青木晃のアンチエイジング日記

青木晃のアンチエイジング日記


昨年暮に出た文芸春秋2011年1月号は、がん治療に携わるドクターたちの間で物議をかもしだしました。『患者よ、癌と闘うな』の著書で有名な慶應義塾大学医学部放射線科講師の近藤誠先生が、「抗がん剤は効かない」というタイトルの手記を載せたからです。


要旨は以下の通りです。


*****************************

・抗がん剤に患者を延命させる効果はない。


・抗がん剤治療評価において最も重要な生存曲線の形がおかしいのは人為的操作が加わった可能性が高い。


・胃がん手術後の免疫製剤「クレスチン」使用の生存率向上の論文は有名医学雑誌に載ったが、自分がインチキを暴き、その後は見向きもされなくなった。


・抗がん剤治療した患者群の生存期間が延長しているのは抗がん剤そのものの進歩でない。抗がん剤を使わなくても、手厚いケアをすると生存期間が延長するという論文があり、抗がん剤使用患者群が数ヶ月生存期間が長くなっているのはそのためだろう。


・昔と比べるとCTなどの画像診断が発達して肝転移などが1cmからでも発見できるようになった。以前は触診でしかわからず10cmくらいにならないとわからないようなケースも多々あった。同じ論文著者らによる同じ治療法が数年で数ヶ月生存期間が延びたのはこれで説明できる。


・胃がんstage IVに使われるエスワン(商品名ティーエスワン)は最初の成績発表時の報告で完全寛解例のデータに誤りがあったのに訂正されず認可された。


・高額な製薬メーカーに癒着した研究者が行った試験は操作されており、利益相反の事実だけを通知すればすべてOKと言うことに間違いがある。これを排除すればこの20年間の 新規抗がん剤はほとんど認可取り消しとなるはずである。

*****************************


これに対して多くの癌専門医の先生方が声を大にして反論しています。医師専用のサイトなどでは、連日熱い書き込みが続いています。


この手記は世間一般でも大きな反響があったようで、8日に発売された今月号(2月号)では、ジャーナリストの立花隆氏が患者代表という形で、『「抗がん剤は効かない」のか 患者代表・立花隆。近藤誠に質す』という対談が掲載されています。


近藤先生の主張は、確かにいくつか「?」と思うところもありますが、納得できる考え方も。確かに医学的事実の全体ではない一部を誇張・曲解してセンセーショナルに「抗がん剤は効かない」と一刀両断するそのやり方は問題ですが、「苦しく辛い副作用のある抗がん剤に必死に耐えて治療を受けたとしても、延命効果は数カ月で結局は薬が効かなくなったり、使える薬が無くなったりで死亡するわけなので、抗がん剤は効果の高いがん治療薬とはいえない」という根底の主張は間違いではないと思います。


癌治療専門医のドクターたちが期待する抗がん剤の作用、効果と素人である患者さん方が期待するものとに大きな乖離があるのは紛れもない事実です。


2月号の本文の中に、「抗がん剤で縮む命」、「キュアかケアか」、「無治療という選択肢」という言葉があります。現在の我が国の保険医療制度内では、普通の患者さんはなかなかこれらのことが理解出来ない状況にあるにも関わらず、医師は独善的に進行がん患者さんに抗がん剤治療という選択肢しかないようにたたみかけるのはやはり問題です。


患者さん自身が自分の治療法を選べる真の医療サービスを作っていかないといけません。