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内容紹介

緑豊かな桂川渓谷で起こった、幼児殺害事件。実母の立花里美が容疑者に浮かぶや、全国の好奇の視線が、人気ない市営住宅に注がれた。そんな中、現場取材を続ける週刊誌記者の渡辺は、里美の隣家に妻とふたりで暮らす尾崎俊介に、集団レイプの加害者の過去があることをつかみ、事件は新たな闇へと開かれた。呪わしい過去が結んだ男女の罪と償いを通して、極限の愛を問う渾身の傑作長編。

 

 

吉田作品はすきなんですが、これは読んでびっくりしました。

幼児殺人事件に気をとられちゃったんですがそういう話ではなかったんですね。

 

しかしこのストーリーをどう理解したらいいのか?

読んでいけば割と早い段階でああこの人があの人なのねってわかると思いますが、

どう共感したらいいのかわからないのです。

 

「極限の愛」とあるけれど、愛なんだろうか?

許さないことで生き続ける人間と、許されないことで生きていける人間。

私にはそんな風に見えた。

 

ロマンティックな言い方をすればそれが愛の一種なのかもしれない。

でもそれは永遠に幸せになれない方程式みたいなもので、だからこの結末がそれぞれの始まりであってほしいと私は思う。

 

半面「私を追ってこい」というメッセージなんだろうかとも思う。

いやそれは感傷的すぎるか・・・。

 

この二人、違う出会い方ならば違う未来があっただろうけれど、

どうしても取り返しのつかないことってあると思う。

 

極めて閉鎖的な話なので、渡辺という存在があることによって更にその外側からこの小説の世界観を眺めることができる。

でも渡辺みたいに尾崎に寄り添うことはできないな。

 

罪を犯したからと言って決められた償いをした人間を他人が必要以上に糾弾することはできないけれど、

当事者はどうだろうか?

永遠に許さないという選択もあるとは思う。

でもそれは自分も永遠に苦しみ続けるということなんじゃないだろうか。

 

やはりこの二人は別の道を歩いてほしい。