<ストーリー>
厚生労働省で働く若手官僚の鷹野は、激務の中で仕事への理想も失い無力な自分に思い悩んでいた。ある日、陳情に来たNPO団体から非正規雇用が原因で自死したとされる人々のリストを持ち込まれ追及を受けた鷹野は、そのリストの中から自分と同じ25歳で自死した青年に関心を抱き、その死の理由を調べ始めるが──。

 

萩原慎一郎さんの『歌集 滑走路』をもとに作られたオリジナルストーリーの映画です。

と言っても、ほぼ歌集や萩原さんとは関係がないような出来上がりですので別物と考え、ここでは映画の話だけとなります。

 

 

ストーリーには3つの異なる時間の出来事が登場します。

①中学生の学級委員がある出来事からいじめにあうに至る話。

②若い官僚の男性が非正規雇用問題を通じて自殺者について調べ始める話。

③切り絵作家である主人公のパートナーとの問題。

 

この3つの話が繋がっていながら別々のストーリーとなっています。

 

②の若い官僚は激務と理想とかけ離れた生活のせいで不眠症になり脱落寸前の状態です。そこまで不眠になるのには理由があるわけですがそこは書かないでおきます。

 

③の切り絵作家の主婦は夫が美術教師で妻の仕事に表面上とても協力的なのですが、妻の仕事がうまくいくに従いちょっと雲行きが怪しくなってくるというフェミニズムのような話です。

 

①は大変まともな中学生が幼馴染のいじめをかばったばかりにひどいいじめにあうという孤立無援な中で、心惹かれるような絵を描く同級生との心の距離を縮めていくというような話。

 

 

現代の問題を無理やりギューッと詰め込んだような密度で決して明るい話ではないので心が重くなります。

この中で私は①の中学生の部分が好きです。

何といっても演技がいいなあと思った。現代の作品ではいじめ問題はもはやありきたりと言えるくらいの題材になってしまった感があります、もちろんありきたりだなんて言ったらいけない十把ひとからげに出来ない問題ですが。

 

学校という小さな小さな社会、それは子供である限り逃れることの難しい社会です。

そして大人になっても人は社会の中で生きていくし、どんな社会でも人が集まれば必ず強い者と弱い者が存在する。

これが弱肉強食になってはならないと私は思っている。

強い者は真に強い者であってほしい。

真に強いという姿を私はいつも思索し続ける。

 

 

 

一応歌集の方も貼っておきます。

私は最初に歌集を読み、この映画を観ました。

しかし最初に述べたように内容的にはほとんど関連性はないのでどちらかだけで問題はないです。

とはいうものの、私はこの後もう一度歌集を読もうと思っています。