜んでくれて、女性2人組にも私のことを紹介してくれて、、、と、改めて挨拶しているそのタイミングで夫もその場に到着したので、わいわいと笑顔の再会となりました。

 

ここは、ドライブでツーリストが寄っていくのかなと思われるような街の雰囲気でした。(どんな説明や)

展望広場の前には、カフェテリアやおしゃれな食料品店がありました。(何でもおしゃれに見えてしまう)照れ

 

 

その食料品店でパン、ハム、チーズやサラダなどの食料、また、ポテチやお菓子を買い込み、夫と宿に向かいました。

 

一軒家を改造した宿の部屋の中に入ってよっこらしょと座った途端、放心状態で、そのまま動けなくなりました。

今日などは他の日に比べれば、距離も時間も短く、簡単な日ではありましたが、それでも、座ったきり数分は動ごく気力がありませんでした。

ブーツを脱ぐのにのろのろ手を動かし始めました。「そのブーツをさっさと脱いで乾かせば? 」というような夫の言葉にイライラしました。「急かしてくれるな、一息つかせておくれよ、放っておいてちょうだい!あー!!」プンプン

 

トイレ、シャワー付きの部屋が、5部屋ほどあるけれども私たち以外は今日、だれも来ないらしい。キッチンは自由に使っていいからねと言い残して、管理人は帰って行きました。管理人はこの家には住んでおらず、今日、この一軒家は私たちの貸し切り状態になりました。

 

廊下の突き当りの外の眺めのいいテラスで食べるのは最高でした。

 

 

キッチンにはパンや クッキーや、もちろん、いつものジャム各種もあり、コーヒー、お茶などの飲み物も揃っていました。

 

テラスは、晴れている時は爽やかで気持ちいいですが、少しでも曇ると山の冷たい風が吹いて、ヒヤッと涼しくなり、キッチンで 入れたあったかいお茶がとっても美味しかったです。

 

この宿は巡礼者に人気のようで、キッチンにはメッセージボードがあり、巡礼者が残したメッセージの紙切れや、写真、送られてきた手紙などが沢山ピンで留められていました。廊下には荷物を軽くするための『お譲りコーナー』もあり、 皆が置いていった水のボトルや本、タオルやボディバッグなど、色んなものが小さいテーブルの上に置かれていました。

 

部屋のバスルームの洗面台の鏡の位置が高くて、私の頭のてっぺんしか写らなくって、思わず笑ってしまいました。つま先立ちしてやっと顔が見る事ができました。今回、便座は大丈夫でしたが、今までに何度も、座ると床に足が届かない高さの便座に遭遇しました。(笑)

シャワーに入る時も、まずシャワーヘッドを一番下まで下げるというのが、私が最初にする行動なのです。(身長152cm)爆  笑

今日のバスルームは 服やらタオルを置いたりかけたりするところがたくさんあって便利でした。

 

ドミトリー だと シャワーもトイレもタイミングを見計らう必要があるし、充電するためのコンセント も順番を待たねばならぬし、2段ベッドの上の場合は下の人に気を使い、荷物を置く場所も考えなければならないのです。(何も考えてない人もいますが(笑))

ということで、共同部屋は、不便でゆっくり休まらないかもと旅行前に想像しました。歩くこと以外でエネルギーを使いたくないので、基本的には少し値段は上がっても個室を予約しました。

夫が、巡礼道の初日と最終日は修道院のドミトリーを体験したいという事で、ヴェルナとアッシジ、そして個室のチョイスが出来なかった場所もう1日、つまり、10日間の中では、7晩はゆったり個室、3晩はドミトリーという内訳でした。

 

庭にはイチジクやさくらんぼの実がたわわになった木々があり、花々の間を蜂が飛び回り、静かで豊かな風景でした。 

 

お腹も満足して、一段落すると、夫は街歩きをしようと言い出しましたが、私は大概疲れきっていたので、もう出かけたくないと誘いを断りました。彼は無理やり私を連れ出そうとせず(感謝)、Cさんから連絡が来たから、会えるかもしれないと言い、1人で出かけて行きました。

 

私はゆっくりシャワーに入り、髪も乾かして、さっぱり綺麗になって、しばし、何もしないくつろぎタイムを楽しみました。

それから、録音を始めました。フィレンツェにいる頃は毎日、日記をつけていましたが、巡礼歩きが始まってからは、とてもじゃないけれど書く気力が残っていないので、その日その日の出来事を、忘れないうちに、声に出してスマホで録音していました。(この毎日の録音音声をもとに、ブログを書いています)

 

突然、玄関からドアのノックが聞こえました。

慌てて部屋から出て、キッチンの窓から覗いてみると、玄関外にバックパックを背負った女性が1人見えたので、ドアを開け、迎え入れました。彼女は今、到着して、管理人とスマホでやり取りしたそうで、外のキーボックスの暗証番号を管理人に教えてもらったそうです。鍵を取り出して、ドアを開けようとしたものの、私が内側からスライドロックをかけていたので、開かなかったのだです。 (誰も来ないと思っていたので念のため、ロックしていた)てへぺろ

 

彼女は相当に疲れていて、今にも倒れそうだったので、廊下の椅子に座らせ、私は部屋の鍵を受け取り1部屋ずつチェックして彼女の部屋を探しました。

彼女は、今日、サンステファノからここまで、40km歩いたと言ったのを聞いて、私はマジか?と驚きました。なぜなら私の3日分の行程です。(計算してみると46kmでした) そりゃ死にそうに疲れているはずです。

彼女は「足はパンパンでもう歩けない、 もう疲れた、もうやめる。 ここまでで、すでにトータル100kmは歩いたから、証明書はもらえるよね。もう明日からは バスで行く。」と今にも泣きだしそうに言って、自分の部屋のベッドにばったりと倒れ込んでしまいました。「ゆっくりお休み」と声をかけ、私は自分の部屋に戻りました。

いくら若くて体力に自信があるからといって、結構な無茶ぶりだなと、心配しつつ思いめぐらせていると、しばらくして彼女が誰かと電話で話している声が聞こえてきたので、ひとまず安心して、私は今日の録音を続けました。

 

外出していた夫が戻ってきたので、玄関のドアを開け、もう一度キッチンでお茶を飲んでから、部屋に戻って足に筋肉痛のクリームを塗って寝ました。

 

いつもありがとう