青木晃のアンチエイジング日記

先月19日に、青山学院大学講堂で行われた日本健康医療学会主催の市民公開講座。ちょっとレポートが遅くなって恐縮ですが、ここにまとめておきます。


メインテーマは、『原発事故後の放射線と私たちの生活』でした。


前半は3名の先生方による、基調講演。


講演1 テーマ:原発事故後から報道されている放射線について
講師:日本原燃㈱ 放射線管理部長 医学博士 田邉裕 先生


講演2 テーマ:放射線被ばくによる健康への影響と対策
講師:防衛医科大学校免疫・微生物学講座 准教授 木下学 先生


講演3 テーマ:放射性物質は語る~食物から水まで、日常生活と放射線との関わり~
講師:広島大学名誉教授 広島大学原爆放射線医科学研究所 渡邊敦光 先生



青木晃のアンチエイジング日記


簡単にまとめると、


田邉先生と渡邊先生は、現在、東京に住む人たち(大人)は放射線による健康被害を深刻に考える必要なないというスタンス。外部被ばくはもちろん内部被ばくにおいても気にする必要はない。水も食べ物も市場に出ているものはすべてOKである。お二人とも100μSv/年を超えた場合には明らかな影響が出ると。


加えて、渡邊先生は、例え放射線被ばくを受けたとしても、味噌を毎日摂っていれば、晩発性障害に対して健康被害を少なくする効果が期待できるであろうとも。


これは、長崎原爆を爆心より1.8kmの位置にて被爆した秋月辰一郎先生の体験(多くの被爆者の治療にあたった自分や従業員には原爆症がでないのは、「わかめの味噌汁」を毎日摂っていたから)にヒントを得て、味噌と放射線被ばくとの関係を多くの動物実験で研究されたデータからの提言。


防衛医大同期生の木下先生は、ご自身の研究内容を中心に。前半は、急性被ばく障害に関して、ビタミンCの早期大量投与が消化管の致命的な障害を未然に防げる可能性があることを動物実験のレベルではあるが確認できていることをお話くださった。実際、福島第一原発の直近で任務に当たっている自衛官には、特別な処置を施されたビタミンC製剤が予め投与されているという(この内容は、4月4日の本ブログ にも記している)。


後半は、やはり内部被ばくがこれから先、問題になるであろうことを強調されていた。細胞レベルでの放射線による障害を事故修復する能力の個体差が発がんの有無に関わってくることが医学的にもわかっているわけで、このことからも出来るだけ、外部&内部被ばくの総量を減らしておくに越したことはないとも。



青木晃のアンチエイジング日記


パネルディスカッションの前に、東京医科大学放射線医学講座 主任教授徳植公一先生が放射線の基礎知識をまとめて教示された。


また、元旧ソ連大使館一等書記官で現在は在日ロシア企業家交流会議 理事長のユーリ・ブラフ氏はチェルノブイリ原発事故のことを中心に現在と未来の日本の放射能汚染のことを話された。


ユーリ氏は、チェルノブイリ原発事故の表に出てこなかったような裏事情をかなり知っていて、やはり今回の日本における放射能汚染はそれと比較しても決して軽視できないレベルのものであろうと危惧。外部被ばくは日々落ち着いては来ているが、これから先、かなり長期に渡って続くであろう内部被ばくとの戦いに対しては気を緩めてはならないと強調していた。子どもたちへの健康被害を最小限に食い止める手立てを国家レベルでもっと真剣に速やかに立てるべきであると。


ガイガーカウンターも持参され、東京銀座で計測した地表近くの値が0.15マイクロシーベルト/時以上あることも指摘していた。


青木晃のアンチエイジング日記

平石先生と私もモデレーターとして最後のフロアディスカッションに加わらせていただきました。


フロアの参加者の皆さんからは非常に活発な質問が出ました。


5人の専門家の先生方の意見も最終的にはまとまらずに終わりました。それだけ、実際のところはわからないのだともいえます。


最後に私見を・・・


一時、文部科学省の方から「年間20mSvまでは大丈夫」というような見解が出たり、「明らかに健康への影響が出るのは、100mSv/年から」といい切る専門家の先生がいたりして、混乱しますよね。


しかし、自然放射線以外に浴びる放射線以外の総量を1mSv/年以下にしましょうというのは、1990年にICRP(国際放射線防護委員会)が世界に向けて勧告した世界基準です(放射線の仕事に従事する大人などではきちんと検査などをして50mSv/年までは良いとされている)。


それが、基準である以上、それ(基となる数字)に準ずるべきですよね?


もし、20や50mSv/年でも問題がないのなら、これまでもその基準で色々なことが決められていって良かったわけです。『原発の事故があったから今までの平時とは違うんだ。だから基準も上げていいんだ。』というのは一般市民のことを無視した勝手な論理の展開です。


子どもたちを守る立場にいるママたちはあくまでも、世界基準を貫く立場でいなくてはなりません。だから、安易に安全の安売りに乗ってはならないと私は思います。


3月11日以前とは異なる環境になってしまった今、現実を直視し、放射線と共存しつつのアンチエイジング(健康で健全な加齢)を実践していかなければなりません。


子どもたちに対しては、出来るだけ減らせる被ばくは減らしておきたいと、私は考えています。