川上マジックが冴えわたる極上の恋愛小説集 

収録作品は次の通り――
[一実ちゃんのこと]一実ちゃんは「私、クローンの生まれだから」と恐ろしいことを言う。ある日、彼女に牛強盗に誘われた。
[ユモレスク] 不思議な女の子ハナは自称・詩人だ。彼女はイイダアユムに恋していて彼の名前を織りこんだ詩を書いている。
[金と銀] 治樹さんに初めて会ったのは私が子どもの頃。再会したのは彼が離婚した二年後だ。ある日、彼は失踪した。
[エイコちゃんのしっぽ] 「短いしっぽがあるんだ、わたし」とエイコちゃんは言った。あたしが男に襲われそうになったのを救ってくれたのは彼女だった。
[壁を登る] あたしの母はときどき妙なものを家に連れてくる。見知らぬおばさんやおじいさん。今は五朗がいる。彼はお天気になると家の壁を登る。
[夜のドライブ] 温泉に連れてきた母が真夜中に言う。「ドライブに行きたいの。好きな人と夜中にドライブしたことがなかったなって、急に思ったの」
[天頂より少し下って] 十一歳年下の涼に、全身全霊をかけて愛されることなんて、あたし、ぜんぜん望んでいない。あたしの方が全身全霊をかけて愛したいのだ。


 

なんかAmazonの紹介に全てが書いてあった。

とは言ってもこういうタイプの作品は紹介で何がわかるというものではないだろう。

ストーリーがどうとかよりも読んでいる瞬間に読んでいるという事を楽しむタイプの作品だと思う。

 

恋愛小説集とあるけれど、恋愛もあり、いろんな愛がありという愛をテーマにした作品集かなと思う。

愛とは…語りつくせるものでもないし、理解し切るものでもないと思う。

確かにあるのに掴むことのできないもの、無理に手に入れようとしたら消えてしまうもの…そんな風に思っている。

何もかもを詳らかにすることだけが正しいことではないとこういう作品を読むと思わされる。

 

作品の中に人間のよるべなさがあり、それでも誰かを愛することは哀しみだけでなくて喜びだと感じられる。

そんなとても繊細は作品集だろう。

 

『金と銀』『壁を登る』『天頂より少し下って』あたりはわかりやすいし、恋愛小説っぽいと思う。

人を好きになる時の不安と幸せがごっちゃ混ぜになって襲ってくるような感じが描写されている。

 

川上作品のこういう終わっても永遠に続くみたいな感じが好きですね。

文芸作品の良さだなと思っています。