あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。つい今しがたのことみたいに――バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。無防備に出遭ってしまい、心に織りこまれてしまった事ども。おかげで困惑と痛みと自分の邪気を知り、私ひとりで、これは秘密、と思い決めた。11人の少女の、かけがえのない夏の記憶の物語。
ここ30年くらいの間に出版された作品を読むことが多いです。
新しめの作品は普通の書店で買って、古い本は◯ックオフで買うことが多くて、
本を買うきっかけは書評やブックエッセイを読んでということが多いかな。
角田さんの本を読んで江國さんの作品を読みたくなってこれを読みました。
そして江國さんの本の解説を書いていた川上弘美さんの本を今読んでいます。
そんな風に私の読書は連鎖していきます。だからエンドレス。
江國さんというと甘いお菓子や綺麗なリボンみたいなイメージがあるので男性で江國作品を読むことは少ないかなと思います。
しかし江國さんの作品は甘いだけではなくてビターだし、そして残酷さを持ち合わせていると感じます。
この『すいかの匂い』はまさにそんな感じです。
川上弘美さんの解説が秀逸なんです。
このお話、わかる。
たぶん、こんなにこれがわかるのは、私だけじゃないのかな。僕だけじゃないのかな。
何がわかるって、そうだな。簡単に表現できちゃうようなものじゃないよ。だって、それなら、「自分だけはわかる」なんて言ってもしょうがないものね。
とにかく、わかるんだ。
いい匂いのするもの。少しだけ湿ったもの。でもさらさらとした手ざわりのもの。深く、しみこんでくるんだ。それが。私だけにね。僕だけにね。
もちろんわたしだけがって思っている人間はたくさんいるはずだけれど、その一人一人をこういう気持ちにさせることが江國さんの魅力であり何か秘密なんだろう。
私も思う。ああ、そうだよね、わかるって。女の子はお菓子みたいに甘くて、繊細でとても意地悪で残酷なんだって。
みんながわかっても言葉にできないことを江國さんが文章にしてくれる。だから江國さんは人気作家なのだ。
本当にあったことかもしれないし、少女の想像なのかもしれないけれど、こんなことが自分が子供の時にもあったような気がする。そんな切なさをひと時読者は味わうことができる。
短編も短編、とても短い話なので内容は書けませんが、ひと夏だけ友達だった相手に嘘の学校の話を語る少女の悲しさ、学校が嫌いで焼却炉に色々なものを捨てる少女。弟とお葬式ごっこをした昔、綺麗な煙になって空にのぼっていく弟。
なるほど美しさって甘さや優しさよりむしろ残酷さの方に近いなって思う。
江國さんの短編集の中でも割と辛口な方かなと思う。
江國さんといえば『東京タワー』がドラマ化されるらしいですね。
永瀬廉くんは合ってる気がするけれど、松田くんはわたし的にはかなり微妙。
だったら他にもっと合ってる俳優がいたんじゃないのか。松田くんはいかにもバーター的な要素が強すぎる。
あまり期待できないかな。