ワンダーワールド 光暗戦争編 第1話 とある日の地球 | 白龍のブログ 小説とかを描き続ける機械

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ここは科学が発展した町、テクニカルシティ。
多くの建物が立ち並び、多くの人間達、そして人間ならざる者も共存している、不思議で、少し奇妙な町。
ここには、ある戦士達が暮らしていた。
これは、その戦士達に降りかかる不思議な戦いの物語。
不思議な世界の、戦いの物語だ。
 
 
 
「おりゃあああ!!」
黄色いツインテールの少女が、紫の長髪の少女と殴りあっている。
 
 
「ラオン!全霊の拳をくらええ!!」
ラオンと呼ばれる少女に拳を突き出す黄色いツインテールの少女。
ラオンは両手を構えて受け止め、お返しとばかりに足を突き出す。
「突きが甘いなれな!!」
れなと呼ばれたツインテール少女は蹴りを素早く受け止める。
 
 
 
「はい、そこまで!」
 
 
…荒野で暴れまわっていた二人を、緑のサイドテールの女性が止めた。
彼女の名は葵。
れな、ラオン、葵の三人は、こう見えて実は人間ではない。
 
 
 
この三人は、テクニカルシティに住むアンドロイドだ。先程のように姿形は人間だが、実際はかなり異なる存在だ。
「あー疲れたー。帰って柳葉魚でも食べようや!」
呑気な性格のれなは両手を伸ばしてあくびをする。
それに対して荒々しい性格のラオンは紫の髪を激しく揺らしてまだまだ戦い足りないという感じだ。
おしとやかな葵は二人に言う。
「ちょっと、頑張りすぎるのも呑気すぎるのもダメよ。いつまた危険な連中が来るのか分からないんだから」
 
三人は、多くの仲間と共に強大な敵と戦ってきた戦士だった。
残りの仲間達は今、「事務所」と呼ばれる拠点で三人の帰りを待っている。
「あーあ。れなと葵のペースにあわせるのも大変だぜ!さっさと帰ってサンドバッグを殴るぞ!」
ラオンの一言に他二人はクスクス笑いながら頷く。
そして、三人は息を合わせて地を蹴った。
すると足が地から離れ、飛行を開始する。
戦士である三人は空中を飛行できるのだ。事務所に帰る為、テクニカルシティの上空を飛んでいく。
テクニカルシティは科学が発展した町。多くの人々が毎日仕事に励み、白い高層ビルが立ち並ぶ都市だ。
三人は飛びながら異常がないか地上を見て回る。
 
 
…と、その時!
 
 
 
「!二人とも危ない!」
葵が突然叫ぶ。
「えっ?」
二人が声を上げた直後、れなとラオンの元へピンクの光線が飛んできた!
「え!!?あっぶな!!」
間一髪かわす二人。何事かと光線が飛んできた方を見ると、そこには浮遊する青い目玉のような奇妙な物体が何体も浮いていた。
一つ一つは手の平からギリギリはみ出すくらいの大きさ。
小さいが、かなりの数だ。
知識もある葵はこいつらを知っていた。
「こいつら…ポインターアイ!テクニカルシティの監視機器で、光線なんか撃たないんだけど…」
台詞も待たずにポインターアイはひたすら光線を撃ってくる!
かわし続ける三人。なぜ攻撃してくるのか分からないので下手に手を出せない。
光線一本を避けるのはそこまで難しくはないが、数が多い為に少々疲れる。
嫌になってきたれなが叫ぶ。
「あー!何なんだよ困ったなもーー!!」
 
その時!
 
ポインターアイ目掛けて黒い光弾が飛んできた!
撃墜されるポインターアイ。
 
視線を移すと、白く短いツインテール髪に紫の服を着た赤目の少女と黒いスーツを着た白い骸骨が手の平を向けていた!
彼らは死神兄妹のドクロとテリー。彼らもれなたちの心強い仲間だ。
ドクロは人間とよく似てるが、テリーはどう見ても骨そのもの。
…これでも、れっきとした兄妹だ。
ポインターアイは二人に狙いを定め、一斉光線を撃とうとするが…ドクロが叫ぶ。
「やっちゃって!」
同時に大きな影が兄妹の間を通りすぎ、ポインターアイに強い衝撃が走る!
 
現れたのは背丈二メートル以上もあるスキンヘッドの大男。目は白目を剥いており、少し不気味な雰囲気だが、彼もまたれなたちの仲間、人工生命体の粉砕男だ。
テリーは骨の親指をたてて粉砕男にグッドサインを送る。
 
 
「お姉ちゃん!」
また新たな声が響き、れなの元へ誰かが飛んでくる!
次から次に新たな人物が加わるが、ご了承頂こう。
今度は、れなとよく似た姿だが、年齢は小学生くらいの小さな少女だった。
彼女はれなの妹のれみ。よく似た名前によく似た容姿。彼女もまた、アンドロイドだ。
見ての通り、仲間は非常に多い。れなは初め、名前を覚えるのも大変だった。
しかし、この一同が揃えば百人力、いや、それ以上だ。
これがテクニカルシティの戦士達。
アンドロイド、死神、人工生命体。全く異なる種族同士が組んだ、不思議なチームだ。
れなとれみの姉妹は息を揃えてポインターアイに向かい、同時に拳を叩き込む!
ラオンはポケットからナイフを、葵はハンドガンを取り出し、それぞれ構える。
葵がその穏やかそうな表情に、ニヤリと笑みを浮かべた。
「こうなればもう容赦はなしね」
ラオンが飛び出してナイフで切りつけ、葵はハンドガンを猛連射!
粉砕男は大きな体でポインターアイにぶつかり続け、次々に落としていく。
 
 
あっという間にポインターアイの軍隊は地に落ち、動かなくなった。
 
…ゆっくり降り立つ一同。まだ敵がいる可能性を警戒し、辺りを見渡すが…安心して良さそうだ。
 
「そろそろ休ませてくれよな…」
ラオンが紫の長髪を両手で上げながら呟く。
…ついこの間も、一同はある敵と戦っていたばかりだ。
 
テクニカルシティの監視機器であるポインターアイが本来撃つはずのない光線を撃ってきた。
これはまた、面倒事になりそうだった。
「…また戦いの予感がするな」
粉砕男が呟いた。
 
 
静かな雰囲気のなか、れなが突然大声をあげる。
「私、ちょっとあいつを尋問してくる!!」
この件に関して、一人思い当たる人物がいたのだ。
そして、一人でどこかへ飛んでいってしまう。
れなはこんな感じでマイペースだ。慣れっこな一同は飛んでいくれなを見つめるだけで落ち着いていた。
 
 
…れながしばらく飛んでいくと、テクニカルシティの隣森が見えてくる。
とても美しい自然だ。科学の町と隣接しているとは思えない。
だが目的地はここではない。
れなは不自然に左右に飛び、一旦降下、森の木とぶつかるスレスレの距離を飛行してから一気に上昇する。
 
…すると、突然空が赤くなり、森の先に禍々しい町が見えてくる。
 
森の上には、この闇の世界への隠しルートが存在しており、今のように動けば辿り着けるのだ。
そして、れなの目的の人物はこの町にいる。
 
 
 
…そしてその人物は、自られなの方に来てくれた。
 
 
れなの目の前から、何か飛んでくる。
黒いツインテール髪に灰色の服と黒いスカート、背中からは灰色の翼を生やしており、右目を翼型の眼帯で隠して胸には紫の宝石のペンダントをさげた赤目の女だ。
その女はれなに向かっていきなり拳をぶちこんでくる!
れなはそれを迷いなく受け止め、逆に拳を振り上げた!
そしてその女もまた、同じようにれなの攻撃を受け止めた…。
 
 
 
「何の用だ、れな」
「いきなり殴るな!闇姫!」
闇姫と呼ばれたこの女はこの闇の世界の頂点に君臨する悪魔。
悪い事が起きれば、大体彼女が関与してるのだ。実際今までの戦いもそうだった。
今回の異常事態も闇姫の仕業ではないかと睨んでいた。
「町のポインターアイの一件!お前の仕業か!」
 
しかし、どうやら違うようだった。
闇姫は無表情のまま少しばかり首を傾げる。
 
「何の事だ」
「と、とぼけんな!」
れなは声を荒げながらも、すぐに声のトーンが落ちた。
短期なれなを上手く丸め込む闇姫。昔から器用だ。
「思った事をそのまま行動に移すな。その件は私は一切関与していない」
「え、あ。ごめん」
拳を下ろすれな。
闇姫はれなの態度に面倒臭そうにしつつも、その件に興味が湧いた。
昔から興味を持ったものには何かしらの悪の種を蒔かずにはいられない。それが闇姫の生き方の一つだ。
それを知っていたれなは、しまった、というような顔をした。
そんな彼女の心を読んだかのように、闇姫は嫌らしく呟く。
「恐らく何かしらの組織が動いているのだろうな。もし何かあれば私に伝えろ。その組織の力を、我が軍に取り入れるとしよう」
闇姫自身も、何と返されるか分かりきっている発言だった。
そしてれなは、案の定と言うべき返事をする。
「断る!」
闇姫の仕業ではないと分かったれなは背を向け、来た道を飛んでいった。
 
 
 
…闇姫は、既に何かを予感していたらしい。
 
「一応、やつに調べさせるか」
そして彼女は灰色の翼を羽ばたかせ、闇の世界の北へ向かう。
黒い建物が視界を通り抜けていき…最終的にある城へと辿り着く。
ここが闇姫の城。漆黒の城だ。
城の窓へ向かっていき、開く。
 
 
「闇姫様!おかえりなさいませ」
四つの小さな影が、闇姫を出迎えた。
彼らを一人ずつ紹介していこう。
 
まず一人は紫の球体に丸い手足を生やした姿をした悪魔、デビルマルマン。
その横にいるのはデビルマルマンと同じく球体の体で、色は黒い。何よりの特徴は腕が四本も生えている事。彼の名はバッディー。
更にその横には、蛙が白衣を着たような小さな怪人が。威厳のない見た目だが、その顔は不気味な笑みを浮かべており、言葉にならない気味の悪さがある。
この蛙はガンデルだ。
そして、この三人の前に立ち、闇姫に深々と頭…及び体全体を下げるひし形の生物。
黄色い角を生やしており、体全体が美しく光ってる。
彼はダイガル。
 
デビルマルマン、バッディー、ガンデル、ダイガル。
何の威厳もない、小さな体の彼らだが…彼らを侮ってはならない。
「四天王揃い踏みか。という事は何かしら報告でもあるのか」
闇姫が言うと同時に、四人はより深々とお辞儀をする。
彼らは闇姫の配下の中でもトップクラスの実力を持つ者達、闇姫軍四天王だ。
ガンデルが、白衣のポケットからメモ帳を取り出して報告する。
「実はですね。最近この城の付近で異様な活動が確認されているのです」
メモ帳には、色々な場所の名前と時刻等が記されている。
それによれば、どうやら闇の国の周辺にて、目玉型の謎のマシンが戦士達を襲う事件が多発しているらしい。
ガンデルは四天王であり、科学者でもある。このような異常事態を調査するのも役目なのだ。
闇姫の頭に、先程のれなの話が思い浮かぶ。
なるほど、無関係ではなさそうだ。
「丁度ガンデルに目玉型マシンの事を聞きに来たところだったのだが、もう調べていたか。流石だな」
ガンデルは敬礼し、数秒間踊る。喜びを表す動作だ。
彼は頭は良いが、テンションが上がると少し面倒な行動に出る。
それは置いておいて、闇姫は今回の件をどうも放ってはおけなかった。
…れなは、闇姫の昔からの宿敵。
闇姫は彼女をとことん嫌っており、れなもまた闇姫をこれでもかと嫌ってる。
しかし、だからこそ互いに互いの事をよく理解していた。
 
闇姫は分かる。
れなに目玉型マシンが関わったのだとすれば…また何か、戦いが始まる。
闇姫軍は悪事を働き、世に悪を知らしめるのが目的だ。
大きな戦いが起きるのなら…これを利用しない手はない。
「…周辺調査を開始しろ」
闇姫の指示で、四天王は敬礼するのだった。