内容紹介

1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる……。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。



久しぶりの村上作品です。

久しぶりということでおわかりかと思いますが、村上作品は特に好きでも嫌いでもありません。


しかし、羊男の頃からノルウェイの森…そして今に至るまで常にファンに期待され、それだけでなく未だに若い世代に読まれる作品を描き続ける枯渇することのない才能はすごいとしか言えないです。


問題はですね、自分は村上作品を楽しく読みながら1度としてきちんと理解した気がしないんですよね。


文章が難解なのならいざ知らず、平易で書いてあることはもちろん読めるのにいつも煙にまかれたような気分になります。


この作品集も例外なくそうでした。


面白く読んでいるとわけがわからないうちに終わってしまう。


まず『UFOが釧路に降りる』からもう私の心はゾワゾワするんです。

震災のニュースを見続けていた妻は5日後に突然いなくなり主人公は離婚を言い渡される。休みを取った主人公は同僚から釧路まで荷物を届けてくれと言われ小さな箱を預かる。そして主人公を待っていたのは…という風に、私からしたら全くわけがわからない。

心が休まらないどころかすごく不安感が募る。


そう、この短編集のストーリーには必ず阪神・淡路大震災がポロッと登場する。全くの脇役の顔をしながら、震災という共通体験が登場人物にも読んでいる私にも暗く影を落とす。

これらの物語は2月の出来事であり、同年3月にはサリン事件が起きる。


1月の大震災、3月のサリン事件(一連のオウム真理教の事件)、これは日本人にとって物事の根底を覆すような1年の始まりだったと思う。

…という背景込みでこの作品集を読むべきかなと思う。


どの話も嫌いでは無いですし、特に『アイロンのある風景』と『タイランド』が好きなのですが、やはりどうしても消化しきれていない感がある。


読んでいると、ここなんか大切なんじゃないの?っていう箇所とか、あと少しで何か掴めそうって思う瞬間とか、ただ単純にここ好きっていうとことかあるんですが依然私には謎だらけです。


基本的には楽しく読めればそれでよしと思って読書していますが、村上作品を読む時の敗北感半端ないです。


もし震災の影響を受けて作品に書くのならば普通の人なら直球で書くと思う。こういう反映のさせ方はやはり村上春樹らしいとしか言えない。