怪談は作りものだと笑う者、他人の不安や怖気に付け込む者、いじめを隠す子供……。こんなヤツらに“一瞬の戦慄〞なんて生ぬるい! 「怖ガラセ屋サン」はナメたやつらが大好物。狙ったら最後、あの手この手で恐怖のどん底へ――。怖がらなかったことを後悔しても、後の祭り。先の見えない恐怖に「まさか」の連続!背筋の凍る連作短編集。
そろそろミステリーやホラーを一段落させようかなと思っています。
この作品はとても澤村さんらしいなと思いました。
比嘉姉妹シリーズにもこんな空気感があると思う。
あの世のものなのか、それとも生きている人間の悪意なのかどっちに標準を合わせて読んでいけばいいのかわからないようなところがあります。
もちろんハピーエンドは一つもありません。
『人間が一番怖い人も』
『救済と恐怖と』
『子供の世界で』
『怪談ライブにて』
『恐怖とは』
『見知らぬ人の』
『怖ガラセ屋サンと』
全7編の連作(?)短編集です。(全編に怖ガラセ屋サンが登場するので)
お化け怖い〜みたいな作品ではなくて、嫌な気分にさせられる作品という気がします。
怖ガラセ屋サンが人間なのかそうじゃないのかよくわからないのですが、必殺仕事人の怪談版みたいな存在です。
人間って自分の利益のために他人を犠牲にする場合がある。
それを私はそんなことしないと言い切れる人はいないと思います。
そしてその人にとっては些細な事であれば自分のした事すら忘れてしまう、少なくても忘れようとする。
そんなタイプのことが書かれています。
私がいやーな気分になったのは『救済と恐怖と』でしょうか。
色んな意味で弱者の女がインチキスピリチュアルに搾取される様子を娘の目を通して描かれています。かなりの胸糞です。結末はそれはそれで快哉とは叫べません。
スピリチュアルなんてほとんどがインチキなんだから信じる方も悪いと思ってしまう自分もいるんですが、やっぱり騙す奴がもっと悪い。精神世界に興味があるのならば他人に言われたことを信じるんじゃなくて、自分が自分の教祖になったらいい(信者は作らないでほしいけど)という自分の考えを見透かされたような気がしてウッときました。
『見知らぬ人の』も怖い。人間はそれまで生きてきた記憶で成り立っているのだから、それを失った上に嘘の記憶を植え付けられるのは恐怖そのものだと思う。
それにしてもなんでこんな目にあうことになったのかよくわからなかった。
自分にとって恐怖とはどういうものなんだろうか?と改めて考えさせられるような作品でした。
ホラーはだいぶお腹いっぱいな気がしてきました。