正義の味方はもういない。金利はまったくゼロに近い。高度成長期に育ち、バブル期に青春時代を過ごした40代独身男は、デフレとスタバとケータイに囲まれて、ぼろぼろの21世紀を生きている。永遠の女性は、きらきらした「今」は、いつ目の前に現れるのか? 故郷も、家族も、夢も、希望も、志も、野望も、立身出世も、革命も、維新も、なにもなくなってしまった「今」という時代。白馬に乗ったお姫様がいつか現れて、僕を幸せにしてくれるはず、なのに。
衝撃のダメエッセイ『世界音痴』に続く、人気歌人「ほむほむ」こと穂村弘のエッセイ集第二弾。

 

 

ほむりんのエッセイが大好きです。

正直いうとニューウェーブ的な短歌はあまり興味がないのです。

このエッセイの中にも登場しますが、ほむりんが若かった頃のニューウェーブ短歌は(穂村作品だけでなくて一般論)尖っていて自己主張が強くてなんだか痛い感じがする。好みの問題ですが。

 

だけどほむりんのエッセイは本当にうまい。

余裕のよっちゃんで書いてる感じがする。

 

エッセイに登場するほむりんは大人になりきれない、大多数になれない、ちょっと不器用で臆病な変人。そんな感じでしょうか。

それでいてものすごくプライドが高いのが男性歌人だと思っています。

 

だがしかし、自分ってこんなダメ男だよって言いながら女にそこそこモテて周りにも甘やかされていて本人が言うほど生き方下手じゃなくて、むしろどっちかと言えば苦労知らずで絶対にそんなところは見せないけれど要領よく生きてきた人間なんじゃないかとすら疑っている。言い過ぎ?

 

そんなほむりんの裏腹って自分にも同じようなところがあるんじゃないかってエッセイを読むたびに思ってしまう。

日常の話から現代論、文学論的なものまでほむりん独自の切り口がたまらなく面白いと思う。

 

もちろん戦後世代である穂村さんは戦前も戦中も知らない人間にとって戦後という言葉自体が矛盾だと言う。本当にその通り。満ち足りている状態しか知らない人間がもっともっとと更に求め続けるものは本当に必要なものなんだろうかと考えさせられる。ほむりんを初め私たちはささやかな絶望に憧れているのかもしれない。

 

深く考えるつもりもなく読んでいたがそれどころか線を引きまくってしまった。

ほむりんの短歌はどうだかわからないけれど、ほむりんのエッセイにはセンスが詰まっている上に文章の天才だから緩急の付け方がうまい。500円ほどでこれだけの心の贅沢ができるのはありがたいというか、読書以外では無理じゃないかと思う。