デビューから15年、初のオムニバス短編集
米崎地検の検事・佐方貞人の事務官をつとめる増田陽二。高校時代の柔道部の恩師の告別式で、旧友の伊達と再会した増田は、同じく同級生の木戸とその夜旧交を温める。増田にとって、伊達は柔道をやめずに済んだ恩人であり、ヒーローだった。だが、大阪で警察官になったという伊達には、ある秘密があった……。(「ヒーロー」)
〈佐方貞人〉シリーズスピンオフ作品をはじめ多ジャンル作を集めた、著者初のオムニバス短編集。
柚月裕子さんはお名前はもちろん知っていましたが作品を読むのは初めてです。
柚月さんと言えば私のイメージは『孤狼の血』でブレイクしたような感じで、女性なのに血生臭いものを書くなあと思っていました。
映画も5分くらい観たんですが、私はどうしてもどうしても暴力団が出てくるヴァイオレンスな映画が苦手で観続けることができませんでした。それで原作にも手を出していなかったんです。
最近は『朽ちない桜』が平積みにされていてちょっと興味を持っていました。
『チョウセンアサガオの咲く夏』は柚月さんの描かれた色んなタイプの掌編が集められた作品集です。
本当に色々な作品があるので柚月さんらしさというのがどこにあるのかこれを読んでもわかりませんでした。
軽い読み物と言えると思います。
『チョウセンアサガオの咲く夏』は結婚もせずに寝たきりの母親を看病する40代娘の話で、こんな話だろうなあと簡単にわかってしまうような内容ですが、圧倒的な孤独が描かれているところが良かった。
私が一番好きだったのは『泣く猫』です。こちらも母親と娘のお互いには表現できなかった心のうちが描かれていて人間と人間の関係の難しさ、特に肉親との関係の難しさを感じました。
『ヒーロー』は佐方貞人シリーズのスピンオフ作品だそうで、佐方の検事事務官を務める増田とその友人の話です。佐方シリーズというのは『検事の本懐』などですね。こちらもとても有名ですが未読です。
今回の読書でどうやら血生臭い作品だけではないと分かりましたのでぜひ柚月作品も読んでみたいと思います。
最近また広い意味でのミステリーにも興味があるのでこういうジャンルも読んでいこうと思います。