山の中腹に建つ家に引っ越してきた、小学四年生の日々乃翔太。周りの家がどれも未完成でうち棄てられていることに厭な感覚を抱くと、暮らし始めて数日後、幼い妹が妙なことを口にする。この山に棲んでいるモノが、部屋に来たというのだ。それ以降、翔太は家の中で真っ黒な影を目撃するようになる。怪異から逃れるため、過去になにが起きたかを調べ始めた翔太は、前の住人の残した忌まわしい日記を見つけ――。“最凶”の家ホラー。

 

 

主人公が小学男子で広い年齢層が読めるような平易な文章だと思う。

え、これ怖いの?って思いながら読んでいました。

例えば家に現れる人影、妹のところに遊びに来る友達…ありがちだと思うし、主人公がセンシティブすぎるとか、妹のイマジナリーフレンドだとか説明がつきそうに思える。

そんな感じで、深い嫌な感じを出さないままにラストに向かうけれど結末はかなり恐ろしかった。
特にまさかと思いながら読んだ最後の一行で絶望の淵に落とされる感じがして、恐れ入りましたと思った。

ベースになっている土地とそこに宿るものというのはいつもの三津田作品の流れなので注意しないといけなかったのに、割と読みやすく書かれているのでうっかりしてしまった。

日本の神様はキリスト教とは違ってアニミズム的なものだと思う。だからこういうホラーを自然に受け入れられるっていうか、DNAにそういうのが組み込まれているのかなとさえ思う。

だから好き嫌いにかかわらず怪談話ってそこここでみかける

その点は欧米のホラー映画を観ると都市伝説的なルーツを感じるものが多いように思う。


自然の中に神や霊を見る…それは原始的とか迷信とも言えるけれど、自然の中で暮らしてきた人間の当然の考え方でもある。
太刀打ちできない自然に畏れを抱く方が正常であって、むしろ自然を敬わないような今の人間の在り方の方が恐ろしい。

私はスピリチュアルなものに傾倒しすぎるのはあまり好まないし、胡散臭いものには私の中のスピリチュアル警報が鳴るけれど、自然に身を委ねるしかない人間の力なさはよく理解している。

人間という生物の生き方として自然に寄り添い謙虚になる…その方がナチュラルだし楽だろうと思う。

 

地球の王様のようにふるまってきた人間に罰が当たらない方が不思議だし、

便利至上主義には疑問しかない。

必要以上の便利を先回りして用意するような現代、便利であることに流される自分…せめてそんな自分の在り方をたまには反省できるように忘れないでいたい。