寝る前に何気なくSNSを開いたら、友人の結婚報告、同期の昇進、きれいに整った休日の写真。
「おめでとう」と思う気持ちの奥で、なぜか胸がざわつく。
気づけば「それに比べて自分は」と考え込み、スマホを置いても気分が戻らない──。
そんな自分を「心が狭い」と責めてしまう方もいるかもしれません。
けれど、比べてしまうのは人間の心にもともと備わった働きです。
比べてしまうのは「性格」ではなく「心の仕組み」
人は、自分の立ち位置を確かめるために他人と自分を比べる生き物です。心理学者フェスティンガーは、これを「社会的比較理論」として示しました。
問題は、SNSで目にするのが「他人の人生のいちばん良い瞬間」に偏っていることです。自分の日常の「舞台裏」と、他人の「ハイライト」を並べれば、自分が劣って見えるのは自然なことです。
自分より上だと感じる相手と比べる「上方比較」が続くと、自己評価が下がりやすいことが研究で示されています。
さらに、投稿せず眺めるだけの「受動的な利用」のほうが気分の落ち込みと結びつきやすい、という報告もあります。
ただし、SNSとメンタルヘルスの関連は全体としては小さいとする大規模な研究もあり、「SNSそのものが悪」とは単純に言えないのが現状です。
精神科での診断・治療と、その限界
「SNSを見て落ち込む」こと自体は、病気ではありません。
ただし、気分の落ち込みや興味の喪失が2週間以上続く、眠れない・食べられない、「消えてしまいたい」と思う──こうした状態はうつ病などの可能性があり、精神科・心療内科での診察が必要です。
一方で、精神科の診療は症状の評価と治療が中心です。限られた診察時間の中で、「なぜ比べてしまうのか」「自分は何を大切にしたいのか」をじっくり掘り下げるのは難しいのが実情です。
薬で気分の波が和らいでも、比べるクセそのものは残ることがあります。
カウンセリングで何ができるのか
カウンセリングでは、「どんな投稿を見たとき、何を感じ、どう考えたか」を一緒にたどります。
すると、「同期の昇進だけが刺さる」「休日の写真は気にならない」といった自分だけの反応のパターンが見えてきます。
考え方のクセに注目するなら、認知行動療法の視点で「あの人は幸せ、自分はダメ」という「自動思考」を見直します。
過去とのつながりに注目するなら、精神力動的な視点で「子どもの頃からきょうだいと比べられてきた」といった体験を振り返ることもあります。
「こんなことで相談していいのかな」「何を話せばいいかわからない」と感じる方は少なくありません。
けれど、「SNSを見ると落ち込むんです」の一言からで十分です。カウンセリングは弱みをさらす場ではなく、自分の心の仕組みを一緒に調べる場だと考えてみてください。
マインドフルネスで何ができるのか
比べて落ち込むとき、頭の中では「どうせ自分は」という考えが次々とつながっていきます。
マインドフルネスは、この流れを無理に止めるのではなく、「いま比べている」と気づいて一歩引く練習です。
考えを「事実」ではなく、「頭に浮かんだ言葉」として眺める──ACTでは、これを「脱フュージョン」と呼びます。
効果には個人差があり万能ではありませんが、比較に飲み込まれる時間を短くする助けになりえます。
いま自分で、何か1つできるなら
SNSを閉じたあと、「いま、比べていたな」と心の中で一度だけつぶやいてください。
そのうえで、「あの投稿を見て、自分は本当は何がほしかったのか」を一つだけ書き出してみましょう。
羨ましさの奥には、「認められたい」「ゆっくり休みたい」といったあなた自身の大切な願いが隠れていることがあります。
比べてしまう気持ちは、あなたを責める材料ではなく、あなたを知るための手がかりにもなるのです。
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